[通信業界]統合通信サービスはどこに向かうのか:ソフトバンク・日本テレコムの明日 を読んで

統合通信サービスはどこに向かうのか:ソフトバンク・日本テレコムの明日 – CNET Japanを読んで。 

 森さんがソフトバンクの日本テレコム買収について丁寧にまとめている。


 前回、買収のニュースが出た際に自分なりにこのニュースを消化しようとしてみたが、やはり森さんの分析は冷静で幅広い。

 個人的に注目しているのは下記の部分だ。

日本テレコム配下のeAccessのADSL提供数とYahoo! BBを合計するとほぼ600万となり、全ADSL契約数の半数以上を占める。(中略)いずれにしても、固定系通信の本命となりつつあるIP接続サービスで新グループがNTTグループを上回る規模になっていることは事実であり、「ブロードバンドNo.1カンパニー」という看板は伊達ではないことがわかる。

 日本の通信事業の歴史は、これまでNTTつまり電電公社とその後のNTTグループの歴史だった。
 いわゆる通信サービスのシェアにおいて、NTTグループが他の通信事業者の後塵を拝したことは無い。

 もちろんサービス別に細かく見れば、これはうそだ。
 国際通信サービスとPHSサービスにおいては現在のKDDIグループの方がトップではあった。ただし、国際通信サービスはKDDの独占から始まったものだし、PHSサービスはあくまで携帯電話サービスの一つとして捉えた方が良いだろう。
 ISPサービスもNTTのOCNは規制によって後発にならざるを得なかったため、トップにたったことは無い。だが、プロバイダがどこであろうが基本的にそのアクセス回線となる電話回線やISDNはNTTのサービスだった。
 
 そういう意味で、現在のソフトバンクグループの躍進は、これまでの通信サービスでのシェア競争とは意味が違うと思う。
 ニフティがプロバイダトップだった時代には、あくまで利用者の全体の通信料金を握っているのはNTTグループだった。11時以降のみ定額制という今考えると異様なサービスだったテレホーダイや、ISDNだけで実施された定額料金制のフレッツISDNなど、NTTグループが行動をおこすまで大半のインターネット利用者は低速で高価な通信サービスの世界にとどまる他無かったのが過去の現実だ。

 しかし、森さんが指摘しているように、現在ソフトバンクグループのADSLアクセス回線のシェアは5割を超える。日本のブロードバンド回線市場の将来を「NTTグループではない」通信事業者が握っていることになるのだ。
 

 これまでNTTグループと総務省(過去の郵政省)が非常に密接な関係にあったのは周知の事実だ。日本のこれまでの通信事業はNTTグループと総務省が作り上げた歴史であるというのは今更言うまでも無いだろう。

 総務省の面々は、銅線の開放を決めたことによってADSLの普及が促進され、日本がブロードバンド大国になることができたことを誇りに思っているという話を聞いたことがある。
 ただ、ソフトバンクグループがYahoo!BBを開始した際にも、驚きはしたもののまさかここまでの状態になるとは思ってもいなかったはずだ。
 
 さて、ADSL回線の開放が進み、いつのまにかソフトバンクグループがブロードバンド回線のシェアトップにたとうとしている。
 ソフトバンクグループは総務省と仲良くやっていくのだろうか?それとも総務省はパンドラの箱を開けてしまったのだろうか?

 放送と通信の境界線、固定通信と移動通信の境界線、地域通信と長距離通信の境界線、現在の法律の世界にはインターネット利用者から見ると意味の無くなりつつある境界線がたくさんある。
 
 はたしてソフトバンクは、これらの境界線を乗り越えて、森さんが述べているような、総務省もNTTも想像しなかったような新しいビジョンを提示してくることができるのだろうか。

[P2P]PtoPで懲役刑も–米上院が違法コピー対策法案を審議へ を読んで

PtoPで懲役刑も–米上院が違法コピー対策法案を審議へ – CNET Japanを読んで。 

 コンテンツ保護の日米差という観点で書き込みをしたとたんに、このニュースが出てきた。


 どうもインテルの発言を、米国全体の雰囲気として楽観的に取りすぎてしまったようだ。
 この記事の最後で触れられているように、今回の法律はベータマックスのようなこれまで合法とされた判決を覆す可能性さえ秘めているという。

 結局、この問題は現在コンテンツから収益をあげているコンテンツホルダーと、あらたにその分野で収益をあげようとしているIT系の事業者との戦いなのだろうか。
 
 ミッキーマウスの著作権が切れる直前に、著作権法が改正された事に見られるように、米国においてもコンテンツ保有事業者が強い力を持っているのは良く知られている。
 法律を決めるのは政治家で、その政治家にいかに影響力を持っているかというのが、ビジネスの世界でも大きく影響してくる。結局政治力のある方が優位にビジネスを進められるということになってしまうのだろうか。

 個人的には、これらの法律による規制というのは長続きしないと思う。仮に長続きしたとしても、国内の事業者が規制に縛られている間に、海外の事業者を成長させてしまうことになり、結局国のためにならないと思う。
 
 はたして米国が自国にとって重要な事業、コンテンツ産業とIT産業のどちらを重視した法律を定めるのか。
 非常に興味のあるところだ。

[P2P]コンテンツ保護の“日米差”はどこからくるのか を読んで

ITmedia コンテンツ保護の“日米差”はどこからくるのかを読んで

 どうしてもこの手の記事を読むほど、日米のコンテンツに対する意識の違いを強く感じてしまう。


 記事ではこう書かれている。

ローレンス氏:「米国でも著作権法のフェアユースの概念は曖昧です。Intelでは、いかにしてコンシューマーの期待に添うように実現できるか、テクノロジーはそこに向けて展開されています。なぜならば、法律そのものがいつも明白な状況になっていないからです。われわれはコンテンツ会社と仕事をする中で、“法”に向いてではなく、“コンシューマー”に向いて取り組むことを進めています」

 この考え方は正論だが、日本ではなかなか明言することが難しい部分だ。つまり、法律は現実のあとから付いてくるというのが、米国のスタンスだと言える。

 インテルが実際にどれほど”コンシューマー”、要は顧客のことを思いやってくれてるかは議論があるが、確かに米国は利用者側の権利を重視して法律が決まっていく感が強い。

 最近の日本の輸入CD禁止などの傾向を見ていると、日本においてはあくまで事業者側の力が強くあっさりと利用者の利便性を否定する法律が決まってしまったりする。
 先日yublogの川崎さんもEFFのような利用者側の主張をする組織の必要性を書いていたが。

 結局ここは国民性の話になってしまうのだろうか?
 
 個人的に現在非常に興味があるのは米国のPCを中心としたモデルと日本の家電を中心としたモデルの戦いはどちらに軍配が上がるのかという点だ。

 個人的には家電業界のほうが本質的に有利なはずだと思う。
 パソコンがいらないという家はあっても、テレビがいらないという家はほとんどない。
 固定電話がいらないという人はいても、携帯電話がいらないという人がほとんどいない。
 
 日本ではその両方の産業をリードしているという優位性があるはずだ。おまけにブロードバンド回線の速度も十分なレベルに達してきている。
 映像コンテンツを利用者が満足する形で提供することができれば、世界に先駆けて新たなビジネスモデルを描けるはずなのだが・・・・ 

 個人的には、iTunesのような端末とソフトウェアが連動した音楽配信ビジネスは、Appleではなくソニーに始めて欲しかったし、映像配信ビジネスではぜひとも遅れをとらないようにして欲しい。

 だが、コンテンツホルダーからすると現状のビジネスモデルを崩したくないという思いは我々の想像以上に強いようだ(特に国内の事業者は)

 日本がモノ作りに強みがあるのは分かるが、そのモノ作りをコンテンツビジネスに生かせないものだろうか?
 携帯電話を見ている限り、日本人にもそのセンスは結構あるように思うのだが。

 この記事には続きがあるようなので、とりあえず楽しみにしよう。

[通信業界]英BTグループ、IP電話に完全移行 を読んで

ITビジネス&ニュース:英BTグループ、IP電話に完全移行を読んで。

 意外なことに世界の大手通信会社で、IP電話への完全移行を発表するのはBTが始めてらしい。


 私がまだ通信会社に勤務していたころに日本テレコムが似たようなことを発表したと思っていたが、あれはバックボーンだけの話だったのだろうか。

 まぁでも、BTがIP電話に完全移行というのは、NTTグループがIP電話に完全移行というのと同じことだ。 
 BTは2兆円をかけて設備を入れ替えた後に、人員合理化や設備投資の圧縮を見込んでおり、年間2000億円程度のコスト削減が可能になるとみている。
 10年で元が取れるという計算だ。

 この人員合理化という部分がポイントだろうか。
 NTTグループの電話基盤のIP電話化がいくらかかるか知らないが、現在のNTTグループの体力ならIP電話化はそれほど難しいことではないと思う。

 ただ、問題はBTのように10年で回収するモデルを描けるかどうかだ。
 年間2000億円というと大金だが、単純計算で年収1000万円の社員を2万人削減すると実現することができる。実際にNTTのインフラをIP電話化するのにいくらかかるか分からないが、リストラによって資金回収をする
モデルを描けないことはないはずだ。
 もちろん、実際には日本で赤字でもない会社がリストラをすることはできないため、この計算をすることはできない。ただ、実質NTTグループでは大量採用した社員がここ数年で1万人単位で定年を迎えるといわれているし。

 結局、IP電話化をしない理由はそれだけではないだろう。既存の施設が既にあるわけだし、わざわざこれから収入が激減することが明確になっている固定通信事業に大量の資金を投入することも無い。

 自らIP電話化を進めることで、固定通信事業収入の減少に加速をかけてしまったら自ら首をしめることにもなってしまうし。
 まぁ、リストラが可能なはずの他の世界の通信会社が意外にIP電話化をしていない理由もそんなところだろうか。

 先手を打ったBTが正しいのか、何もしない(もしくはできない)他の通信会社が正しいか、現段階では非常に判断に悩むところだ。

[通信業界]イー・アクセス、TD-SCDMA(MC)の実験結果を公開 を読んで

イー・アクセス、TD-SCDMA(MC)の実験結果を公開-CNET Japanを読んで

 TD-SCDMAの3台の接続実験で、1つの端末あたり834kbps~2.22Mbpsの速度が出たそうだ。


 
 もちろん所詮3台の実験結果だし、2Mbps程度の速度であれば光ファイバの100Mbpsはおろか、一般的なADSLの速度にすら遠く及ばない。

 だが、このTD-CDMA系に感じる感覚は何だろう。
 なんだか、移動通信業界に何かが起こりそうな感じを受けてしまう。

 業界自体の雰囲気は、東京めたりっくがADSLを開始したときの雰囲気に近いような気がする。TD-CDMAも面白いけど、携帯の4Gはもっと凄いですよ。という話を良く聞く。
 イノベーションというのは、トップグループがそういう雰囲気にあるときに良く起こるものだ。

 確かに現在の移動通信事業と、ADSL登場時の固定通信事業は違う。
 携帯電話事業者は既にパケット固定料金制を導入しているし、公衆無線LANサービスのような高速無線通信サービスも始まっている。

 さらに移動通信事業は、ADSLのように一箇所だけでサービスが利用できれば良いというものではなく、エリアカバー率が高いことがどうしても要求される。
(実際、公衆無線LANサービスはいまだにニッチなサービスの印象から抜けきれていない)

 設備投資費もかさむし、おまけに電波は有限だ。
 光ファイバのように必要なだけ引けば良いというものではなく、周りの人が同時に利用すると回線速度も簡単に低下してしまう。

 それでも、TD-CDMAによって何かが起こると感じるのは、現在の移動通信業界が余りに寡占状態にあるからだろう。

 個人的には、一人一万円を携帯電話に支払っているというのは尋常ではないと思う。
 それだけの利益が得られるということは、参入しようとする事業者も本来はたくさんいるはずだ。それが寡占になってしまうのは電波という有限の資源が規制によって守られているからだ。

 とはいえ、日本の移動通信事業がその寡占の中で世界の最先端を走っているのもまた事実。
 どちらが良いのかは正直良く分からないもんだ。

 ま、要は単純に携帯電話代が安くなって欲しいというのが本音ですが。