P2P ソリューション:動画コンテンツ配信 Kontiki(1)

2004/07/22付けでjapan.internet.comに掲載されたものです。



前回までは、 P2P 技術をコミュニケーションに利用したソリューションを紹介してきました。

今回はがらっと分野をかえてコンテンツ配信の分野を取り上げます。

コンテンツ配信というと、現在日本でも法律問題が話題になっている Winny や WinMX などの不正ファイル交換ソフトが有名ですが、米国ではすでにその技術をビジネスの世界に転用している会社が存在します。

それが今回ご紹介する Kontiki という会社です。

■Kontiki の概要

Kontiki は2000年11月に設立された会社です。 P2P 技術を利用した動画コンテンツ配信会社ということに加え、 Netscape 出身者が経営者や投資元に名を連ねていることから話題を呼びました。

例えば、設立時の Kontiki の会長兼 CEO は、 Netscape の Netcenter で General Manager だった Mike Homer 氏で、出資者には Netscape 元 CEO の Jim Barksdale 氏のベンチャーキャピタルである Barksdale Group や、 Netscape の共同設立者である Marc Andreessen 氏などの名前が並びます。また、従業員としても、Netscape のメンバーが参加しているようです。

一般的に P2P 型の動画コンテンツ配信というと、不正ファイル交換ソフトの印象もあり、映画やテレビドラマのようなコンテンツを想像されると思いますが、現在のところ Kontiki は Business Video(ビジネスビデオ)という単語で自らの事業領域を定義しており、どちらかというと企業内のコミュニケーションや社内トレーニング、顧客サポートなどの分野を想定しています。

Kontiki のサービスにどのような特徴があるのか、見てみましょう。

■Kontiki の特徴

コンテンツ配信は、Napster や Winny の例でも見られるように、 P2P 技術の最も分かりやすい特徴である「分散によるコスト低減」というメリットが最も生きる分野です。

Napster は大学生により運営されていましたし、 Winny は中央システムを持たず開発されたソフトウェアだけで運営されていました。

Kontiki は、このコストメリットを企業向け動画配信の分野に適用しています。そういう意味では、Kontiki の最大の特徴は下記に集約されます。

1.サーバー型のシステムに比べて、配信コストが格段に安い
Kontiki が実施したベータテストにおいては、 TV 並の画質を持つビデオの配信を、従来のコンテンツ配信ネットワーク(CDN)に比べて、配信コストを3分の1以下にできたとしています。

これは以前に P2P の誤解シリーズで紹介したポイントです。 P2P 技術を正しく活用すれば、サーバー部分のボトルネックを解消することができ、低コストな配信システムが構築できます。

2.配信スピードが早い
先ほどの配信コストよりも更に大きい効果として、 Kontiki のベータテストでは従来の CDN に比べて配信速度で最大10倍にすることができたとされています。

これもすべての利用者がサーバーにアクセスするサーバー型のシステムでは難しい仕組みです。

P2P 技術を活用すれば、サーバーに1,000人が同時にアクセスするようなボトルネックの発生を簡単に回避することができますが、サーバー型の仕組みでこのボトルネックを回避するには、莫大な設備投資が必要になると考えられます。

3.安定したダウンロードを可能にしている
この特徴は P2P 技術というよりは、 Kontiki ならではの特徴です。

インターネット上で大容量ファイルをダウンロードしようとすると、ネットワーク環境によっては頻繁に失敗することがあるのを、皆さんもご存知だと思います。

Kontiki では、 1つのサーバーが1ユーザーにファイルを配信するのではなく、複数のサーバーがファイルを小さなパーツに切り分け、それぞれから配信するような仕組みを取れます。そのため、一つのサーバーとの接続が切れても、他が補う仕組みが作れるため、安定したダウンロードが可能になるのです。
(次回のコラムへ続く)