CNET Japan Blog – 江島健太郎 / Kenn’s Clairvoyance:P2Pとネットワーク技術の未来にあるものを読んで
江島さんが現状のP2P業界を取り巻く雰囲気を、分かりやすい言葉でまとめている。
Winnyの開発者逮捕をきっかけに、インターネット上では様々な議論が巻き起こっていた。もちろんその中心は著作権や開発者の権利に関するものだったが、同時に「P2P技術とWinnyの問題をごっちゃにするのはおかしい」という議論も一部で始まっていた。
開発者の逮捕という事件をきっかけに、議論が反対側に触れるというのも何だかおかしな話だ。
正直不謹慎な話だが、事件をきっかけに有識者の間で、これからP2Pはどうなるのか?という興味が逆に戻ってきて、意外に追い風になっていたりする。
例えばCNETの渡辺さんやITmediaがアリエルの小松社長にインタビューしたり、「P2Pは悪くない」というタイトルでの日経コミュニケーションの記事が出たり。
P2P電話のSkypeもここに来て、週刊ダイヤモンドや東洋経済で取り上げられるなど注目を浴びている。
不思議なものだ。
ただ、もちろんこの話はあくまで一部の有識者や記者に限った話。
社会全体のP2Pに対するイメージはあくまで不正ファイル交換やアンダーグラウンドであり、これを今更ポジティブに変換することは、江島さん下記の指摘のとおり不可能に近いだろう。(P2Pの啓蒙コラムを書いている私が、こんなことを書くのも変だが)
実際問題として、世間的にはP2PといえばWinny事件などをめぐって「違法ファイル共有」「著作権侵害」といったネガティブ・キーワードと生々しくリンクされて記憶に刻まれてしまった。反体制的なイメージが濃すぎて、もはやP2Pという技術に対する冷静な議論の機運を逸してしまい、とにかく印象として「クロ」なのだ。
ただ、この問題に対するソリューションは単純だ。
P2Pという言葉を使わない、もしくは別の言葉で表現すればいい。
実際問題、米国ではすでにP2P関連技術の企業は、P2Pという単語を使用していない。グリッドやリレーネットワークというような言葉で置き換えている。
日本では、オーバーレイネットワークが定着するのだろうか。
(個人的には言葉が長いのがあんまり好きではないが(笑))
個人的な興味は、江島さんが終盤にかかれている部分だ。
先日の森さんのサーバー型放送についての話で出てくるコンテンツ周りの利権とは別に、P2P型のコンテンツ配信では味方になるはずのブロードバンド事業者が乗り気にならないという課題がある。
江島さんが書いている「xDSL技術が暗黙に仮定してきた、Web型トラフィック主体の上り下りの非対称性が、P2Pだと崩れてくる」という点だ。
結局45MbpsのADSLでも上りはせいぜい1~3Mbpsしか出ない。対象のP2P通信は現状ではできないわけだ。
単純な話、それならFTTH推進派のNTTグループが、この特徴を上手く使うべきだろう。FTTHなら上りも下りも高速で実現できる。
(逆にいうと、現在FTTHがADSLに対して持つ優位性はそれぐらいしかなくなりつつある)
実際、NTTグループはFLET’S.NETやSIO-Netなど研究所を中心に、既に多くのP2P技術の蓄積がある。
江島さんの記事を読む限り、まだまだNTTの中でも課題は多いようだが、是非亀井さんたちに頑張って欲しいものだ・・・
(それにしても江島さんが亀井さんの後輩とは知らなかった・・・スモールワールドというかなんというか・・・)