Skypeのオープンな提携戦略の強さ

CNET Japan Blog – 渡辺聡・情報化社会の航海図:プラットホーム化するSkype:アリエル・ネットワーク徳力基彦氏、Skype社Vincent Shortino氏インタビューを読んで。

 珍しくインタビューされる側になったので、自分の記念もかねて、トラックバックしたいと思います。


 Skypeが日本で話題になるようになったのは、まだここ数ヶ月のことですが、実際Skype自体がβサービスを提供し始めたのが去年の8月、本サービスを提供したのもまだ今年の7月のことというのをついつい忘れてしまいますね。

 そのスピードを支えているのが、彼らのコンセプトが非常に明確な点だと感じます。

 「良い製品を作る」「それをコストをかけずに配布する」とCEOが発言していたのが強く記憶に残っていますが、彼らが現在注力しているのは、とにかく徹底的にコミュニケーション部分だけです。

 一般的なVoIPシステムを開発している企業は、最初から非常に複雑なシステムを作ろうとする傾向があります。
 例えばテレビ会議システムにしてみたり、ホワイトボードのようなものをつけてみたり、既存のPBXを置き換えられる仕組みにしてみたり。
 
 有料でサービス提供をプランするために、既存の電話よりも付加価値を模索するため、どうしてもそういう傾向になりがちなのでしょう。
 自然と、全てのシステムを自社で囲い込むために作りこむ形になりがちです。

 
 ところが、Skypeが注力しているのは、とにかく低コストで便利な音声通信を可能にすることです。
  
 それ以外の点はオープンに広くあまねく提携する形を取っています。
 そうすることによって、スピードを落とさずに現在の展開を続けることが出来るのでしょう。

 そのことを更に加速するための手段が、今回の渡辺さんの記事のテーマになっているAPIのアプローチになるだろうと思われます。

 APIを使えば、VoIPやチャットの周辺にある関連製品は、どんな企業でもSkypeとの連携を容易に検討することが出来ます。
 おそらく今後も「コンタクトリスト」的な電話番号や人という属性を持ったソフトウェアは、グループウェアに限らずほとんどの製品がSkypeとの連携を模索していくことになるだろうと感じます。

 もちろん、それによってSkypeは様々な収益機会を自社からは逃すことになるのでしょうが、興味の無い分野はパートナー企業に任せることで、早期に多くの顧客のニーズを満たす製品にすることができます。
 キャズム理論で言うところのホールプロダクトですよね。

 ライブドアが販売を開始したサイバーフォンKのような、ハードウェアが特に今後は注目ですね。

 とにかく一芸に秀でて、それをもとにして周囲を巻き込んで伸びていくというのはGoogleと同じような遺伝子を感じてしまいました。
 
 はたして今後Skypeがどこまでこの勢いで行ってしまうのか分かりませんが、おそらく来年は更に多くの企業がAPIを使った連携を始めるんでしょうね・・・同じ(?)P2P企業としては、楽しみなような、ちょっと寂しいような・・・(笑)