マーケティング2.0はCNETブログでお馴染みの渡辺聡さんが監修した、共著スタイルのWeb2.0時代のマーケティング本です。
献本をいただきましたので、早速読んでみました。
まず、目にとまるのは何と言っても多彩な執筆陣でしょう。
関さんや神原さんのようなお馴染みの社長さんから、清田さんやいしたにさんのように肩書きが「ブロガー」の方まで、幅広い分野の方がマーケティング2.0と定義された分野についての考えを披露されてます。
つい日本では、マーケティング≒広告みたいな捕らえ方をされてしまうわけですが、本書でもフィリップ・コトラーの言葉が引用されているように「マーケティングの役割とは、絶えず変化する人々のニーズを収益機会に転化すること」。
ネットの進化によって、これまで一方通行だった企業と個人のコミュニケーションが、会話に変わってきていると言うのは、先日紹介したスコーブルのブログスフィアでも強調されていましたが、この本はそれを更に分野ごとの現象や事実から再度考えることができます。
特に印象に残ったのは、小鳥さんこと清田一郎さんが書いていた「プロモ2.0」のパート。
「正体をつかみにくかった「広告宣伝」という怪物から、もう一度顧客と企業との健全な関係を取り戻す」というのは非常に納得です。
今までは、広告宣伝によって金を投下すればある程度物が売れるという、ある意味分かりやすく、ある意味分かりにくい方程式が常識になっている感がありましたが。
ネットによって顧客とのコミュニケーションコストが大幅に低下したことにより、そういう金任せ、力任せなやり方で済んだ時代は終わり、企業自らが顧客と向き合い、良いモノを作って伝えることに注力すると言う、ある意味当たり前のことが重要な時代に戻ろうとしているのかもしれないなー、ということを改めて考えさせられました。
これからのマーケティングについて、根本的なところからゼロベースで考えなおしたい方にお勧めの一冊です。
【読書メモ】
■ネットの普及によるマーケティングの変化
1.企業内の情報化の進展
2.ブランディング
3.コミュニケーションのフラット化
4.媒体選択の変化
■企業ウェブの変遷
STEP1.看板期(存在証明)
STEP2.窓口期(コンタクトポイント)
STEP3.融合期(次世代、売り手と書いての敵対関係をなくす)
■掲示板とブログの違い
・掲示板:個を消す、公共スペース
・ブログ:個を重視する、個人スペース
■危機を沈静化させるのが次世代広報の役割
・今まで、トラブルをいかに世間から見えないようにするか
・トラブルにどう対応するかという、いわゆる「鎮火能力」が試されている
■PR2.0のルール
1.企業ウェブサイトは自社メディア
2.企業ニュースのロングテール化
3.リリースとSEO
4.マスメディアとオンラインメディア
5.全ての人がスポークスパーソン
■ウェブマーケティングは、構築と運用が噛み合う事が大事
1.マーケティングの基盤(ユーザー同士のコミュニケーションの場)としてのウェブサイト構築
2.コミュニケーションの計画~実行~測定~コントロールからなるマーケティングPDCAサイクル
■ウェブマーケティングの施策例
・ブログ、RSS等を用いた定期的な情報発信
・ウェブ標準+コンテンツ追加によるSEO強化
・キーワードマッチング広告による集客サポート
・アフィリエイト施策
・ブロガーを巻き込んでのキャンペーン等
・リアルなイベント等との連動
■プロモ2.0 「プロモーションは死んだ」
1.コミュニティ
2.共に作っていく感覚 (顧客は消費者ではない)
■コミュニティに参加に関する3つの注意点
・コミュニティに参加していくことと、ターゲットに合わせてマーケティング戦略を検討することは違う
・コミュニティを超えて伝播させていきたいと願っているような要素が含まれるか
・コミュニティの性質によっては、「強いこだわり」があなたを袋小路に追い込む。
■正体をつかみにくかった「広告宣伝」という怪物から、もう一度顧客と企業との健全な関係を取り戻す
・広告代理店に頼らず、自分たちでマーケティングを行う
・同じ価値観を共有する、コミュニティの中の一人として行動する
・考え方の根本を見直す、細部のテクニックは知らなくても良い
(ひとつひとつの行動が、それぞれ別の行動に有機的につながっているので、個々のテクニックを覚えても意味がない。)
■重要なのは意識の変化
・コミュニティへの「リスペクト」
・自分とコミュニティ全体への「エンジョイ」
・自分で行動する
■ユーザーの「口コミ」が伝播する流れ
1.購入(体験)して満足があれば
2.再購入(再体験)を行う
3.口コミ(WOM)行動(知人に紹介したくなる、ブログで表現したくなる)
4.エバンジェリスト活動(知人に購入・体験を強く勧める)
■モバイルマーケティング戦略の変化
・1万人の応募があって喜ぶ時代は終わり。
・1000人でもきちんとしたロイヤリティユーザーを育てる事が先決。
■モバイル端末でコンテキストに則したコンテンツを供給する
4マス(テレビ・ラジオ・新聞・雑誌)そしてネットの次の媒体として。
■誰がユーザーエクスペリエンスを提供するのか
1.デバイスを作っているメーカー (アップル)
2.通信事業者 (MVNO)
3.OS (Microsoft)
4.ウェブサービス大手 (Google,Yahoo)
5.コンテンツビジネスを持つメディア会社 (News Corp, Walt Disney)
■顧客の変化の3つの側面
1.ネット化
2.プロ化
3.ステルス化
■「マーケティングの役割とは、絶えず変化する人々のニーズを収益機会に転化すること」(フィリップ・コトラー)
■インターネット領域のマーケティングのミッシング・リンク
・収益への接続
・リアルへの接続
■3つの領域におけるゲート占有競争
1.決済
2.端末
3.アカウント
【目次】
第1章 ネットの普及、Web2.0が企業にもたらしたもの
1-1:メディア化する企業、媒体化する消費者◆渡辺聡
1-2:2.0時代のマーケティングプロセスマネジメント◆磯島大
企業事例:本田技研工業株式会社
第2章 企業と顧客の関係性の変化
2-1:マーケティング2.0時代のウェブマーケティング、ウェブブランディング◆廣中龍蔵
2-2:新しく築かれる顧客と企業の関係性とコミュニケーション設計◆関信浩
2-3:時代はPR2.0へ◆神原弥奈子
企業事例:KDDI株式会社
サービス事例:Skype◆岩田真一
第3章 Web2.0を自社に取り込む
3-1:スパイラルアップするマーケティングとは◆棚橋弘季
3-2:プロモ2.0◆清田一郎
企業事例:株式会社カカクコム
第4章 モバイルとマルチデバイス
4-1:MOBILE2.0を考える◆北村勝利
4-2:モバイルプロモーションの実際◆飯塚正治
4-3:モバイルプロモーションの可能性と未来形◆いしたにまさき
サービス事例:UIEvolution Inc.◆中島聡
第5章 今後の課題と対応策
5-1:ゲートキーピング戦略◆柿原正郎
5-2:傾向と対策◆渡辺聡
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