ナップスタージャパンの定額聴き放題は音楽産業にとって損か得か

定額聴き放題のナップスター始動–「iTunesはライバルではない」 – CNET Japanを読んで。
 いよいよ日本にもナップスターの音楽の定額聴き放題サービスが上陸しました。
 まぁ、昨年からウォッチしていた人間からすると、いよいよというよりはようやくという感が強いところでしょうか。
 何しろ、CNETにタワーレコードの伏谷社長の「100万曲を聴き放題に–タワーレコードがナップスターと組んだ理由」という記事が掲載されたのは実は去年の9月。1年前のことです。
 当時の記事には「2006年4月から音楽配信サービスを始める」とあったのですが、半年遅れでのスタートということになります。


 サービス開始の遅れについては「レーベルや権利保有者に説明する時間を大きく取るべきと判断した結果」とのことですが、洋楽150万曲に対し、邦楽が2万曲程度にとどまっているところを見ると、確かに日本のレーベルとの交渉に苦労したあとが見て取れます。
 AppleのiTMSの日本上陸の際には、全100万曲のうち邦楽は1割弱だった模様ですので、今回日本のレーベルはiTMSのときにもまして様子見ムードなのかもしれません。
 
 
 まぁそれもそのはず、既存のレーベルからすると、月額定額料金で150万曲が聴き放題のサブスクリプションサービスというのは相当違和感があるサービスだと思います。
 なにしろ1280円といったら、DVD付のCDシングル1枚の価格。
 携帯音楽プレーヤーでも楽曲を再生できる「Napster To Go」でも月額1980円で、これでもCDアルバム1枚分にもなりません。
 ダウンロード販売でも1曲200円で6~10曲分の料金ですから、すごいことです。
 既存のビジネスモデルを考えたら、なかなか踏み切れない世界でしょう。
 
 ただ冷静に音楽産業に落ちる金額を考えたら、毎月CD1枚買う人がどれだけいるかと考えてみると、毎月1980円を支払ってくれる顧客というのは実は安定した収入という点で非常に意味があるようにも見えてきます。
 なにしろ、これまで音楽業界は毎回顧客にCD1枚1枚の購入の売込みをしなければいけなかったわけですが、月額1980円もらえるモデルになれば、契約者が新しい曲を聞こうが聞かなかろうが継続して毎月お金が入ってくるわけでその仕組みはがらりと変わります。
 そんな中、NTT出身者としてつい思い出すのは通信業界です。
 インターネットは、従量課金から定額制にかわって一気に普及に火がついたわけですが、当時の通信事業者は定額制の普及にかなり及び腰だったように記憶しています。
 
 インターネットでは、定額制の普及時に、ヤフーBBが大躍進を遂げたわけですが、音楽の定額制でも同じ事が起こるのでしょうか。
 まぁ、音楽の場合はインターネットのようにインフラ的に使うものではないので、どうなるのか良く分かりませんが・・・
 ちなみに、通信業界との関連でいえば、特にこのナップスタージャパンで個人的に注目しているのは、米Napsterとジョイントベンチャーを組んだタワーレコードの大株主としてNTTドコモが入っている点
 
 今回の発表記事でも、早速ドコモの携帯電話への対応がうたわれていますが、iPodが驚異的なシェアを誇る米国に比べて、日本はPodのシェアもそれほど高くなく、携帯電話を音楽プレイヤー代わりに使う人が増えてきているようですから、結構流行る可能性もあるような気がします。
 ここ10年以上CDを買った記憶が無い人間としては、自分自身がサブスクリプションサービスを契約することはなさそうですが、今後の動向に注目したいです。