Yahooの買収はサービスが目的だけど、Googleの買収は人が目的?

メディア・パブ: GoogleとYahooの第1四半期決算,明暗くっきり メディア・パブ: GoogleとYahooの第1四半期決算,明暗くっきりを読んで。
 先日、メディア・パブでGoogleとYahooの四半期決算を比較し、Yahooにはもう「Googleの背中が見えなくなってきた」のではないかと書かれていました。
 この記事を読んで、なんとなく気になったのがGoogleとYahooの買収戦略の違い。
 
 同じくメディアパブで、昨年10月に「Web2.0企業の買収先一覧表,バブル2.0の声も」という記事がありましたが、この記事を見る限り、YahooはGoogleに負けず劣らず積極的に注目のWeb2.0企業を買収し続けてきました。
 その詳細はRead/Write Webの「米ヤフーの買収路線を読み解く:これからは「賢者の買い物」?」という記事に掲載されていますが、Flickrやdel.icio.us、JumpcutやMyBlogLogなど評判の高い企業を比較的効率よく買収しているように見えます。


 ただ、ちょっと気になるのが、その買収した企業のその後。
 Flickrを買収してから2年がたつと言うのに、いまだにYahooのトップページのPhotoというリンクからとぶのはYahoo Photosという別のサービス。
 特にYahoo PhotosにFlickrの特徴が活かされている感じもしません。
 おまけに、FlickrIDをYahooに強制統合しようとして、「ユーザーからの猛反発をうけたり
  Flickrの創業者インタビューを見る限り、買収された企業は比較的楽しくやってそうですが、それはYahooグループ入りしたからと言うよりも、Flickrをそのまま運営できているからの用に見えてきます。
 他にも、del.icio.usを買収したけどYahoo Bookmarksを運営していたり、jumpcutを買収したけどYahoo Videoもあるしで、なんだかYahooの企業買収というのは単純にサービスラインアップを増やすことにあるような気がしてきます。
 これがYahooの買収戦略と言うことでしょうか。
 先日、小飼さんが「Yahoo!は死にかけているのか?」という記事で、「Yahoo!は、Geeksを顧みていないのだ。」と指摘していましたが、なるほどそうかもしれません。
 YahooはWeb2.0系の企業を買収することで表面上はギークの重要性を分かっているように見えても、ギーク向けのサービスと一般利用者向けのサービスを統合せずに二重で運営することによって、結局ギーク向けのサービスのエネルギーを全体にいきわたらせることを遮断してしまっているように思えます。
 
 そこで改めてGoogleの買収の歴史を振り返ってみると、明らかにアプローチが違うことに気が付きます。
 まず、典型的なのはオンラインワープロのWritely、2006年3月に買収して約半年後の10月にはGoogle Spreadsheetsと融合したGoogle Docs & Spreadsheetsとして生まれ変わっています。
 企業向けWikiのJotSpotや、オンラインプレゼンテーションのTonic Systemsにいたっては、買収直後に新規受付を停止。ウェブサイトも1ページものに切り替わっています。
 さらに、ブログに特化したアクセス解析サービスとして注目されたMeasure Mapでは、Google買収後すっかり音信不通。
 それぞれのサービスは当然、GoogleDocsやGoogle Analyticsに機能が反映されてくることになると想像されますが、あっさりと買収先のサービスを凍結してしまうその姿勢からは、買収したサービス自体のブランド価値や顧客ベースをあまり気にしていないという意識がありありと出ている気がします。
(さすがにYouTubeについては今のところアプローチが異なりますが)
 サービスを買収したものの、IDを統合しようと試みる程度で、元のサービスにはそれほど手を入れないYahooに比べ、買収後にサービスやブランドを即統合するこのGoogleのアプローチは、明らかに180度違います。
 以前、「GoogleのM&Aにみるハイテク業界の技術マーケティング戦略って」という記事であしのさんが、「買収によるYahoo!の成長の影では、自社製サービスとのバッティングや、プロダクトポートフォリオの混乱が起きており」、Googleはシタタカサを感じると書かれていましたが、ようやく私も実感できてきました。
 もちろん、Googleの買収戦略が100%正しいと言うつもりは無く、先日、dodgeballの開発者がGoogleにふまんたらたらで会社を辞めるなんてニュースもありました。
 ただ、ここから見えてくるのはGoogleはサービスではなく、開発者や経営者という人が欲しくてその企業を買収しているのではないかと言う点です。
 Yahooの場合はそのサービス自体が欲しいため、買収した後にそのサービス自体に手を入れるのに躊躇しているように見えますが。
 Googleのように人が欲しい場合は、その人たちが新たな職場でこれまでどおりのモチベーションでサービス開発をしてくれるなら元のサービスはある意味なくなっても良い訳で。
 先日買収したDoubleClickのケースで、実は併行してGoogle社内でDoubleClickキラーとなるサービスを開発していたという話を聞くと、そんな思いはますます強くなります。
 仮に同じサービスを形上は開発することができていたとしても、そのサービス自体を将来的にリードして、運営していく人の価値を重要視していると言うところでしょうか。
 こう見ていくと、やはりYahooとGoogleというのは事業上は似ているように見える企業でも、その遺伝子は全く違うのだと言うのを改めて感じます。
 もちろん、買収戦略だけが決算の話とつながっているわけではないのですが、たしかにYahoo!はこの状況を挽回するには、根本的な何かを変えなければいけないのかもしれないと思えてきます。
(全く違う路線を歩み続けると言う選択肢もあるのでしょうが)
 まぁ、そうはいっても米国のYahoo!とGoogleの力関係と、日本のヤフーとグーグルの力関係では話は全く違うのですが・・・