NHKも“YouTube的見逃し需要”に対応?–「NHK技研公開」、5月24日開幕へ – CNET Japanを読んで。
NHKが放送した番組をインターネット経由で再配信する「アーカイブス・オンデマンドサービス」をアピールしていたそうです。
あくまでサンプル展示の状態で、実際のサービスは2008年の開始予定と結構先の話ではあるのですが、いよいよ日本のテレビ局によるインターネット配信の本格的な取り組みが始まるという意味で注目のニュースだと思います。
このニュースを見ていて思い出したのが「メディアとネットの融合」という言葉をめぐる議論。
「メディアとネットの融合」というキーワードは、もう2年以上前、ライブドアがニッポン放送買収を仕掛けたときに、随分と議論された言葉。
そのためか。いまだにこの言葉に嫌悪感を示すマスメディア関係者(特にテレビ関係者)も多いようです。
今週、久しぶりに民放でディレクターをやってる友人と飲む機会があったのですが、彼もやはり「メディアとネットの融合なんてありえないと思う」と、はっきり言い切っていました。
先日、RTCカンファレンスでメディアをテーマにしたパネルディスカッションに参加させてもらったときに、最後に上原さんから「メディアとネットは融合するか」という質問をされて「メディアとネットの融合はもうとっくに始まっていると思う」という趣旨の発言をしましたが、引いた視点で見れば誰もがそう言うはずです。
紙メディアである新聞や雑誌もニュースサイトを運営しているし、ラジオ局がポッドキャスティングを始めてみたり、テレビ局が動画共有サイトを運営してみたりしています。
そういうサービスレベル以外でも、テレビ番組でヤフーの検索画面やGoogle Earthが頻繁に使われるようになったり、テレビコマーシャルの誘導先が「続きはネットで」となっていたり、クイズ番組と同じ問題にネットを通じて参加できたり、既存メディアとネットの融合は着実にそのバリエーションを広げています。
そういう意味では、メディアとネットの融合は確実に進んでいるはずなのですが、それでもテレビ関係者がその言葉自体を否定するのはなぜなのでしょうか。
ひとつには、ネット企業がテレビ局を買収すると言う行為に対する違和感もあるでしょう。(これは私も必要ない行為だと思っていますが)
もうひとつには、メディアとネットの融合と言う言葉が、テレビ番組のネット再配信をイメージしている人が多い点にもある気がします。
民放の友人は、某アイドル事務所や某お笑いタレント事務所がネット配信なんて許すわけ無いから、日本では民放は番組のネット配信には踏み切らないと言っていましたが、まぁそうなのかもしれません。
実際ジャニーズはいまだに所属タレントのインターネット上の画像掲載を基本的に認めていないようですし、YouTubeと提携しようとする放送局はMXTVぐらい。
iTunesでLOSTなどのテレビドラマを購入でき、大手メディア事業者がYouTubeと提携したり、JOOSTのようなテレビ局公認の動画配信サービスが開始されたりと言う米国の状況とは、大きく異なっているのは間違いありません。
ただ、結局は技術的には可能なことを、既存の法律や制度で無理やりふたをしている状況なわけで。
YouTubeやJOOSTは国境を超えて確実に日本の視聴者にも影響を与えています。
そういう意味では、長期的には、今回のNHKの「アーカイブス・オンデマンドサービス」のようにテレビ局自らが実験をしながら模索していく必要があるはず。
是非、日本のテレビ事業者の方々にも、「メディアとネットの融合は無い」なんて見て見ぬ振りを決め込まずに、「自分たちがネットを融合してやる」ぐらいの気概で、インターネットを使った新しいチャレンジをもっとしていって欲しいものです。