Webキャンペーンのしかけ方 (渡辺 英輝 ほか)

Webキャンペーンのしかけ方。 広告のプロたちがつくる“つぎのネット広告” Webキャンペーンのしかけ方は、4名の今注目の広告マンによって書かれた本です。
 光栄にも献本いただきました。
 このWebキャンペーンのしかけ方が出るのと同じ時期に出たのが「クチコミの技術」になるのですが、クチコミの技術が白い表紙なのに対して、こちらは印象的な黒い表紙。
 一部界隈ではクチコミの技術を白本、Webキャンペーンのしかけ方を黒本とセットで読むのを勧める人も増えているようですが、個人的にも賛成です。
 クチコミの技術が、ブロガーというクチコミの通り道になる立場からクチコミの広がり方を分析した本なのに対し、Webキャンペーンのしかけ方は、そのクチコミの発信源となる広告キャンペーンをしかける広告マンの側からWebならではのキャンペーンの仕掛け方を分析した本になります。
 両方を読むと、なんだかネットクチコミやWebキャンペーンが立体的に見えてくる気がします。


 一般的には広告キャンペーンと言うと、まだまだテレビやマス媒体が中心で、Webを使ったものは検索キーワード広告やバナー広告程度の印象が強いのですが、この4人がしかけるWebキャンペーンは一般的な広告キャンペーンとアプローチが大きく違う印象です。
 個人的に特に印象的だったのが、著者陣が口をそろえてテレビCMでの「続きは○○を検索してネットで」的なCMからインターネットに振ろうとするキャンペーンに否定的だった点。
 そう言われると最近のテレビコマーシャルは、やたらと最後に検索窓を出すケースが多いわけですが、はたして大金をつぎ込んだテレビCMで、どれだけの人がインターネットに流れてきているのか気になるところです。
 
 ちなみに、渡辺さんがこの本で提唱しているDRIPメソッドですが、1年前にとある講演で渡辺さんがプレゼンしていたのがとても印象に残っています。
 セミナーの後の喫茶店で、これで本が出せますよと話をしていたと記憶してますが、本当に本になるとなかなか感慨深いものがありますね。
 ということで、Webを通じたマーケティングや、広告に携わる全ての人にお勧めの本です。
【読書メモ】
■インターネットの特性
・能動的なターゲットが集まる場所
・結果が分かりやすく見える(見えてしまう)場所
・つぎにつなぎやすい場所
・あらゆるものとつなげられる場所
・アクションを待つしかない場所
・なにもかも広まる場所
・相手をしぼってメッセージを届けられる場所
・でも、クリエイティブ作業は基本的に同じ
■アイディアのチェックポイント
・課題の解決になっているか
・技術に負けていないか
・ひとことで説明できるか
・化学変化を試しているか
・コミュニケーションをつくれているか
・ツッコミを入れたくなるか
・課題の本質を見つめ続けているか(ふたたび)
■イノベーター理論の5つのグループ
・イノベーターとアーリーアダプター : アルファブロガーとBリストブロガー
・アーリーマジョリティ :一般のブロガーやmixi日記を書いている人たち
・レイトマジョリティ:インターネットを閲覧し活用している人々
・ラガード:インターネットも使わない人たち
■WOMMA倫理規定
・消費者に報酬をわたしながら、企業との関係を明らかにすることなく、商品推奨を依頼する行為をしない。
・消費者同士のクチコミにおいて、サクラを起用したり、覆面マーケティングをおこなわない
・クチコミでなにをいうべきかを消費者に指示しない
・クチコミ唱道者の本当の正体について、消費者を混乱させたり誤らせたりするような開示はおこなわない。
・クチコミマーケティングプログラムに子供は関与させない
・競合企業のネガティブな情報流布を目的とした活動などをおこなわない
・既存ビジネスの慣習を理解し、既存ビジネスで認められている手法は、その領域では継続して活用する
・クチコミマーケティングを提案、受注する際には、広告主にこれらのリスクの説明をおこなう
■Engagementを実現するための3つの施策
・サービス
・コミュニティ
・バイラル
■DRIPメソッド
・Deep 一歩踏み込んだ深い関係
・Interactive 対話から成り立つ関係
・Participation 参加して実感
・Repeat 誰かに紹介したくなること
■コミュニケーションデザインにおける指針
・新規サービスをつくるのではなく、既存サービスを利用する
・なるべく広い層に対して門戸を開いた施策にする
・ユーザーに頼りすぎた体裁にしない
・商材やWebに適したスピードの施策を考える
・シンプルなコミュニケーションを指向する
■情報を編集するための10のアプローチ
・情報に優先順位をつける
・フリークエンシーに頼らない
・ユーザーの「人生での重要度」で時間設計する
・購買導線上へのWebの関与の仕方を見きわめる
・イベント化する
・体験させる
・話者を変換する
・ユーザーの生活文脈に合わせる
・情報を得るためのハードルを下げる
・ひとことで説明できる「特徴」をつくる
■インターネットには、フィジカルな感覚がつきもの
 読書よりもスポーツに近い。
■これまで広告は、大量の機会を使って、一方的に情報を提供することを前提としてきた。
 (これから広告をしたい企業は)シェアの輪の中に加わることだ。もしくは、そのシェアをサポートしたり、お膳立てしたりする。
【目次】
まえがき いまなぜWebキャンペーンなのか
Chapter1 Webキャンペーン五輪書(阿部晶人)
Chapter2 めざすは感動の場づくり(渡辺英輝)
Chapter3 Webコミュニケーションのための情報編集(螺澤裕次郎)
Chapter4 一方的に話す人は嫌われる(伊藤直樹)
付録 インタラクティブトーク「Webコミュニケーションのゆくえ」

Webキャンペーンのしかけ方。 広告のプロたちがつくる“つぎのネット広告” Webキャンペーンのしかけ方。 広告のプロたちがつくる“つぎのネット広告”
渡辺 英輝 阿部 晶人 螺澤 裕次郎

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