ペイパーポストかどうかが問題ではなく、読者にどう受け止められるかが問題だと思う

 先日、GoogleのPayPerPost騒動の長文のエントリーで、言いたいことを全部書いて肩の荷がおりた気でいたのですが。
 前の記事にトラックバックを頂いて知ったのですが、残念ながらサイバーバズさんのところで別の騒動に飛び火しているようですね。
 そもそものきっかけは、サイバーバズさんがプレスリリースで、自社のサービスがペイパーポストではないと否定したところから始まっているようです。
cyberbuzz_press.png
 私自身、先日の記事で、「サイバーバズさんのサービスは同じPayPerPost(記事単位で謝礼を支払う)サービスでも、記事にサイバーバズの企画であることを明示させているという点で、PayPerPostサービスの中では比較的倫理的な意識の高いサービスというのが個人的な認識」と書いていることも、騒動の一翼を担ってしまっているようですので、ここの整理からしたいと思います。
(またもや長文注意です・・・すいません)
 個人的にはペイパーポスト(Pay Per Post)は、単純にペイパークリック(Pay Per Click)やペイパービュー(Pay Per View)と同じ英単語として捉えており。
 ペイパークリック=クリックに応じて料金を支払うこと
 ペイパービュー=視聴に応じて料金を支払うこと
 
 と同じく
 ペイパーポスト=記事に応じて料金を支払うこと
 と理解しています。
 まぁ、個人的には「ブログ記事広告サービス」と呼びたいのですが、いわゆるGizmodoとか田口さんがやっているブログメディア系の記事広告とごっちゃになってしまうので、ペイパーポストと言い続けている次第。
 そう言う意味では、サイバーバズさん自身は「記事掲載に対する対価として金銭の支払いは推奨しない」とリリースで否定されていますが、トラックバックで頂いた記事にも書かれているように、FAQで記事を書くことに謝礼を支払うと明記されていたなど、広い意味ではペイパーポストに分類されるのが自然なのではないかと思っています。
 
 細かい話を言うと、おそらくサイバーバズさんからすると、今回のGoogleさんの案件はブログパーツ広告だったということなのでしょうが、例えば、単純にブログパーツを広告として掲載する場合には、当然クライアントは表示位置や表示回数、表示期間を設定するはずですが、サイバーバズさんの案件は掲載位置は自由のようですし、記事内(ブログの全体よりも明らかに表示数が少なくなる)だけでも良い印象があり、掲載期間等も指定が無いようで、いわゆるバナー広告的なブログパーツ「広告」とは種類が違うように思います。
 
 その代わりに、参加者の皆さんの記事を見ている限りではブログでの記事紹介とセットになっている印象が強いですから、ブログパーツ掲載+記事執筆で謝礼が支払われるという意味で、これも広い意味でのペイパーポストと言えると思います。
 ざっくり言ってしまうと、記事執筆にブログパーツ掲載が追加されているだけに見えるわけです。
 この点については、AMNでブログパーツシーディングを開始する際に、パートナーブロガーの方々とかなり密な議論を行い厳しいご指摘もいただいた結果、上記のような結論に至っていますが、あくまで私の個人的な認識ですので、一般認識や事実と間違っているようであれば、修正をさせていただきたいと思います。
 ただ、今回Googleが自ら、サイバーバズのサービスを活用してキャンペーンを行ったGoogle Japanのページランクを下げるという形で罰したように、サイバーバズさんのサービスがGoogleの定義の中でも広義のペイパーポストとして認識されてしまったのは、否定できないと考えています。
 この点については、サイバーバズさんとGoogle Japanさんとの間の話し合いがどのようにされたのか分かりませんので、結果から類推しているだけです。
 ブログを活用したマーケティング事業者としては、今後の境界線のためにもそのあたりの議論が何らかの形で開示されることを期待しています。
 さて、ここからようやく本題に入るのですが。
 個人的には先日の記事にも書いたように、ペイパーポストであること=マーケティング手段として悪い、という話ではないと考えています。


 例えば、ブログを活用したマーケティング手法としては下記のように多数あります。
blogmarketing_map1.png
 縦の軸はそれほど深く考えずに並べているのですが、ざっくり上の方が金銭的報酬が無いもので、下の方が何らかの金銭的報酬があるものです。
 ネット上の議論を見ると、このうちのどれが悪いかどれが良いかという議論をされている人もいるように思いますが、どの手段も使い方によっては効果もでるし、読者にも嫌がられないようにするやり方はあると思います。
 そう言う意味で、個人的に重要だと思っているのは、横の軸。
 適切な情報開示があるかないかで、ばっくり半分に割るとするとこういうイメージです。
blogmarketing_map2.png
 
 もちろん、この赤い部分は現状法律的にNGというわけではありません。
 例えばバナー広告は、広告枠の場所が読者に共有されていれば、あえて広告と明記する必要は無いでしょう。
 アフィリエイトについても、マウスオーバーすれば分かるけれど、素人には広告とわからないと言う課題も指摘されていますが、まぁ現状大きな議題にはなっていません。
 ペイパーポストとある意味仕組みとしては同じである記事広告にしても、メディアによっては記事広告と分かりづらい仕組みになっているケースもありますし、テレビで自社の商品を取り上げてもらうプロダクトプレイスメントなども、ある意味右側と考えることもできます。
 ただ、過去の炎上事例やトラブルの事例を考えると、この赤い部分については、できるだけ避けるべきだし、実施するにはクライアントにリスクを説明すべきと言うのが私の基本スタンスです。
 謝礼の有無を隠していると、短期的には効果は高くみえるかもしれませんが、過去の女子大生ブログ炎上や、ソニーのPSPやらせビデオ騒動、昨年末のマクドナルドの行列騒動等のように、発覚した際にトラブルになるリスクがあり、そのリスクを考えると、そこまでして非開示でマーケティングをしかけるメリットが実は低いのではないかと考えているためです。
 極端な話、イベントやモニターなんかでも非開示のリスクはゼロではないと考えており、AMNでも、できるだけクライアントにこのリスクを説明して、各ブログの読者にイベントがブロガーの接待であったり、ブロガーだけが優遇されていると受け止められないようにすることを注意していますし、あえて、ブログマーケティングポリシーで、基本的に非開示のマーケティングはしないことを宣言しています。
 マーケティングの観点からすると、最終的には、企業の行動が読者や利用者にどう受け止めるかがポイントですから、読者に嘘をついていたとか、隠し事をしているとか思われないことが、一番重要だと思っているわけです。
 上記のような分類で考えると、現在のサイバーバズさんはペイパーポストの中でも明らかに左側で、マーケティングのサービスとしては問題ないレベルというのが個人的な認識です。(ただ、CNETの記事におけるGoogleの発言を見ると、サイバーバズさんの開示レベルでもGoogleにとっては不十分という判断に見えます。)
 
 ただ、今回の話がややこしいのが、Googleが検索エンジンサービスの観点から左側も禁止している点でしょう。
 つまり図にすると下記の通り。
blogmarketing_map3.png
 有料リンク及び、それに類する結果を生むと見られるペイパーポストについては、Googleの検索結果を金の力で直接的に操作する行為として、Googleは根絶を目指しているわけです。
(微妙に一番左側にすきまを残しているのは、いわゆるno followタグを入れれば大丈夫というエリアです。ただ、実行上はこのルールが守られるのは難しいし、SEO目的の時点であり得ないと思っていますが)
 そう言う意味で、個人的には先日の記事にも書いたように、今回の騒動の根本はGoogleがGoogle自身の倫理水準を破っていたことにあり、サイバーバズさんのサービスが一般的にはペイパーポストの左側でリスクが低いはずなのに、GoogleではたまたまNGのエリアだったという話だと思っています。
 そもそも、先日の記事にも書いたように、日本の最大の検索エンジンであるYahooはこの問題に対しては沈黙を守っており、というか自らペイパーポスト的なサービスを実施していたぐらいですから、極端な話、推進派(?)だったと言えてしまうかもしれません。
 また、日本には私がリスクが高いと定義した、右側の非開示ペイパーポストサービスも山のようにありますし、日本を代表する大手企業の多くが利用しているのを目にします。
 実際に大手の広告代理店さんが取り扱うことも多いそうです。
 そう言う意味で、ペイパーポストは日本ではすでにマーケティングの手段としては、(好き嫌いは別として)既に市場が確立されているという事実自体は認める必要があり、Googleのルールと日本の現実は乖離していると言った方が良いでしょう。
 実際、米国のPayPerPost参加者はページランクを0に下げられるという脅しを受けていますが、日本で営業しているペイパーポストサービスがそういう処罰を受けたという話は全く聞きません。
サイバーエージェントグループのサイトが、リンクファームで検索結果から消えたことはありましたが
 日本の事業者の中には、堂々とSEO効果を売りにペイパーポストを売り込んでいる事業者もあり、Googleの基準からすると典型的な違反なのですが、日本では放置されている状況です。
 つまり、Google本社のルールは日本では機能しておらず、たまたまGoogle Japanは本社に見つかったので大目玉をくらいましたが、あくまでGoogle社内の基準違反が問題だっただけで、他の日本企業にとっては他人事でしか無く、サイバーバズさんはある意味被害者と言っても良いぐらいだと思います。
(とはいえ、Googleのポリシーを知らずに、ペイパーポストと捉えられてしまいそうなサービスを売り込んでしまったというのは、プロとしては運が悪かったでは済まされない気もしますが)
 
 そう考えると、今回のケースはあくまでGoogleの社内事情であり、サイバーバズさんは、わざわざプレスリリースを出してまでペイパーポスト否定にでる必要は無かったと思うのです。
 ペイパーポストとレッテルを貼られてサービス全体がGoogleから否定されるのが避けたいという思いから、否定リリースを出されたのかもしれませんが・・・
 ただ、今回、残念で仕方がないのは、リリースのその後をめぐるサイバーバズさんの対応です。
 サイバーバズさんには申し訳ないですが、簡単に経緯をまとめると下記の通り。
2月12日【サイバーバズ】プレスリリースでペイパーポストとの報道を否定
 ↓
はてなブックマーク等で、FAQや利用規約に謝礼についての記載があることが指摘
 ↓
■2月13日【サイバーバズ】FAQ等を(おそらく)何の告知もなく謝礼の記載の無いものに差替
 ↓
FAQの差し替えについてブログでキャプチャつきで指摘
 ↓
■2月13日夜か14日?【サイバーバズ】FAQ上部に修正についての記載を追記
 ↓
FAQの注釈がついたことが紹介。曜日の記載間違いが指摘
 ↓
■2月16日予測 多分上記のFAQの曜日か日付が修正されるだろう
 (記事執筆時点2月16日午前3時段階では未修正)
 完全に対応が後手後手にまわっており、正直言って、この対応は褒められたものではないですね。
 Googleのペイパーポスト騒動については、どちらかというとサイバーバズさんは巻き込まれてしまった被害者だと思っていましたが、この展開はあまりに印象が良くないです。
 注釈に書かれているように、FAQの内容とは別に方針自体を2007年10月以降に変更されていたのかもしれませんが、プレスリリースで報道内容を否定しておいて、FAQに指摘を受けたから、それをトップページ等に開示せずに差し替えるということは、現在騒動で注目されていることを踏まえると、後付で変えたと思われても仕方がない行為です。
 
 2007年10月頃のプレスリリース更新情報にもそれらしき記載はありませんから、会員にも伝わっていなかった以上、再度それを通知することが重要ではないかと思います。
 ざっと見させて頂いた感じでも、複数の方がブログで不安を表明されているようですし。
以前にも、CyberBuzzでgoogle関連の口コミ記事を書いたことがあります – 日毎に敵と懶惰に戦う
Googleペイパーポスト事件は、ブログマーケティングの転機となるか – 煩悩是道場
まわりぶろぐ: なんかおかしいぞ,サイバーバズ。
CyberBuzzのPay Per Post認識|堺商人的WebマーケティングプランナーのBlog
 おそらく、営業上の観点から報道内容を修正させたかったというのが、今回のプレスリリースの主旨だと思いますが、おそらく今回の騒動で一番不安を感じているのは、サイバーバズの会員登録をされているブロガーの方々だと思います。
 今回の騒動と同じタイミングで、サイバーバズさんの参加ブロガーを含む、日本のブロガーのページランクがかなり下方修正されているという怪情報(?)が飛び交っていることもあり、混乱も相当あるはずです。
 そんな中、サイバーバズさんが会員の方々に説明をせずに、サイト上の記載だけを黙々と修正するというのは、本来クライアント企業がマーケティングでそういった行為を取ろうとしたときに、いさめる立場のはずの企業の行為としても、実に残念な対応です。
 今回の騒動の一番の被害者は、Googleのポリシーやリスクのことを全く知らずに案件に参加されていたブロガーの方々です。
 そんな中、それらの方々を無視してこういった表面上の修正に終始するのは、正直サイバーバズの参加ブロガーの方々に失礼なのではないかと思います。
 Googleの騒動に巻き込まれた形で、サイバーバズさんの社内が相当混乱していて、担当の方々も悩みながら対応をされているのは間違いないと思いますが、これまでの自社のサービスを支えていたのは誰なのかというのを、一度落ち着いて振返ってみられるのが良いのではないかと思います。
 是非、サイバーバズの中の人たちが、現在の後手後手対応の方針を改めて、一度会員の方々に今回の混乱についての説明を冷静に実施され、今後よりブログ界やブロガーにとって価値の高いサービスを提供するための議論を尽くされることを、切に祈っております。
 という話は、今後のAMNや私個人にとっても忘れてはいけない話だと、改めて痛感しているところなのですが。
 前回のWOMマーケティング研究会の時にも、ペイパーポストの定義や線引きについて各グループで相当議論があったこともありますし、今回の騒動における議論の混乱で、その定義の必要性についてはますます明らかになりましたので、次回のWOMマーケティング研究会では、皆さんとペイパーポストの定義や課題についても議論をさせて頂ければと考えています。
 近いうちに告知がされると思いますので、興味がある方はWOMJのメーリングリストの方に登録をお願い致します
(前回の応募数を考えると、また抽選になる可能性が高いですので、ご理解ください。)
 また、研究会には参加できないけれども、ペイパーポストや、私が上記で定義したようなクチコミや広告関連サービスの分類について意見があるという方は、是非トラックバックでご意見お寄せください。
 当日の議論の参考にさせていただきたいと思っていますし、今後のWOMマーケティング協議会としてのガイドライン案の策定に向けて、非常に重要なプロセスの1つになると思っています。
(※とりあえず、PayPerPostという表記は、アメリカの企業名だという指摘をいただいたので、今回の記事から、いわゆる記事単位報酬サービスという文脈では「ペイパーポスト」というカタカナにすることにしてみました。)

“ペイパーポストかどうかが問題ではなく、読者にどう受け止められるかが問題だと思う” への5件のフィードバック

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