WISHというイベントで、私が表現したかった3つのこと

 はやくもWISH2009が終わって3日が経とうとしています。
 皆さんのフィードバックに一通り目を通しながら、そもそも自分自身がイベントの総括をしていないことを思い出しました。
DSC 0098(Photo by Crema
 当日、壇上ではすっかり舞い上がってしまって、大事なことを言い忘れているような気もするので、私個人が今回のWISH2009を通じて表現したかったことを3つ、ここにメモっておきたいと思います。
 イベントが終わってからこういうことを書くのも、今更手遅れな気がしないでもないですが、こういうことがやりたかったんだと思って頂ければ幸いです。
公式レポートが読みたい方はこちらをどうぞ
 なお、日頃私のブログを読んでいる方は、お察しとは思いますが、長文注意です。
WISHというイベントで、私が表現したかった3つのこと
■本人が楽しいことが一番大事
■サービスはユーザーと一緒に考える時代
■ウェブに境界線なんてない



■本人が楽しいことが一番大事

 まず、一つ目のフレーズは、私が5年前にとても大きな影響を受けたGREEの田中さんのインタビューの記事から。
「それでいい、楽しいから」――7万人の町「GREE」を一人で作ってる会社員
 今や時価総額1000億円を超えるGREEも、5年前には田中さんが楽天の社員時代に趣味で始めたウェブサービスだったという逸話です。
 私には、今でもこの印象がとても強かったので、この話を紹介したいがためだけに今回ダメモトで田中さんに審査員をお願いしたというのが背景です。
wish2009_tanaka.png(Photo by Ya-ko
 インターネットの未来とか、日本のウェブとかを議論する時、私たちはついつい「Googleの次の技術は何か」とか「mixiやGREEを超えるウェブサービスは何か」とか、すごい大きなレベルで議論をしがちなような気がします。
 
 私自身、海外のウェブサービスをレビューし続けてきましたが、それ自体、アメリカでまた何か大きな波が生まれるだろうから、それを見逃さないようにしよう、という行為でした。
 ただ、最近は、ウェブを活用したサービスとか端末の可能性とかって、実は案外そういう小難しげな競争論とか経営論とかではなく、一人の開発者の楽しいという思いから始まるもの何じゃないかと思ったりします。
 
 当然、GREEのように明確にビジネスが見込めると判断されるサービスであれば、当初の私財をなげうった趣味のインターネットサービスから、一転して会社化し、資金を集め、auのような大企業と連携し、上場して市場価値が1000億円を超える企業になる、ことも可能ということが証明されているわけですから、それを目指すのも、また1つの道でしょう。
 でも、全てのウェブサービスや製品がそれを目指す必要もないわけで。
 趣味で、数万人の人たちに、新しい何かとか、便利なことを提供できてしまうのも、これまたインターネットならではの魅力のように思います。
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 もちろん、売上が大きく上がらなければ、これまでの価値観でいうところの「成功」ではないかもしれませんが、サービスを作り出した人が、多くの人に喜んでもらっていてそれで楽しいなら、実はそれも1つの「成功」のはず。
 そう言う意味では、今回のWISH2009で、赤松さんがてっきり趣味でやっているのかと思っていた、とにかく赤松さんの楽しさが全面的に伝わってくるJoker Racerが大賞を取ったというのは、個人的にも非常に印象的な結果でした。
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 ついでに、5年前、「それでいい、楽しいから」という言葉を残していた田中さんが、赤松さんにビジネスモデルについて質問している光景というのも、何だか個人的には非常に象徴的なものに思えたり。
 自分が本当に楽しいと思うものに打ち込んで、それを周りの人も楽しんでくれて、それを自分の仕事にしてしまえる。
 こんな幸せなことはないんじゃないかと思いますし、やっぱりそういう人がインターネットでは一番強い。
 そんなことを、今回のプレゼンターの方々から感じて頂けていると良いなぁと思います。
■サービスはユーザーと一緒に考える時代
 WISHで表現したかった二つ目のフレーズは、同じく個人的に大きな影響を受けた5年前のmixi無敵会議の記事から。
Webサービスのビジネスモデルはユーザーが考える時代?
 これはもともと、mixiの笠原さんがインタビューで、「『mixi』は儲かっていません」と発言したことをきっかけに、利用者主導でmixiのビジネスモデルを考えようと開催されたイベントについて書かれた記事。
 この逸話が紹介したくて、笠原さんにも無理をお願いして、動画のメッセージを寄せていただいた次第です。(残念ながら音声の関係でちゃんと皆さんに聞いて頂けず、すいません。)
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 通常、新規サービスや新規製品を事業として立ち上げる場合、当然ビジネスモデルの問題がついてまわります。
 私たちは、残念ながら夢や希望だけを食べて生きてはいけませんから、ある程度の収入は必要ですし、収入を生んでくれるサービスや製品だからこそ、さらにコストをかけられるという現実もあります。
 そんな中、新規サービスの開発者や起業家というのは、ついつい自分たちだけでそのビジネスモデルを探し出す重荷を抱えてしまいがちなわけですが。
 実は、インターネットを上手く使えば、ウェブで繋がる利用者に直接助けを求めることもできるわけです。
 逆に言うと、ウェブを面白くしてくれる新しいサービスや製品が立ち上がるかどうかは、それを使っている私たちが、サービスの開発者や企業をどれだけ支えてあげられるか、支援してあげられるか、ということにかかってきていると言うこともできるのではないかと思ったりします。
 あのmixiですら、サービス開始後しばらくは赤字サービスで、利用者が集まって何とかしてあげようという時代があったぐらいなわけですから。
 
 そう言う意味で、私たちユーザーは、単純に新サービスや製品に対して批評家としてダメ出しばかりをするのではなく、利用者として何をしてあげられるかを考えるべきなんじゃないかなと思ったりするわけです。
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 そんな背景もあって、今回のWISH2009では、プレゼンターの皆さんに自分のサービスのWISH(願い)というのを出してみてもらいました。
 普段、サービスを一生懸命運営していると、あれが欲しいこれが欲しいというのはなかなかいう機会は無いですので、何かの出会いのきっかけになれば幸いです。
 ちなみに、そう言う意味では、今回のWISH2009で、「ファンに愛されているけど儲かっていないサービスが好き」なITmediaの岡田さんが、lang-8をピックアップしていたのも個人的にはとても印象的な出来事でした。
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 今回のイベントをきっかけに、各サービスのユーザーの皆さんがさらに積極的に中の人たちをサポートしてくれると良いなぁと思います。
■ウェブに境界線なんてない 
 三つ目のフレーズは、またまた同じく個人的に大きな影響を受けた下記の記事に影響されて。
「みんながちょっとずつ頭がよくなる世界」──「百式」を運営するビジネスマン
 この記事自体は、今回プレゼンターとしても参加してくれた百式の田口さんのインタビューなのですが、個人的に忘れられないのが「究極のインターネットは、みんながちょっとずつ頭がよくなる世界になるってことだと思う」というフレーズ。
 インターネットって、みんながつながっているので、みんながちょっとずつエネルギーを出し合ったり、アイデアを出したりすると、みんながちょっとずつ頭が良くなる。
 そんな世界観を表現してくれたインタビューでした。
 個人的にこの記事を読んで思っているのは、「みんな」というのが、もっともっと増えて欲しいと言うこと。
 
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 日本でウェブ関連サービスというと、いわゆるネットベンチャー界隈の人たちという印象が強いわけですが。
 実際には、大企業の人たちも、ネット以外の中小企業の人たちもウェブを使っているし、ウェブ関連のビジネスを模索しているわけで。
 シリコンバレーのような分かりやすいネット産業圏が存在しない日本においては、ネット業界の人たちも、もっともっとそういった、いわゆるネットベンチャー以外の人たちとも、つながっていくべきだと思うわけです。
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 そう言う意味で、今回プレゼンをされた、ソニー銀行さんのような通帳とウェブの組み合わせ、日産自動車さんのようなカーナビとウェブの組み合わせ、ドレスファイルさんのようなクリーニングとウェブの組み合わせ、Joker Racerさんのようなラジコンとウェブの組み合わせ、というようなPCの画面の中だけでないウェブの可能性というのが、日本のウェブの一つの方向性としてはまだまだ模索できる部分なのではないかと強く思ったりします。
 イベント当日に、日産自動車の石川さんが「カーナビもネット端末の仲間に入れて下さい」という主旨の発言をされていましたが、どちらかというとウェブのコミュニティにいる我々自身が、もっとネットの外のコミュニティの仲間に入れてもらおうと努力するべきなんじゃないかなーと思ったり。
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 メディア企業とネット企業の対立とか、外資系ネット企業に対する国内企業の牽制とか、政治的な対立はいろいろあるんだと思いますが、もっと同じウェブでつながるインターネットの利用者として協力しながらウェブを面白くしていく方法はあるんじゃないかなーと。
 ウェブに境界線なんて無いわけですから。
 今回のイベントがきっかけで、そんないろんな組織とか企業の境界線が崩れていくと良いなぁと心から思います。
DSC 0028(Photo by Crema

“WISHというイベントで、私が表現したかった3つのこと” への1件のフィードバック

  1. Wish2009に参加して感じたこと、考えたこと

    旧聞になりますが、去る8月21日(金)、アジャイル・メディア・ネットワーク(AM…

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