「日本人がコンピュータを作った!」は、アスキーの遠藤諭さんが日本のコンピュータの歴史を支えた人々にされたインタビューをまとめた書籍です。
献本を頂いたので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
正直、私はこの本を読むまで、日本にこれだけ様々な形でコンピュータの歴史に貢献した人たちがいるとは全く知らなかったのですが、改めて日本が何故これだけ世界において存在感を持つ企業を多数持っているのか納得させられる本です。
国や産業全体としての優勝劣敗がある一方で、実は産業の進化の先頭を支えているのは一人の人間であるということを改めて考えさせられますので、今、ネット業界やソーシャルメディア業界の第一線で凌ぎを削っている若い起業家の方々や、経営陣の方も刺激を受ける点がある本だと思います。
【読書メモ】
■渡邊和也 マイコン技術を日本中に広めた立役者
■76年9月に秋葉原のラジオ会館内にBit-innというマイコンサービルームを開設
それまでの大メーカーは、NECの電話交換機や衛星通信のように高級なものをつくることに誇りを持っていた。そんなわけで「NECは秋葉原にオモチャがらみのものを作って、素人を一杯集めて何かやっている」といった声が聞こえてきたという。
■TK-80をやれた四つのポイント
・革新的な市場が登場してくるときは、関係者の8割の人が反対しているくらいのときが、それに携わる絶好のタイミングである。
・既成概念にとらわれてはいけない。とらわれていると新しいものにはつながらない。
・いつもユーザーを見てすぐに実現する。競合の動きばかり見ているのはダメである。
・世界で起こっている情報を10日以内に仕入れる。とくにインフォーマルな情報に価値がある。
■岡崎文次 日本最初のコンピュータを一人で創り上げた男
「電子計算機の初期の研究者は、ハードのこと、ソフトのこと、アプリケーションのこと、全部を考えて仕事を進めていました。それに対して、最近の若い人々は、計算機の仕事をしていても、枝の先の一枚の葉を担当させられることが多くて、ちょっとかわいそうな感じ、さびしい感じを受けますね」
■後藤英一 日本独自のコンピュータ素子の生みの親
「(日本人は)オリジナリティには乏しいけど、デベロップメントしてパーッと売るのは得意だろ。いいものを安く売るってのは大切だしさ、このメリットをわざわざ改める必要はないよ。国民性はそうすぐには変わらないよ。」
■喜安善市 コンピュータに日本の未来を託した熱血漢
「日本は軍需産業を放棄しただけに、民から官へというテクノロジーの流れがアメリカなどよりも早く生まれたんですね。パソコンの普及も若年層へのテレビゲームの浸透が牽引力となったわけで、これが今後のトレンドです」
■和田弘 トランジスタと電子技術の重要性を説き続けた先駆者
「戦争に負けて何とか日本を再建しなきゃいかんという意地のあった連中は消えてしまいました。あるいは、日本はもう一度つぶれなきゃいけないのかもしれませんね」
■平松守彦 電子立国日本の立役者となった若き通産官僚
「日本の場合はハードを売るメーカーがソフトウェア開発をはじめたわけで、サービスを売るのはもともと不得意なんですよ。それに、日本にはサービスはただという伝統的な意識があります。いまだに日本の官公庁でコンピュータを発注するとき、ソフトウェアの項目がないのを知っていますか?」
■佐々木正 ロケット・ササキと呼ばれた男
「僕が神戸工業自体に体感したのは、テクノロジーオリエンテッドの会社というのはだめだということ。会社経営はコマーシャルオリエンテッドであることが一つの原則だと。社長が技術本位になりますと「こんないいもの、何で買わないんだ。お客さんが悪い」というふうになる。でも販売は上がらない。」
■嶋正利 世界初のマイクロプロセッサ「4004」を作った男
「正直にいえば、マイクロプロセッサが提供する知的能力には価値を見出していませんでした。先頭を走っている者には価値あるものを見つけ出す楽しみがありますが、開発されたものに価値を見出すことの出来る人は、それを広めてくれた人たちであり、ユーザーなんだと思いますよ」
日本人がコンピュータを作った! (アスキー新書 154) 遠藤 諭 アスキー・メディアワークス 2010-06-09 by G-Tools |