先日、デジタルガレージさんにご招待いただきLinkedInの日本担当の方との意見交換会に参加してきました。
※LinkedInのユーザー数は1億人を突破。
ターゲットは全世界の6.4億人のプロフェッショナルだとか。
当日の詳細については、ネタフルに「LinkedIn日本展開に関するブロガーミーティング」という詳細のレポートが上がっていますので、そちらをご覧いただければと思いますが、個人的な感想をこちらにもメモしておきたいと思います。
今回の会に参加する際の個人的な興味を正直に書くと、これだけFacebookがインフラ化してしまったインターネット上で、LinkedInははたしてどうやって生き残っていくのだろうか。という点にありました。
特に、日本においてはFacebookがある意味ビジネスSNS的に大企業のビジネスマンにも広がり始めている印象があるというのもあり、正直な印象としてはLinkedInが攻めるべき層は既にFacebookに取られてしまっているのではないかと感じるところもあります。
デジタルガレージさんがLinkedInとの提携を発表して話題になったのは先月の25日のことですが。
多くの方は忘れておられる、もしくは全く知らないのかもしれませんが、デジタルガレージさんがLinkedInの日本展開支援をすると最初に発表したのは実は「2007年9月」。
なんともう4年近く前の話になるわけです。
■デジタルガレージ、米LinkedIn社の日本展開支援で基本合意
個人的には、当時LinkedInが日本語化されるのを興味深く待っていた利用者の一人だったので、この日本展開がいつまでたっても実行されず、がっかりした記憶があります。
そう言う意味で、実は今回のミーティングではLinkedInの人とJoiさんこと伊藤穣一さんに、「今更日本語化って遅くないですか?」と、ひとくさり文句でも伝えようかな、ぐらいの気持ちがあったのは否定できません。
ただ、今回のミーティングで、JoiさんのLinkedInに対する思いを聞いて、ちょっとその印象は変わりつつあります。
個人的に抱いていたLinkedInに対するイメージは「転職SNS」。
登録後に詳細のプロフィールを入力する必要があったり、ヘッドハンターから実際にLinkedIn経由でコンタクトがあったりしたことから、個人的にはすっかりこの5年間、そう思い続けていました。
そう言う意味で、SNSとしてのソーシャルグラフをFacebookが占有し始めている世界の状況を考えると、LinkedInは転職SNSに特化するしかないんだろうな、ぐらいの印象でした。
ただ、Joiさんの話によると実際のLinkedInの利用方法は、SNSというよりも「ビジネスマンの生産性向上ツール」になりつつあるそうです。
実際に紹介されて驚いたのは、例えば「LinkedIn Today」というニュースアグリゲート機能。
見た目すっかりニュースサイトだと思うんですが、これはLinkedInのソーシャルグラフから、自分の繋がっている人たちが興味を持っているニュースをまとめてくれる機能。
Facebookのハイライトに近い機能と思ってもらえれば良いかもしれませんが、LinkedInの面白いのは、こうしたピックアップをインターネットやマーケティングなどの業界別に可能なところ。
LinkedInにおいては、基本的にすべての利用者が自分の職業や業界を入力しているため、こういった業界別のカテゴリ分けが非常に容易なわけです。
また、秀逸なのが右上の検索ボックスから利用できる「Signal」というアップデートの検索機能。
アップデートというのは、いわゆるツイッターのつぶやきにあたるもので、多くのLinkedIn利用者がツイッターのフィードをそのまま流し込んでいるんですが、これが意味がないと思ったら大間違い。
LinkedInにおいては、アップデートを期間や地域別はもちろん、自分とつながっているかどうか、所属企業、産業、出身学校など様々な条件で検索することができます。
例えば、ある2つの企業の合併の噂話をニュースで見たら、それに対してその会社の従業員がどのような反応をしているか、とか、同じニュースに対する反応を国別や産業別に眺めてみる、なんてことも可能なわけです。
利用者数で見れば、LinkedInは1億人でFacebookは7億人を超えたといわれてますから、圧倒的にFacebookが先行しているのは間違いありませんが、必ずしも利用者が多いプラットフォームが完璧ではないというのがSNSの面白いところ。
特に、実はLinkedInの利用者数増加のペースが加速しているのが、1つのヒントになるでしょう。
Facebookがプラットフォームになればなるほど、仕事のネットワークだけだったところに親や兄弟のような家族のつながりや、過去の大学や高校の同級生など、ノイズの多いソーシャルグラフになりがちなわけで、実際に米国ではFacebookはプライベートのネットワークというイメージを持っている人も少なくないようです。
そう言う意味で、日本でもFacebookが同様に幅広い世代にブレイクすれば、ビジネスマンにとって居心地の悪い場所になっていく可能性がないわけではありません。
その場合、LinkedInがリテラシーの高いユーザー向けのホワイトナイトとして捉えられる可能性があるわけです。
■現在LinkedInを使っている日本人ユーザーが多いのは、IBMやSONYの模様。
冷静に考えてみると、2007年の段階でLinkedInが日本語化していても、Facebook以上に超実名制なLinkedInが日本人に受け入れられたとはとても思えませんから、Facebookが普及し始めたこの段階で満を持して日本語展開に取り組むというのは、長期的に見ると悪くない選択とも言えるのかもしれません。
FacebookとGoogleの二者択一的な比較論争や、日本の三大SNSのユーザー数比較論争に見られるように、ついつい私たちは規模の大きいサービスや利用者の多いサービスの一人勝ち的な議論を展開しがちですが。
実はLinkedInのように個別のユーザーニーズに特化することで、Facebookが世界を制覇してすべてのSNSが消滅するのではないかといわれている現在でも、着実にユーザー数を増やし続けることは可能だというのは、忘れてはいけないことのように思います。
■世界のSNSの色分けマップ
まぁ、そうは言っても、それはFacebook側がどう展開していくかや、日本におけるソーシャルメディアの位置づけがどうなっていくかにも大きく影響されるので、そう簡単な話ではないと思いますが。
今後LinkedInのチームがどのように日本展開に取り組んでいくのか、楽しみにウォッチしたいと思います。
ちなみにLinkedIn日本担当のCatherine Porter氏のページは下記に公開されていますので、今のうちに提携の相談がしたい方はコンタクトしてみてはいかがでしょうか?