さて、年明けからいくつかご紹介しているCES2011のレポートですが、何度も言及しているように今回の私のCES訪問は、もともとレノボさんが私を招待してくれたので成立しています。
私もソーシャルメディアを活用したマーケティングに携わっている人間ですので、ついつい私の飛行機代とかもろもろをレノボさんが出していることを考えると、コストパフォーマンスとかいろいろ余計なことを考えてしまったりするのですが。
その辺の率直な話をレノボのソーシャルメディアチームでレノボのFacebookファンページをメインに担当しているGavin O’Haraさんにいろいろと聞いてみました。
とりあえず、数日間にわたって話を聞いた印象を一言で書くとしたら、レノボはソーシャルメディアの可能性を信じて賭けてみようとしているんだなということ。
実はレノボにおけるソーシャルメディアへの取り組みは思ったより歴史があるわけではなく、この2年ぐらいで急速に注目されてきている段階のようです。
なんでも2年前にソーシャルメディアの取り組みの担当をしていたのは、Nano Serwitzさんという女性一人だったそうなのですが、その後、彼自身もボランタリーに彼女を手伝うようになって、昨年正式にソーシャルメディアチームに移籍することになったとか。
(※一番左端がNanoさん)
もともと彼もセールストレーニングのチームにいて書くことが仕事だったそうですが、今はソーシャルメディアチームの仕事が楽しくて仕方がないようで人でごった返すパーティーの中30分以上歴史を話してくれました。
結論から言うと、レノボの中でもソーシャルメディアに対する取り組みはまだまだ議論をしながらステップを積んでいるというのが正直なところのようです。
できるだけ大きなチャレンジをいきなりするのではなく、一つずつ実績を積み上げながらメンバーや予算を増やしているんだとか。
2010年は主にアメリカにおける取り組みに注力していたのが、2011年はいよいよグローバルでの取り組みに力を入れるんだ、と楽しそうに話してくれました。
おそらく今回私や他のブラジル、メキシコ、ドイツのブロガーの方々がアメリカに招待されたのは、そのグローバルへの取組の第一歩なのでしょう。
レノボとしても彼のような人材がソーシャルメディアの可能性を信じて、一つ一つその効果を証明していっているからこそ、様々な形でソーシャルメディアに力を入れることができているんだろうなと改めて企業の内部における中心となるチームの重要性を感じます。
で、なんでそういったアプローチにチャレンジすることができるようになったのか、という点について、今回のCES2011滞在3日目に、レノボのCMOのデイヴィッド・ローマンさんとの対談の時間もいただいたので、思い切って質問してみました。
(デイヴィッド・ローマンさんについては、PC Watchに昨年の詳細なインタビュー記事がありますので、ご参考まで)
私の「なぜレノボではソーシャルメディアに力をいれるようになったのか?」という質問に対してローマンさんが強調していたのが、レノボはそもそも事業として新しいエリアに挑戦することが必要なフェーズにあり、当然新しいチャレンジをしなければ行けなくなっているという点。
レノボの主力ラインアップは何と言っても今も昔もThinkpadなわけですが、ideapadというコンシューマ製品に展開するにあたり、実はそれまでチャレンジしていなかった領域に挑戦する必要が発生したわけです。
だから、ソーシャルメディアという新しいエリアに挑戦するのもある意味当たり前なんだとか。
たしかにideapadのラインアップができたのは2008年のことですから、まだ2年半ぐらいしかたってないんですよね。
PCのラインアップということでは実は最も若いブランドと言っても良いかもしれません。
さらにレノボにおいて幸運なのは、レノボという会社がグローバルカンパニーとしての道を歩むようになってからまだ日が浅いためそういう新しいチャレンジをしやすい環境がある点なんだとか。
いわゆる歴史のある大企業にありがちな企業内の「常識」的なものや、硬直的な組織構造ができていないため、新しいチャレンジをしようとしても反対にあうことが少ないようです。
座談会の最中に、参加している海外のブロガーも、レノボの人も、結構頻繁に過去のIBM時代の官僚的な組織構造を皮肉ることが多かったのが個人的にはとても印象的でした。
要は、IBMのPCチームがレノボに買収されたことによってある意味で組織的に大きく文化や形態が変わり、今ではソーシャルメディアに最適な組織構造になっているということが言えるのかもしれません。
ちなみに、そんなレノボのアプローチの象徴の一つかな、と思ったのがレノボは実はCESのメインエリアには全く出展せず、ホテルのレストランを貸し切ってそこで毎日のようにパーティーを開催していたこと。
なんでもこの形式はソーシャルメディアチームができた2年前からやっているそうなんですが。
個人的にも感じたのが、CESのメイン展示場では、主役は当然製品自体の展示にあり、来場者が足を止めてくれるかどうかは製品や展示形式のインパクト次第ということ。
それが、レノボのようなパーティー形式だと来場者はほかの来場者との会話を目的にきているため滞在時間も長くなります。当然、レノボの人と会話する機会があると会話もはずむし、長くなりやすいわけです。
メイン展示場にがんばって中ぐらいのブースを出しても、参加者にとってはあくまで多数の企業の中の一つになってしまい、会話するにしてもそれほど長く話し込む感じではありませんが、夜のパーティーなら別にほかに行くところがあるわけでもなく、のんびり会話をすることができます。
おまけにパーティーの企画も、ある夜はマイクロソフトとタイアップで有名人の女性レーサーを呼んだり、別の夜はインテルとのタイアップでOK Goという有名なバンドを呼んだりと盛りだくさん。
初日の夜には、上記のようなレノボPCがセットされたケーキ(食べられます)に見えない戦車が登場。
なんでもアメリカのテレビ番組の企画らしいんですが、当然あまりのインパクトのあるケーキの登場に、参加者は写真を撮りまくってました。
さらには、レストラン会場に仮装をして写真を取るブースを用意して、Thinkpadのキーボードが写ったネームホルダーをプレゼントするという手の凝りよう。
もちろん、レストランの中ではレノボの製品の展示にも力を入れているのですが、それよりも参加者との会話や参加者同士の会話やネタづくりに力を入れているという意味では、全くツイッターとかFacebookを使っているわけではありませんが、これも一つの基本的なソーシャルなアプローチなんだろうな、と。
そんなことをしみじみと感じてしまいました。
正直、渡米する前はレノボさんの招待でCES2011に参加しているのに、他のライバル企業のほうがネタ満載だったらどうしようとか余計な心配をしていたのですが、そんな心配はすっかり無駄になるほど、ソーシャルメディアの価値について勉強させてもらった四日間でした。
あらためて、レノボさん、ありがとうございました。
(といいつつ、私のCES2011のんびりレポートシリーズは、もう少し続きます(笑))
なお、CES2011期間中のレノボブースの様子はレノボのFacebookファンページ(英語です)の過去ログをさかのぼるとご覧になれますので、興味のある方はどうぞ。
(ちなみに、レノボ・ジャパンの日本語版Facebookファンページもあります。)
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CES2011のマーケティング新旧混在 - Marketing 2.0 と 3.0と
最近、Kindleアプリで電子書籍、特に英語版の原著を電車の中などで読んでいる。