TEDxTokyoで学ぶ、いま日本がしなければいけないのは、足の引っ張りあいでは無いと言うこと。

 5月21日に開催されたTEDxTokyoに参加してきましたので、今更ながら感想をまとめておきたいと思います。
TEDxTokyo 2011
 TEDxTokyoについては二年前に書いたことがありますが、TED(Technology Entertainment Design)というプレゼンテーションイベントの東京支部イベントです。
 正直、今年は3月11日の大震災があった関係で、TEDxTokyo自体開催されないんじゃないかと心配していたんですが、実際には震災を様々な視点から振り返るという意味で象徴的なイベントとなりました。
 従来TEDのプレゼンテーションというのは、なにかしら世界を変えようとしている技術であったり芸術であったり教育であったりという活動が多く、TEDxTokyoもいわゆる社会貢献とか社会起業的なテーマが多くあるのが一つの特徴だったと感じています。
TEDxTokyo 2011
(個人的にも大好きな、プレゼンテーション ZENのガー・レイノルズ氏も登壇)
 それが今回は、震災後二ヶ月というタイミングもあり、プレゼンテーションの多くに日本に対してのエールや、提言といった形でのメッセージが含まれていました。


 今回の震災を通じて、日本は本当にさまざまな危機や問題に直面しています。
 津波による直接的な被害は言葉を失うほどに悲痛なものですし、いまだに余震も続いています。
TEDxTokyo 2011
(CNNのジャーナリストであり実際に大震災の現地を取材したキョン・ラー氏のプレゼン)
 特に問題なのが原発のトラブルでしょう。
 原発の停止による電力不足の影響が出てくるのは実はまだこれから。真夏の電力不足により、私たちの生活がどれぐらい影響を受けるのか見えず不安を感じている人も多いはずです。
 さらに本来であれば、日本中が団結して復興モードに入っているはずのところが、原発関連の情報開示の問題で疑心暗鬼になっている人も多く、足の引っ張りあいが一部で始まっているようにも見受けられます。
 ただ、今世界中が日本の今後に注目しているのは間違いありません。
 先進国であるはずの日本が、時代が後退しかねないほどの大きな災害によるダメージを受け、その後どのように対応するのか。 
 今回の震災を契機に、日本ならではの新しいライフスタイルを生み出せるのか。
 問われているのはそういうことだと思います。
TEDxTokyo 2011
(使用済みのプラスチックを油に戻す技術をプレゼンする株式会社ブレストの伊東氏)
 震災を通じて奪われた命はもはや取り戻すことはできませんし、街並みを震災の前と同じ状態に戻したとしても、震災をなかったことにはできません。
 
 私たちに求められるのは、復興というフレーズで震災によって壊された町を元通りにする、ということだけではなく。
 今回の震災による犠牲を通じて学んだことを元に、日本ならではの新しいライフスタイル、世界が日本を参考にしてくれるような未来のライフスタイルを生み出し、生まれ変わることができるのかどうか。
 そんなことが問われているように感じます。 
TEDxTokyo 2011
(心をうつプレゼンと派手なヨーヨーパフォーマンスで一番の拍手喝采をあつめたBLACK氏)
 ちなみに、個人的に最も印象に残ったのはMIT副所長の石井さんのプレゼンテーション。
 石井さんと言えばタンジブルビット等で有名な研究者の方ですが、今回のプレゼンでは震災においていかにインターネットやソーシャルメディアがその可能性を見せ始めているかという内容が中心になっていました。
TEDxTokyo 2011
 プレゼンの後に石井さんと、ちょっとだけお話しさせて頂くことができたのですが、ご本人が私はインターネットに詳しくないから、こんなプレゼンをして良いか自信が無かった、とおっしゃっていたのがとても印象に残っています。
 でも、だからこそ、今の日本がすべきこととして、今回のプレゼンの時間にメッセージを思いっきり詰め込まれたのではないかと思います。

 上記の石井さんのプレゼンで、皆さんに是非見て頂きたいのが最後のメッセージ。
 「私たちはどうせ2100年には全員死んでいるが、2200年は必ず来る。
 その時に2200年代の人たちに私たちはどのように記憶されていたいか?
 私たちは彼らに何を残すべきか?」
 この言葉は東日本大震災の今に生きる日本人だからこそ、何度も問い直さなければいけない問いだと思います。
 正直、ここ数週間の日本の政治側の動きは、誰がどう見ても単なる権力闘争で、大震災という国の一大事を迎えた状況では、とても褒められた動きとは言えません。
 ただ、逆に、私たちはそんな自分たちのことしか考えていない政治家に文句を言うのに無駄な時間を使うぐらいなら、彼らに期待することをすっぱり諦めた方が良いのではないかという気もしてきます。
 明治維新の立役者となった坂本竜馬は政治家ではありませんでしたし、そもそも明治維新にしても戦後の復興にしても、日本には絶対的な権力者やヒーローというのはいなかったように思います。
 一人一人が復興に対してできることをして、日本ならではのトップダウンではないボトムアップの復興や改革をなし遂げることで。
 日本には、世界に誇れる政治家はいなくとも、世界に誇れる国民がいることを証明するべきではなかろうか。
 そんなことをつい考えてしまう今日この頃です。
 TEDxTokyo当日のすべてのプレゼンはYouTubeで見ることができますので、英語と日本語両方で是非どうぞ。
TEDxTokyo
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