「PULLの哲学」は、インターネットの普及によりおこっている考え方のパラダイムシフトについて考察された書籍です。
個人的にもソーシャルメディアにおけるプルの重要性を自己流でアピールしていた人間なので、タイトルが気になって買って読んでみていたのですが、遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
この本では、インフラの変化、知識のフローの波、組織の革新という三つのパラダイムシフトにより、いろいろなものの価値観がプッシュからプルへと大きく変化していると考察されています。
実際問題、ソーシャルメディアの使い方が上手い人というのは、短期的にメッセージをプッシュすることによって短期的な利益を獲得しようとするのではなく、長い目で見て自分のところにほかの人たちを引き寄せてくる中長期的な投資と考えている人、というのが個人的なイメージだったため、この書籍で描かれているプッシュとプルの違いというのは非常に腹に落ちました。
どうしても従来の組織や仕事のやり方の価値観から、上手くソーシャルメディアを活用できないという方には、お勧めしたい一冊です。
【読書メモ】
■プルの力とは、チャンスが訪れたときや困ったときに、必要な人材やリソースを自分のところに引き寄せる能力のことを言う
■プッシュの力は、まずニーズを予測することから始まる。そして次に、予測したニーズに必要な人材とリソースが、正しいタイミングで手に入るようにに準備をする。
■弱い絆とは、相手のことをほとんど知らないような弱いつながりだ。それでも、そのつながりを介して、全く縁のなかったようないわゆる「濃い」世界に参加することができる。
■プッシュからプルへの大きなシフトの三つの波
・第一の波:インフラストラクチャーの変化
・第二の波:知識のフロー
(知識のストックよりも、新しい知識のフローの方が大切に)
・第三の波:組織の革新
■プルの段階
・アクセスする:見つける能力、学ぶ能力、つながる能力を持つこと
・引き寄せる:人やリソースを自分のもとに引き寄せるテクニック
・達成する:
■ターゲットの人たちが集まっている既存のネットワークに、まず自分から貢献すること
■あなたのところへ行くと予想外の知識も手に入るという評判ができれば、あなたに引き寄せられる人はますます増えるだろう。
このテクニックは、実はすでにブロガーの間で広く使われている。
■プルとプッシュのプログラムの違い
・プッシュのプログラムは、すべての人を消費者として扱う。
それも、大企業の予想通りに行動する消費者だ。
・プルのプラットフォームは、人はみなクリエイターだと考える。
予期しない需要に応えて何かを想像する存在だ。
■創造の空間とは、参加者同士の創造的なコラボレーションが生まれる場所だ。
そしてコラボレーションの過程で、長期にわたる信頼関係も築かれていく。
■個人はかつてないほど大きな力を手に入れた。コラボレーションによって新しい価値を創造し、大きな組織を変え、ひいては社会全体を変えることができる立場にある
■大切なのは、情報の洪水の中から、価値のある情報を選び出す方法ではない。
情報ではなく「知識」を持っている人、特にまだもやもやとした新しい知識を持っている人とつながることが、これからの時代で本当に大切になってくる。
■変化の軌道を決める
新しい組織が目指している目標を世間に向かって宣伝し、納得してもらう必要がある。魅力的な方向性を提示できれば、情熱があって、才能豊かな個人を惹きつけることができるだろう。
■企業のトップがすべきなのは、組織のすべての側面を「才能開発」という観点から見直すことだろう。才能開発を最優先課題にしたら、戦略、業務、組織構造は、いったいどのように変わるだろうか?
■「自分の使命を見つけた人は、もうただの仕事には戻れない」(ベター・プレイス シャイ氏)
■世界を変える戦略が成功するための三つの要素
・世界を変えるビジョン
・世界を変えるプラットフォーム
・世界を変える行動と資産
■世界を変える人の三つの資質
・リーダーの能力を正確に知る能力
・自分独自のニッチをつくる能力
・学習者の気持ちを忘れない
「PULL」の哲学 時代はプッシュからプルへ―成功のカギは「引く力」にある ジョン・ヘーゲル3世 ジョン・シーリー・ブラウン ラング・デイヴソン 桜田 直美 主婦の友社 2011-05-18 by G-Tools |