政治家のソーシャルメディア活用度ランキングにみる、日本は政権の中枢にいる人ほどソーシャルメディアを使ってないという現実。

 野田総理が唐突に解散を宣言しましたね。

野田佳彦首相は善良すぎる: やまもといちろうBLOG(ブログ)
 上記のブログでも、やまもとさんが言及してましたが、まさに「解散権を持ち、覚悟を決めたトップは強い」ということを改めて感じた出来事でした。
 野田総理の決意の表情に対し、安倍さんのしどろもどろっぷりが、動画で見ると実に際立ちます。
 とはいえ、民主党の混乱ぶりを見る限り、覚悟を決めるのが遅すぎたという印象はぬぐえませんが。
 と言う政治側の話は置いといて。
 今回の解散で個人的にやはり残念なのが、結局今回の選挙も、選挙期間中のネット利用が禁止のまま、選挙に突入してしまったという現実。
 ネット選挙については、私自身はもはや10年近くウォッチし続けているのですが、この5年ぐらいは全く進展しないどころか、逆に後退している印象すら受けます。
 つい先日実施された米国の大統領選挙では、4年前の選挙に輪をかけて、完全にソーシャルメディアの活用が当然の大統領選挙となっていましたし、オバマ大統領の勝利ツイートが、ツイッターのリツイート記録を更新するというオマケ付き。このツイートは現時点で80万回以上もリツイートされています。
オバマ米大統領の勝利宣言ツイート、リツイート回数で過去最高に


 ただ、日本では上記の開票後のツイートはOKですが、候補者による選挙期間中のツイッターの利用は公職選挙法違反です。
日本の公職選挙法は、やっぱりTwitterのつぶやきも禁止だった。
 下記のように、投票締め切り直前にネットで投票呼びかけの行為を公開しようものなら公職選挙法違反の現行犯です。
オバマ米大統領、投票締め切り直前に「Reddit」で投票を呼びかけ
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 当然、今回の選挙期間中も、日本の政治家の皆さんは綺麗にソーシャルメディアやネットの活用を停止されることでしょう。
 
 さらに個人的に問題だと思うのは、この法律があるために、政治家の支援者がソーシャルメディア上で候補者を応援する発言をできなくなることです。
 もちろん、実際には発言は自由のはずなんですが、もしある候補者の支援者がソーシャルメディア上で候補者を応援した場合、候補者によるソーシャルメディア活用とみなされて候補者の当選が取り下げられるリスクがあるわけで。
 日本の政治について真剣な人なら真剣な人ほど、選挙の仕組みについて詳しい人なら詳しい人ほど、選挙期間中にはネット上での発言を自ら制止せざるを得なくなるんですよね。
 これを箝口令といわずに何と呼ぶんでしょうか。
 正直、一票の格差と同様、これも言論の自由をうたっている憲法の原則に違反してるんじゃないかと思えちゃったりするわけです。


 ただ、先日AMNでユーザーチャートを活用した政治家のソーシャルメディア活用ランキングを作ってみて、この10年日本のネット選挙に関する議論が全く進まない理由が何となく分かってしまいました。
 現時点でユーザーチャートで集計している政治家のソーシャルメディア活用ランキングはこちら。
政治家インパクトランキング
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 まぁ、パッと見、著名人が並んでいて、納得感はあるランキングに見えるかもしれませんが。
 既存の政権における権力者という視点で見ると、見え方が全く変わってきます。
 
 米国のオバマ大統領と比較されるべき、時の総理であるはずの野田総理はブログ以外のソーシャルメディア活用が見当たらず120位。
 細かく見ていませんが、現大臣のほとんどは上位に全く顔を見せていませんし、前総理の菅直人氏も140位。
 民主党の総裁選に出ていた原口氏が唯一トップ5に顔を並べているぐらいの印象です。
 逆に、自民党は、安倍総裁がFacebook活用などが効いて13位にランクインしている他、総裁選に出ていた河野氏が2位、石破氏が17位と、5名中3名が上位にランクイン。
 前自民党総裁の谷垣氏も20位にいます。
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 要は現時点では政権の中枢にいる人ならいる人ほど、テレビや新聞などの既存メディアを通じた情報発信が可能なわけで、ソーシャルメディアの活用の必要性すら感じていない姿が透けて見えてくるわけです。
 もちろん、これは弊社のユーザーチャートの指標で計算したランキングなので、計算の仕方によって順位は大きく変わりますがし、政党の方針もあるのかもしれませんが。
 いずれにしても、政権の中枢にいる政治家がネットをたいして使っていないという事実事態は変わりません。
 オバマ大統領が一番積極的にソーシャルメディアを活用しているアメリカとは真逆です。
オバマ大統領の再選を勝ち取ったITチームは、どんなメンバーで構成されていたのか? - Publickey
 まぁ、オバマ大統領はソーシャルメディアで大統領になったので、積極的なのは当たり前。
 まだ、日本はそういう革命はおきてないんですよね。
 以前ブログで、2005年のネット選挙解禁イベントでは民主党が自民党を何でネット選挙解禁しないんだと攻めていたのに、5年後の2010年のイベントでは逆に自民党が民主党を攻めていて理解不能だったという話を書きましたが。
ネット選挙解禁のためには、ネットで声をあげて政治家の自発的な行動に期待するだけではダメではないか、という話。
 結局、現在の権力の座にいる人は、既存の選挙の仕組みで今の権力をつかんでいるわけで、選挙期間中のネット利用を解禁して、自分が落ちるリスクを増やすなんてとんでもない。という議論になっているのが目に見えます。
 実際、先日One Voice Campaignのメンバーで700人以上の国会議員に、ネット活用についてのアンケートを取ったそうですが、回答率が10%以下だったといいますし。
 ネット選挙解禁の議論が盛り上がって、自分が当選しにくくなる仕組みになっちゃかなわんという、風に受け取れてしまいます。
東京新聞:変えたい 選挙制度(中):選挙運動 80年変わらぬ規制
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 まぁ、正直、ここまで既存権力者がネットやソーシャルメディアを無視しているのを見ると、ソーシャルメディア側の人間としては怒りとかを通り越して絶望すら感じてしまうわけですが。
 結局、僕らにできることは、権力を持っている側に、こういう問題意識を感じている人を一人ずつ地道に増やしていくしかないのかな、と思います。
 師走の忙しい時期ですが。
 あまりの政治家の政争重視の姿勢が見えてしまい投票すべき政党や候補者を決めづらい今回の選挙ですが。
 投票に行かなければ、さらに私たちの世代は無視されるだけです。(と言っても私も今日で40代になってしまったわけですが)
 白票でも良いので、是非皆で投票に行って、投票に行った事実をソーシャルメディアでも共有し、私たちがここにいること、私たちはちゃんと投票を行使する意思があること、をアピールしなければいけないんじゃないかなと思います。
参考:それでも、私たちは選挙に行くべきだと思う理由
※記事中でご紹介した政治家のソーシャルメディア活用度調査の詳細は下記のプレスリリースをご覧下さい。
AMNが政治家のソーシャルメディアでのインパクトランキングを発表