ネット選挙解禁のためには、ネットで声をあげて政治家の自発的な行動に期待するだけではダメではないか、という話。

 先日、One Voice Campaignというネット選挙運動解禁のためのキャンペーンが始まりました。
120517onevoicetop.png
 私自身、正直政治自体には興味も期待も薄れてしまっている典型的な日本人ですが。
 ネット選挙解禁についてはこの10年間ウォッチし続けてきましたし、今回のキャンペーンに期待するところは大きい人間なので、キャンペーンの趣旨に合わせて声を上げておきたいと思います。
 ちなみに、過去に私がネット選挙について最初に書いた記事はこちら。
選挙中に選挙について書いて何が悪い?
 時は2005年。
 選挙期間中に候補者がブログを活用することが違法だというのを初めて知って驚き、ネット選挙を巡る話に興味を持つことになります。
 もう今から7年も前なんですよね。
 ソーシャルメディアなんて言葉はみんなが知らなかった頃です。
 その後、グロービスの堀さんが始めたYESプロジェクトというイベントに参加してみたり自民党や民主党のブロガー懇談会に参加してみたり自分自身もネット選挙関連のイベントにパネリストで登壇したりAMNでネット選挙のイベントを開催してみたりして、今日に至るわけです。
 
 で、この7年間、ネット選挙を巡る議論を聞いてきて、自分なりに出た確信が一つだけあります。
 それは「ネット選挙解禁を今の政治家に任せていては進まない」ということ。
 倫理論とかどうとかいう話では無く、公職選挙法を変更しようとするという行為は、受験勉強中の学生に明日から受験制度変えるから、というようなもの。
 しかも、今の「既存の政治家」というのは、戦後から全く変わっていない「既存の選挙システム」によって選ばれているわけで、そのシステムを変更するというのは自分たちが次に選ばれないリスクを増やす選択肢にしか見えないわけです。
 それを象徴するがっかりした出来事が、二つのYesプロジェクトのイベントにおける二人の政治家の五年越しの議論です。


120517yesproject.png
 最初の2005年に開催されたYESプロジェクトのイベントにおいては、自民党が与党で、民主党が野党。
 当時は民主党の鈴木寛さんが自民党側の世耕さんをネット選挙解禁問題で責め立てるという構図でした。
YES!ナイト/YES! PROJECT
 それが5年後に開催された2010年のYESプロジェクトのイベントでは攻守逆転。民主党が与党で、自民党が野党になったわけですが。
 今度は自民党側の世耕さんが民主党側の鈴木寛さんをネット選挙解禁問題で責め立てるという構図でした。
第8回一夜限りの YES! ナイト 『ネット選挙解禁を受け、議員、政治、選挙はどう変えられるのか』 YES! PROJECT
 文字で書くと信じられないですよね。
 同じ人が逆の立場になったのに、発言内容がすり替わって同じ議論になってたわけです。
 もちろん、お二人は良識的な政治家で、ネット選挙解禁推進者側なわけですが、結局それ以外の政治家は自分の不利になるリスクのあるネット選挙解禁を行うメリットなんて一切無いというのが透けて見えてしまったわけです。
 正直、自分自身は、2005年の時から選挙期間中にネット上での言論規制がされるなんてナンセンスの一言なので、これは少なからず数年で改正されるだろうと信じ込んでいたのですが。
 驚くことにこの7年間まったく事態は変わっていません。
 もともとの公職選挙法は、お金を持っている候補者ばかりが選ばれないように公平を期して設立された法律のはずですが、現在にいたっても無料のメールで投票依頼をすると罰せられ、有料の選挙カーで社会の平穏を乱す行為は合法という完全に本末転倒の体たらく。
 年配の政治家の方々にそういう話をすると、ネットを使えない人に不公平じゃ無いか、という話になるそうですが。じゃあ地盤をひきつげない政治家や、コネがない政治家は不公平じゃ無いのか、と言いたくなりますよね。平日の政治家との討論会に参加できる地方の老人層に対して、ネット上で同様の議論をできない私たちは不公平じゃ無いんですか?という話ですよね。
 まぁ、要は何を言いたいかというと、One Voice Projectには是非Yesプロジェクトの二の舞にならないように、本当にネット選挙解禁を盛り上げて、ネット選挙解禁を達成して欲しいわけです。
 残念ながら私は来週出張中のため、5月23日のイベントに参加できないので、今回の政治家の方々の議論も聞くことができないわけですが。
 是非、主催者の方々に期待したいのは、この機運を単なるイベントやネット上だけの盛り上がりだけで終わらせないこと。
 私自身、AMNでネット選挙に関するイベントをやってみて、複数のメディアに取り上げてもらえたので、それなりに何かきっかけを作れたかな、と満足していたのですが、実際には表面をちょろっとなでた程度で、その後何も変わりませんでした。
 ネット選挙解禁自体は、実は2010年に成立ぎりぎりまで行ったのに、政局のごたごたに巻き込まれて、振り出しに戻ってしまった経緯があります。
[N] ネット選挙が解禁へ、ただしツイッターはダメ
 当時、ツイッターはダメというのも意味不明だけど、とりあえず解禁されれば良いか、とか思ってたんですが、結局これは実現せず振り出しに戻ります。
 成立ぎりぎりまで行ったから、てっきりすぐまた議論をやってくれるもんだと思っていたら、既にあれから何にも無しにあっさり二年経ってしまっているわけですから、既存の政治家の人達がいかにこの議論を後回しにしたいと思っているかが伝わってくると言うものです。
 ここ数年の政権自体も、一年ごとに首相が替わるような学級委員状態ですから、こんな状態で、自分たちの受験制度である選挙制度を積極的に変えようなんていう建設的な議論ができるわけない、と正直思っていたりする自分がいます。
 
 でも、今回のOne Voice Projectは、関わっているメンバーといい、議論の去れつくした感といい、ソーシャルメディアの普及度や活用率の変化といい、間違いなく機は熟し切っているタイミングです。
 23日のイベントには、結構なメンバーが参加されるようですし、なぜネット選挙解禁が成立しそうになってから2年も放置されているのか、各党に次の選挙のマニフェストにはネット選挙解禁は入れるのか入れないのか、そして私たちはどうすれば政治家の人達を前に進めさせることができるのか、という「具体的な行動」につながるヒントを導き出して欲しいですし。
 せっかくソーシャルメディアを全部足せば、ネット人口の半数が使っているほど日本でも普及し始めているのに、このまま選挙に突入すると候補者をネットで応援すると、その候補者が当選した時に公職選挙法違反で落選する羽目になるからネットで応援できないという、実質的に言論統制と言っても良い状態を、なぜに政治家は放置できるのか、問いただして欲しいですし。
 
 One Voice Campaign賛同者に対しても、ネット選挙解禁をマニフェストにいれない党には投票をしない宣言をして政党に圧力をかけようと呼びかけるとか、ケンコーコムさんがネット薬販売規制でやったように、立法や行政との議論は素直にあきらめて司法に訴えるから、みんなでCampfireで訴訟の資金募集しよう、とか我々一人一人の力でも協力できそうな「具体的な行動」への道筋を示して欲しいなぁ、と思ったりします。
 いまどき、普段ネット上で会話をしている人達に、選挙期間中だからネット上で会話するのやめろ、なんて箝口令。どこの独裁国家ですか?という話ですよね。
 アラブの春で、ソーシャルメディアを駆使してつながったアラブの人々が独裁者を倒すことができたように。
 日本においても、ソーシャルメディアでつながった私たちが、変化への抵抗という目に見えない独裁者を倒すことができると、今度こそ信じたいと思っています。
120517onevoice.png
【関連記事】
公職選挙法は、Twitterのつぶやきすら違法認定するかもしれない、という日本の現実
日本の公職選挙法は、やっぱりTwitterのつぶやきも禁止だった。
それでも、私たちは選挙に行くべきだと思う理由