公職選挙法は、Twitterのつぶやきすら違法認定するかもしれない、という日本の現実

 昨日は、Twitterと政治のイベントが開催され、今日は先日ご紹介した大柴さんの「YouTube時代の大統領選挙」の出版記念イベントが東急エージェンシーさんで開催され、と、ここ数日は、日本の選挙について考えることが多い一日となりました。
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 考えてみたら、4月にAMNで開催したネットと選挙をテーマにしたイベントの感想も書いてなかったので、まとめてここにメモしておきたいと思います。
 関連記事は、それぞれ下記にまとまっていますので、そちらをご覧いただければと思いますが。
Twitterは政治や報道を変えるのか (1/2) – ITmedia News
市民を行動者に変えた、オバマ大統領のソーシャルメディア活用
AMNブログイベントvol.8「インターネットが選挙を変える? 」
 個人的にも、今回のオバマ選挙に影響されて、ネットと選挙のつながりの可能性についていろいろリサーチするようになり、大柴さんのセミナーや、フライシュマンの田中さんの「オバマ現象のカラクリ」やセミナーに影響されて、4月のネット選挙イベント開催にチャレンジしたりしたのですが。
 特に4月のイベントで痛感させられたのが、現在の公職選挙法がネットにあたえている影響の大きさ。
 公職選挙法は、もともと1950年に制定された法律なのですが、まぁとにかくこのルールがネットの実体にはあっていない模様。
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 ネットでの書き込み=文書図画の頒布と定義されたことが、とにかくボタンの掛け違いの始まりのようなのですが。
 公職選挙法に照らし合わせると選挙期間中は図画の頒布はNGなので、基本的にネットへの書き込みは原則禁止ということになります。
 まぁ、4月のイベントで河野太郎さんが言っていたように、仮に候補者自身は忙しくてネットの更新なんかしている暇がないとしても。
 個人的に非常に問題と感じているのは、選挙期間中に私たち個人もネットへの書き込みを原則禁じられているに等しいということ。
 私のようにブログをコミュニケーションツールとして使っている人間からすると、ブログで選挙について書くことと、居酒屋で選挙について友達と語ることの違いはそれほど大きくないと思うのですが。
 法律上は、ブログに書く=文書図画の頒布になるので、私が選挙期間中にブログで候補者や特定の党を褒めたりすることは違法認定される可能性が高いんだそうです。
 で、4月のイベントの時には、そうは言っても、きっと何か選挙期間中にもネット上でやれることがあるはずだと思って、いろいろクドイほどパネリストの方々に聞いてみたのですが
 驚いたことに、とにかくネット活用は全部ダメなんですよね。


 ブログなどの文章で候補者を応援したり、特定の党を応援したりするのもNGなら、YouTubeに候補者の動画をアップすることもNGだし、オバマの応援歌のような候補者が出ていない動画をアップすることもNG。
 オバマのように不特定多数の支援者に対してメールを配信して、投票依頼を促すことすらNGだそうで。
 

(この有名なオバマの応援ソングの動画も日本の公職選挙法だったらNGの可能性大だとか)
 要は「特定の選挙名」「特定の候補者名」「投票依頼」の3つ。
 つまり、候補者や、候補者を想起させるモノに言及すると違法の可能性があるというわけです。
 
 で、この論理からすると、Twitterで選挙期間中に候補者を応援したコメントを書くと「違法」という話になってしまうわけです。
 まぁ、現状は正確には「グレー」という話らしいですが、もしグレーな行為をしたことによって、当選後にケチを付けられて引きづりおろされるリスクがあるとしたら、まぁ誰もそんな行為に手は出さないですよね。
 こうやってみていくと、要するに公職選挙法というのは、選挙期間中は国民は選挙の議論とか支援活動には参加せずにとにかく黙って見てろ、という法律なんだな、と思えてしまいますよね。
 なにしろ限られたチラシと、ビラと、たすきと街宣車と、決められた放送時間しか使っちゃダメという法律な訳ですから。
 そもそもの公職選挙法の理念というのは、お金が無い候補者も公平に選挙で戦えるように、お金がある候補者が何でもかんでも金で解決しないで済むように、という理念で作られたモノのはずなのですが。
 せっかく技術の進歩で利用可能になった無料で使えるブログやTwitterのようなツールまでも、杓子定規にまとめて規制することで、結局、選挙の主役であるはずの国民に選挙期間中に箝口令を引くような結果になっているというのは、なんとも笑うに笑えない話です。
 なんで、こんな法律が放置されてきたかというと、結局現在の政治家の方々(特にネットを使わない年配の議員の人たち)が、ネットを解放したことにより自分たちが落ちることになるのを恐れている、という単純な話のようですが。
 国民が最も選挙について考え、議論するべき期間であるはずの選挙期間中に、一切の候補者や党に関する発言を禁じられるなんて、正直今盛り上がっているイランよりも、ある意味不幸な状況にあるのではないかと思ってしまいます。
 で、さらに残念なのは、この状況が変わりそうな気配が未だになかなか見えてこないという現実。
 確かに、YouTubeに政党チャンネルも開設されるようになっていますし、この数日間はTwitterを中心に選挙の話題が盛り上がってはいます。

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 でも、実は似たような盛り上がりは、過去に何度か起こっているんですよね。
 特に、個人的に印象に残っているのは、2005年のブログブームの頃の政治のブログ活用の盛り上がり。
 私自身、Yes Projectのイベントに参加してみたり今となっては伝説になった民主党や自民党のブロガー懇談会に参加してみたり、なんて慣れない政治関係の話題に首をつっこんでいましたが。
 あの頃のイベントでも、公職選挙法は改正してネットは利用できるようになりますよ、と多くの方々が口にしていたのを記憶しています。
 悲しいことにあれからもう4年経ってしまってるんですよね。
 
 結局の所、多数の政治家の方々にとってネットの活用がメリットがある、という話にならない限り、公職選挙法はこのままずるずる行ってしまうんではなかろうかと、つい悲観的になってしまったりします。
 
 そういう意味では、個人的に次回の選挙でちょっと期待しているのは、政党のニコニコ動画の活用。
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 政党側からの一方通行の情報配信チャネルがネットになっただけのYouTubeと異なり、ニコニコ動画は必然的に動画に対する利用者のリアクションというのがセット。
 もし、次の選挙でニコニコ動画の活用が現在の勢いのまま容認されたら、利用者のリアクションの発言は公職選挙法上も容認された、という解釈になりえますから、Twitterとか掲示板のようなリアクション的な発言は公職選挙法の対象外と認定されたり・・・しないかな・・・
 まぁ、そもそもの公職選挙法の改正こそが根本的な問題解決だと思うので、次の選挙でどちらの党が勝つにしても、いくらなんでもその次の選挙の前に公職選挙法を書き換えて頂くことを強く期待します。

“公職選挙法は、Twitterのつぶやきすら違法認定するかもしれない、という日本の現実” への1件のフィードバック

  1. [today]Jul. 4, Sat. ←米国の建国記念日ですね。

    WhoKilledTheElectricCar?という映画を観ました。GMがリースとはいえ、実用に耐える電気自動車を開発していたことは知りませんでした。…

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