小さく賭けろ (ピーター・シムズ) を読むと、大企業の肝いりの新規事業が、なぜ意外に上手くいかないのか理解できると思います。

4822248968 「小さく賭けろ」はイノベーションの起こし方について考察されている書籍です。
 献本を頂いたので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 この本では、多くのイノベーションが実は小さい成功から始まっている点について、深掘りをしている書籍です。
 特に新規事業の世界において、大企業が巨大な構想をし、巨大な投資を行い、巨大な失敗になる、というケースは枚挙に暇がありませんが、実は小さく実験していくことこそが大きな成功につながるという基本的な視点に気づくといろんなことが楽になるのではないかと改めて考えさせられる本です。
 スタートアップに取り組んでいる人はもちろん、大企業の中で新事業を考えている方にも参考になる点が多い本だと思います。
 
【読書メモ】
■「ほとんどの成功した起業家はすばらしいアイデアを発見してから起業したわけではない」
■「表計算ソフトにいくら数字を入れてみたところで、現実の人間が新製品に対してどういう反応を示すか予想できっこない」(ジェフ・ベゾス)
■概念的イノベーターと実験的イノベーター(デビッド・ガレンソン)
・概念的イノベーター:非常に大胆に新しいアイデアを追求し、多くは若くして業績を上げる。しかし誰でも知っているとおり、天才というのはごくごく稀にしか現れない。
・実験的イノベーター:試行錯誤を繰り返す中で徐々にブレークスルーを発見していく。ゴールに向かって進む際に、失敗や挫折を恐れず執拗に努力する。


■小さな賭けの原則
・実験する:試行によって学ぶ
・遊ぶ:創造的なアイデアを窒息させる焦りによる速すぎる判断を防止する
・没頭する:全身で環境に浸る
・明確化する:問題を再定義する
・出直す:思いがけない解決に導くような問題の見なおしのチャンスが訪れる
・繰り返す:テストを積み重ねる内に優れた知識、経験、洞察が蓄積されている
■巨大数字の専制(バーンホルト)
 企業が巨大になると、経営者はますます巨額の賭けをしなければならないと、自然に思い込むようになる
■許容できる失敗の原理(サラスバティー教授)
 経験を積んだ起業家は、捕らぬ狸の成功を夢想するのではなく、失敗する可能性を十分に予期している。
■固定的マインドセット対成長志向のマインドセット
・固定的マインドセットの持ち主は、自分の能力が確認できるような活動に志向
・成長志向のマインドセットの持ち主は、自分の能力を拡張できるような活動に志向
■「努力を称賛された子供たちは挫折に直面しても、知的な自信を失うことがなかった」(ドゥエック)
■能力だけを称賛すると粘り強さに悪影響があるのに対して、問題解決のための努力やその過程でいかに学んだかを称賛した場合は、成長志向のマインドセットの発達をうながすことが確認された
■「ともかく何でもいいから紙に書いてごらん。子供が書くように、頭に浮かんだことをそのまま書き留めてみる。優れた作家は皆そうしている。そうして二稿は少し良くなり、三稿はもっとずっと良くなる」(アン・ラモット)
■プロトタイプを利用してテストした場合、フィードバックの質が遙かに高くなる
 ほとんど完成段階に来ている製品を見せられた場合、テストに参加した消費者は欠点や不満など否定的な意見を言いにくくなる。
■プラシング(プラス+ing)(ピクサー)
 アイデアを改善する際に、批判的な言葉を使わない。
 常にアイデアがプラスされていく雰囲気を作りつつ、ユーモアと遊び心のセンスを維持することが、ピクサーの魔法の中心的要素だ。
■HiPPO現象(Highest Paid Person’s Opinion)
 ほとんどの会社内で下される決断は給料の一番高い人の意見によって支配される
■アジャイル開発には、たとえば大きなチームが一体となって動く必要がある場合など、制約がないわけではない。しかし、うまく運営されたアジャイルチームの方が、通常のウォーターフォール方式より生産性も質も高い。
■「世界を手のひらに乗せ、ものごとを鳥の視点だけから見ていると、人は傲慢になり、はるか遠くから見たものがぼやけて見えることを忘れてしまう。」(ムハンマド・ユヌス)

4822248968 小さく賭けろ!―世界を変えた人と組織の成功の秘密
ピーター・シムズ 滑川 海彦
日経BP社 2012-04-05

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