半日の間に3件もパネルディスカッションのモデレーターをどうやって一人で回しているんですか?という質問に対する5つの答え

 実はブロガーサミットの懇親会の時に、一番良く聞かれた質問がこれでしたので、この機会に私のパネルディスカッションへの姿勢を開示しておきたいと思います。
 ブロガーサミット自体の13時~19時の6時間の間に6つのパネルディスカッションという詰め込みすぎなスケジュールを見て頂ければバレバレだと思いますが、私はパネルディスカッションが大好きです。
 まぁ、要は大の議論好きなんですよね。
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 1月のアンバサダーサミットでも、ブロガーサミット同様モデレーターを半日3回させてもらいましたし、2011年のソーシャルメディアサミットでは4件連続でモデレーターをさせて頂いたこともあります。(さすがに4件連続は休憩無しできつかったので、もう一度やりたいとは思いませんが)
 ブロガーサミットが終わった直後に、ついツイッターに、もう一つセッションやりたかったと本音を書いてしまいましたが。


 あの規模でのイベントがもう一度やりたいかどうかは別として、自分が好きなトピックを議論するディスカッションであれば、個人的には一日中議論をし続けていても大丈夫なタイプです。
 
 ただ、もちろん、一日中やっていても大丈夫なのは自分がパネリストの場合であって、自分がモデレーターをやるときは事情が結構変わってきます。
 何しろパネリストであれば、聞かれた質問にアドリブで答えていれば良いので、基本的に全く準備無し、精神的負担無しで続けることができるんですが。
 「モデレーター」をやる場合には、そのセッション自体の進行概要や時間管理に責任を負うわけで、完全にフリーダムというわけにはいきません。
 そこで、今回のような一日に連続でパネルディスカッションをやるときに心がけていることが5つあります。
 せっかくブロガーサミットが終わってすっきりしているので、今日はこっそり公開してしまいましょう。


■1.あまり細かいシナリオを決めない
 一日に複数のセッションを行う場合、意外に重要だと思っているのがこれです。
 もちろん、モデレーターをされる方も様々なタイプがいると思いますが、私自身はそもそもパネルディスカッションであまり細かいシナリオを決めません。
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 特に自己紹介的なプレゼンテーションはできるだけ無しにするようにしています。
 シナリオを決めてしまうと、途中であらぬ方向に行ったときの修正とか凄い大変になるんですよね。
 一日に一つのパネルディスカッションなら、まだ事前に打合せを完璧にして、意識あわせをするという手もあると思うんですが、複数のセッションだと掛け算で準備が必要になるため、あまり現実的ではありません。
 当日のアドリブを楽しむことにして、思い通りにコントロールするのをまず諦めてしまうわけです。
 今回のブロガーサミットでもスライドに表示した大きい質問を3つぐらい決めて、あとは当日のアドリブに託しています。
■2.打合せをしない
 これを開示するのは、ある意味参加されている方からすると失礼な行為と取られるかもしれないので、今まであまり積極的には開示してこなかったんですが、実はブロガーサミットにしてもアンバサダーサミットにしても、私のセッションは顔を合わせての事前の打合せをしていません。
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 登壇者の方々が忙しい方な上に、謝礼もお車代程度しかお支払いしていないので、わざわざ打合せでお呼びするのが申し訳ないというのもありますし、日程調整が不可能に近いときも多いのもあります。かといって当日打合せをしようにも、私はずっと壇上にいるので打ち合わせする時間が無いんですよね。
 その分、パネリストの方々には相当不安な思いをさせてしまっていて申し訳ないと思っているのですが、1でシナリオを決めない、と決めているわけなので実は打合せは論理的に不要なんです。
 また、個人的には打合せをしすぎて、壇上で打合せで話した話と混乱する現象がおこったり、登壇者だけで内輪ネタになってしまうというデメリットがあまり好きでないため、実は打合せなしのガチのアドリブディスカッションの方がそもそも好きだったりします。
 今回のブロガーサミットでも、パネリストの方々には事前にメールで上で決めた大きい質問を投げかけ、心の準備をしてもらい、当日いきなり登壇して頂くという形でお願いしています。
■3.何を話すか想像できる人にパネリストをお願いする
 で、ちょっとズルいですが、一日に複数のモデレーターをするのであれば一番大事なのはここです。
 何しろ複数のセッションをシナリオを決めずに、打合せもなしでやるわけですから、全てはパネリストのトークにかかってきます。
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 当然重要なのは、パネリストが何を話しそうか、予想ができることです。
 もちろん、とはいえ仲が良い人ばかりにパネリストをお願いできるわけではありませんので、その場合はできるだけ相手のことを事前に知るように努力しています。
 インタビューを読んだり、その人の本を読んだり。
 そういう意味では、今回のブロガーサミットみたいに、相手がブログ書いてたりYouTubeで情報発信してると楽なんですよね。
 あまり面識が無くても、こっちは勝手に相手のことをある程度知ることができるわけで、それにより当日の発言をある程度想像できるようになり、大体の流れをぼんやりとイメージできるわけです。
 事前準備で一番時間をかけるのはこの部分です。
■4.多様なパネリストに登壇してもらう
 で、上の話と逆の要素を含むのですが、面識がある人の方が何を話すか想像できて良いのですが、面識のある人ばかりに頼ると、似たような人ばかりがパネリストに並んでしまうことになります。
 一人が何か話して、残りの人が全員「右に同じ」的な発言をしてしまうと、パネルディスカッションの意味がありません。
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 事前の打合せが無い以上、参加者の方々が聞いていて面白い話が出てくるかどうかは、全てパネリストの方々のアドリブトークから多様な話が出てくるかにかかっています。
 いかに、パネリストに違う特徴のある方々をバランス良く登壇してもらえるかが非常に重要です。
 例えば、今回のブロガーサミットで最後まで悩んだのは、登壇者の中で数少ないブログを書いていないパネリストである粟飯原さんに、最後の締めのセッションに出て頂くかどうかということでした。最終的に、やはりブロガーサミットが幅広い人を対象にするのであれば、このイベントの他の議論自体には興味をもってくれないであろう主婦レシピブロガーのような人たちを代表した逸話を話してくれるだろう粟飯原さんが必須だと思って、無理矢理お願いした次第ですが、参加された皆さんの反応を見る限りかなり粟飯原さんの話に刺激を受けた方が多かったようなので、個人的には悩んだ甲斐があったと思っています。
 逆に言うと、多様なパネリストの方々に登壇頂くことができれば、モデレーターの仕事は半分以上終わっていて、あとはその方々の多様さをいかに短い時間の間で引き出せるかに集中すれば良いと思っています。
■5.ハプニングを楽しむ
 で、意外に重要なのがこのハプニングを楽しむ、という要素です。
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 事前に決めたシナリオから外れてしまったり、想像していた発言と違う発言をパネリストが返してきたりすると、モデレーターとしては正直焦ることは多いわけですが。
 何十回もモデレーター的なセッションを経験してきた感覚から言うと、実はそういう瞬間が多いセッションの方が、聞いている人に刺激になる発言だったり、驚きが多かったりするセッションになっていると感じています。
 冷静に考えたら当たり前ですよね。
 モデレーターが事前に考えたシナリオ通りに議論が展開するというのは、実は一人の人が書いた話を全員でなぞっているのと同じ状態。
 実は一人の人がプレゼンテーションしているのとあまり違いが無いわけです。
 もちろん、それはそれで、そのシナリオライターの人が非常に優秀であれば、勉強になるセッションになるわけですが。
 パネルディスカッションの価値は複数の人が同時に議論することによって発生するカオスであり、価値観の違う人が議論をぶつけることによってそこの交差点で生まれる驚きだったり、ショックだったりするんだろうと思うんですよね。
 
 ということで、冷静に書き出してみると、単に準備を全くせずに当日ぶっつけ本番のでたとこ勝負でセッションをやっているだけの、ただのぐうらたモデレーターであることが明らかになってしまっているだけの気がしますが。
 どうもモデレーターという役割をハードル高く考えすぎてる方が多いような気がするので、思い切って開示してしまうことにしました。
 この程度のことしか考えてない人間でも大規模イベントのパネルディスカッションのモデレーターやらしてもらえたりするんだ、と思って頂いて、皆さんも気軽にモデレーターにチャレンジしてみて頂ければ幸いです。
 
 ちなみに、ブロガーサミット当日のセッションは、随時ブロガーサミットのサイトに公開させて頂いていますので、よろしければそちらもご覧下さい