韓国Cyworldに学ぶSNSの未来

 先日、無敵会議番外編であるSNS会議に参加してきました。

 今年、一番の人気イベントであった無敵会議が、急遽番外編としてSNSを取り上げるので非常に楽しみにしていたのですが、期待以上のヒントを得ることができました。


 当日の議事録は、TocotonistLacrimenarajun’s note等で丁寧に取られていますので、そちらを参考にしていただくとして。

 私がおおいにインパクトを受けたのはやはり韓国Cyworldのモデルでした。
 その凄さは、田口さんに事前に聞いていたのですが、想像以上。

 とにかくCyworldが韓国に与えているインパクトは、現在の日本におけるGREE、mixiのそれと比較しても圧倒的です。
 会員数1000万人(韓国の人口の**%)、月商80~100億円(マジで?)、グループでのアクセスランキング国内1位(日本でいえばYahoo!でしょうか)、トップページで写真が紹介されると1日20万アクセス(写真の内容による)。
 プレゼンされたカン・ジェフホさんのSNSに関しては「韓国の方が早い」というコメントが、ちょっぴり悔しくも、つくづく納得できました。

 どんなサービスかと簡単に言うと、日本のブログとアバターとSNSが一緒になったようなコンシューマ向けコミュニティサービスという感じでしょうか。

 画面はポップなイメージで、「可愛らしい」感じ。
 韓国では1日18時間CyworldにログインするCyhoric(Cyworld中毒)なる人たちも存在するそうで、平均利用時間はなんと2時間/日だそうです。
 自分のもう一つの人生を楽しむバーチャルワールドというところでしょうか。

 特に凄いのは、収入を「どんぐり」という仮想通貨の売上で得ているところ、しかもその「どんぐり」は画面のスキンやアイテムなどを「他の人にプレゼントするため」に購入するそうです。
 どれだけ人にどんぐりがプレゼントできるかが、その人の価値を表すほどになっているそうで、人間の心理をついた素晴らしいモデルだと思いました。

 最大の強みはやはり、全てのサービスをCyworld内に完結した状態で、ここまで来れたことでしょうか。
 そのためCyworldではSNS的な「つなぐ」要素よりも、「自分を見せる」ための要素に注力できている感じがします。

 日本で同じ事が「今から」やれるかというと、すでにブログとSNSとMSNメッセンジャーなど、多様な事業者の無料サービスで実現できる部分が多いですから、ここまでの規模の有料サービスモデルを組み上げるのはちょっと難しい気もします。

 ただ、日本では最近何でもかんでも無料サービスになる印象が強いですが
、もう少し「仮想物」にお金を払うという可能性が追求されても良いのではないかと思いました。
 (利用者層から考えると、日本で一番可能性があるのはmixiや楽天日記あたりでしょうか。FunkyBusinessLifeにあるように課金システムの視点から、はてなも近いかも。)

 
 もう一つ面白かったのは、韓国でのサービス展開がブログ的なものからメルマガ的なものへ日本と逆の進化をしていること。
 結局このようなサービス展開は、その国のそのタイミングの背景や競合サービスの状況、国民性などに影響されるので、国によって大きく異なってくるということだと思います。

 そういう意味では、ここでは書ききれませんが前半のソーシャルネットワーキング.jpの原田さんのプレゼンで紹介されたSNSサービスも、SNSの「未来」を考える上でのヒントが満載でした。
(このサイトでは毎日のようにSNSの最新情報が掲載されているので、この分野に興味のある人は必須のサイトですね。)

 やはりますますSNS的なものの将来が気になった一日でした。

レノボって何?PCからIBMブランドが消える?

IBMのPC事業売却が正式決定–売却額は17.5億ドル – CNET Japanを読んで。

 IBMのPC事業が、中国のPCメーカーLenovo Groupに売却。


 IBMがサービスに注力するようになってから、いつかこの日が来るだろうとささやかれつづけてきましたが。
 まさか中国メーカーに売却とは思いませんでしたね。

 Lenovoという名前自体、恥ずかしながら始めて今回知ったのですが。
 はたしてブランド移行は上手くいくのでしょうか?

 少なくともIBM(Lenovo)は、日本顧客の多くを失うように思います。

 IBMのThinkPadは質実剛健、象が踏んでも壊れないので有名で、私の知り合いも多くの人が愛用しています。
 ある人は、一度ThinkPadをマンションの階段で落としてしまい、上から下まで縦に転がったのに、なんとスイッチが入ったという奇跡を目の当たりにしてからずっとThinkPadだそうで。

 この人たちがLenovo、つまり中国メーカーになったThinkPadを使いつづけるのかは、はなはだ疑問です。
 Ceekz Logsの「IBMが中国へ行く」の「新ブランドへの移行とともに、落下試験をしたら大破するマシンになっていけば面白いのにな」というコメントには笑ってしまいましたが、実際そういうイメージはありますよね。
 

 米国のメディアも軒並みこの売却には批判的で、得するのはライバルのHPとDellだけじゃないかと手厳しい感じです。
(デルは「IBM-レノボのPC事業合併はうまくいかない」と他人事のようですが)

 ちなみにウォールストリートジャーナルの記事では、過去のアジア企業による米国のPCメーカーの買収の失敗例を並べていました。(そういえばNECがPackard Bellを買ったなんてこともありましたね)

 パソコンの生みの親であったはずのIBMが、中国メーカーに買収されるというのは実に中国の勢いを象徴する出来事に思えますが、はたしてここが頂点となるのか、これが始まりなのか・・・興味深いです。

 そういえば、タイミングよく(これを知っていたかのように?)11月末にガートナーが「世界のPCメーカー上位10社のうち、多ければ3社が2007年までに市場から淘汰される可能性がある。」というレポートを出していましたが、果たして次はどこか?というのも気になるところですね。

ソフトバンクBB、800MHz帯利用の夢はかなうか?

ソフトバンクBB、800MHz帯利用を求め免許申請 – CNET Japanを読んで

 10月に、はなばなしく行政訴訟をぶち上げた孫社長ですが、やはり現実路線を捨てたわけではないようです。


「同社が現在総務省に対して行っている行政訴訟の法廷において、同社が免許申請することは可能という説明を総務省から受けたため、今回の申請に至った」とのことで、一部行政訴訟を取り下げて800MHz帯への免許申請を行いました。

 ただ、完全に行政訴訟を辞めるわけではないとの事。
 おそらくは、行政訴訟という武器を使いながら総務省を牽制しつつ、交渉をできるだけ有利に進めたいということなのだろうと想像しています。 

 
 ソフトバンクBBの携帯電話事業参入の勝算について、関連業界の人にいろいろ話を聞くと、大抵の人がネガティブな発言をされる印象が強いです。

 割り当てられる電波帯域や、設備投資の金額とカバーできるエリアを考えると、NTTの回線に相乗りして実現できたADSL事業とは訳が違うというのがポイントのようですが。

 それらの方々に言わせると、今回の行政訴訟は追い詰められて仕方なくの手段だとのこと。

 私のような業界の事情を良く知らない人が「ソフトバンクBBが携帯電話事業に参入すれば、携帯電話も安くなるのでは?」と期待するのとは、意外なほど温度差があります。

 さて、本当のところはどうなんでしょうね?

参加型ジャーナリズムと個人的な経験

ネットは新聞を殺すのかblog 年末進行中の「どうでもいい議論」
を読んで。

 先日「ネット上の議論が半永久的に残ることの価値」で紹介した、切込隊長と湯川さんの議論は、実はまだ続いています。


 今回は、湯川さんの「参加型ジャーナリズムは技術革新待ちの状態」という記事に、切込隊長が「参加型ジャーナリズムが発展しないのは機能の未整備が理由ではないと思う」とコメントし、湯川さんが「年末進行中の「どうでもいい議論」」と返しています。

 
 相変わらず、素人の私が割り込める隙はないんですが。
 やっぱり今回も、二人とも正しいんだろうなぁと思ってしまい、サイドを選べないので更に議論に参加できずにいたりします。
 特に自分の体験を振り返ると。

 まず賛同するのは切込隊長が書いているように、技術革新が根本的なものをほとんど変えていないという点。
  
 私が始めてインターネットやニフティのフォーラムに触れた時、個人的には場所や企業を超えたメンバーと議論したり情報交換できることに、ネットの大いなる可能性を感じたものです。

 しかし、その頃からはや10年。
 たしかに2ちゃんねるやブログのようなものを通じて、ネット上の議論への参加者は大いに増えましたが、本質的なメディアや社会の仕組みは未だにほとんど変わったような気はしません。

 でも、湯川さんが書いているように、技術の進化が参加型ジャーナリズム的なものの素地になる可能性も否定できません。

 例えば、今回の二人の濃い議論が成立するのはおそらくブログのトラックバックという仕組み(技術)のおかげです。
 もし、この議論が2ちゃんねるのような掲示板形式のもので行われていたら、二人の議論は、他の多数の参加者の書き込みや雑音に埋もれてしまって、おそらく成立しなくなっていたでしょう。

 さらにブログという個人サイトの仕組みが、その書き手にミニメディアと呼んでいいほどの影響力を与えることがあることを、切込隊長自身が体現しています。

 実は切込隊長は、7年ぐらい前、私がニフティのフォーラムの初心者だった頃に、優しく(厳しく?)いろいろとアドバイスをしてくれた、私にとってはいわば師匠的存在の人の一人で。
 仕事で行き詰まってたこともあり、名古屋からわざわざ東京のオフ会に顔を出したりしていた私に、私が井の中の蛙であることを思い知らせてくれた人たちの一人でした。

 その後、私は会社で職種が変わったこともあり、企業内部を向いた活動に力を入れるようになって異業種交流会的な活動からしばらく離れてしまうのですが、最近になって切込隊長のブログを見つけ、先日の議論に懐かしさを覚えてついトラックバックした次第でした。

 なんだか昔話が長くなりましたが何を言いたいかというと。

 特に私が印象的だったのは、先日の私の書き込みに対して切込隊長が返事を書いてくれたところ。
 翌日・翌々日の飲み会で「徳力さん、切込隊長からコメントもらってましたよね」と何名もの方に(驚きも含めて)言われたことです。

 個人的には、あの切込隊長のコメントは、私がニフティのフォーラム初心者だった頃と全く同じような感じで、懐かしいやら嬉しいやら一人で感慨に浸っていたんですが。

 周囲の反応はその当時とは全く異なっていたわけで(当たり前ですね)。
 フォーラム時代との、確実な時代の変化、ネットの影響力の増加の片鱗のようなものを感じてしまったわけです。

 そう考えると。
 切込隊長が書いているように、まだまだネットメディアや参加型ジャーナリズムが主流になるには欠けているものがあるのも感じますが、
 湯川さんの主張のように何かの技術がきっかけになって、どこかニッチな分野においてネットメディアがいい線いく可能性って、案外あるんじゃないかなぁと思ったりするわけです。

 なんだか相変わらず考えがまとまりません。

 とりあえず、自分がFPNをやっているのもあの頃のニフティのフォーラムに出会ったときの感動が忘れられないからかもしれないなぁ・・・と、そんなことを感じてしまった今日この頃です。

ココログ一周年に見るブログ事業者コラボレーション

いい感じ: ココログと私を読んで。

 kwmrさんのブログ経由で知ったのですが、ココログが一周年を迎えたそうです。


 その単体の出来事で言えば、別に取り立てて騒ぐ話ではないのですが、非常に興味深いのがココログの一周年記念キャンペーンに寄せられた激励のエールのメンツ。

 ココログでブログを書いている有名人が書いているのは当然ですが。
 なんとkwmrさんだけでなく、ライバルであるはずの主だったブログサービスの責任者のほとんどが名前を連ねています。
 

 Movable TypeつながりであるSix ApartとOCNの名前があるのは、まぁ、まだ分かるとして。
 その他にもBIGLOBEのウェブリブログ、はてな、ヤプログ、BLOCKBLOG、チャンネル北国tv、NAVERブログ、JUGEM、ドリコムブログといった面々が名前を連ねています。

 kwmrさんも書いていますが、「一つのサービスに閉じることなくコラボレーションする、ブログというプラットフォームをお互い切磋琢磨しながら拡大する、そんなことを仕掛けたい」という、まさにブログならではのイベントだったのかなぁと思いました。

 もちろん、ちょっと穿った見方もできます。

 kwmrさんは「サービス提供者が単独でマーケットを拡大することは難しいと感じていて、相互に競争しながら市場を拡大する...まさにブログ的な世界」とも書かれていますが、そういう視点で見るとココログのページには業界で主要なシェアを占めているはずの楽天、ライブドア、gooブログなどの名前がありません。
(ブログのシェアに関しては、BlogFan.ORGが11月のアクティブユーザー数を出しているほか、Bulkfeedでシェアのグラフなどがあり、ある程度想像することができます。)
 
 単純にNiftyとの付き合いの有無を表しているだけなのか、単独でも市場を十分拡大できると踏んでいるので、他社とのコラボレーションに興味が無いということなのか、どういうことなんでしょうね?

 
 なんにしてもkwmrさんが書いているように「黎明期を終えたブログは、次のステージへの移行過程にある。」と私も感じます。

 現在のブログブームは、はたして本物に変わるのか、プチバブルなのか。
 ブログサービスを提供している各事業者は今後どういった独自性を模索するのか。

 はたしてどうなるんでしょうか・・・?

P2P ソリューション:P2P コンソーシアムと「ワイン日記」

2004/12/2にjapan.internet.comに新しいコラムが掲載されました。

 前回は P2P 技術を使った医療情報の流通という、数ある個人情報の中でも特に高いセキュリティの確保が必要とされる情報の流通の仕組みについて紹介しました。

 P2P 技術を使えば、医療情報や音楽配信の流通や共有の仕組みが作れるんですから、もっと普通の情報を P2P 型のシステムで作ってもメリットがあるはずですよね。そんな取り組みをしているのが今回紹介する P2P コンソーシアムです。

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