ブログスフィアは、あのマイクロソフトのブロガーとして有名なロバート・スコーブルが執筆した本です。
ONEDARI BOYSの関連で献本していただきましたので、早速読んでみました。
最初は「ブログスフィア アメリカ企業を変えた100人のブロガーたち」というタイトルからだと、アメリカブログ界の歴史本のように思ってしまったのですが、違います。
ブログというツールが、企業と消費者の会話をどのように変えてきたのか、そしてこれからどのように変わっていくのかというのを、企業ブロガーの第一人者の視点から鋭く分析したビジネスブログ担当者向けの指南書ですね。
原書のタイトルが「Naked Conversations(裸の会話)」で、副題が「How Blogs Are Changing the Way Business Talk Withs Customers(顧客とのビジネストークをブログがどのように変えていくのか)」なので、そちらからイメージしてもらったほうが分かりやすいかもしれません。
これまでの企業から消費者に向けての「広告」という一方的なコミュニケーションではなく、ブログを通じた双方向の「会話」というのがいかに重要で、いかに強力かということを、実体験や事例を踏まえて多角的に分析・解説されている非常に良い本です。
さすがロバート・スコーブル。
「会話の時代」という表現も印象的でした。
個人的には、後半のどういう会社はブログが向いてないかという分析やブログポリシーの項目にいちいち納得しながら読んでしまいました。
あと、日本の事例も結構紹介されていて、日本がビジネスブログ先進国というのはまんざら誇張ではなさそうというのが改めてちょっと嬉しかったり。
まぁ、事例や登場人物がアメリカの物・人がほとんどなので、ちょっと分かりづらい部分もあるかもしれませんが、企業で顧客との対話というのが重要だと思われる全ての職業の方にお勧めできる本だと思います。
特に大企業の中でブログを書いている人には、自分も含め上司や同僚に理解してもらうための本としても最適な気がします。
ちなみに、ロバート・スコーブルといえば、私が始めて「アルファブロガー」という言葉を知った時の織田さんのコラムに登場していたブロガーだったりしますので、個人的にも思い入れがあったりしますが。
先日、マイクロソフトを辞めてPodtech.netに転職、今後はVideo bloggerとして活躍していくそうです。
こちらも注目です。
【読書メモ】
■ブログは2番目の段階をおおむね通過した。
「すべての真実は3つの段階を辿る。第一はからかわれる。第二に、暴力的な抵抗を受ける。第三に、自明のこととして受け入れられる」(アルトゥル・ショーペンハウアー)
■マイクロソフトが友好的に受け止められるようになった要因はブログ
マイクロソフト唯一の公式ブログ「チャンネル9」
→ユナイテッド航空のチャンネル9で、フライトの最中にパイロットの声を聞くことができることから。
■MSNスペースについての否定的な意見を探し出しては、すぐにそのサイトに意見を送る。
「人は、それが会話だと思えば、ちゃんと礼儀正しくするもの」
■革命はたいてい、ひっそりと始まる
■ブログについて最も重要な点は、会話ができるということ
電話、eメール、掲示板等のツールは、どこにいても多くの人々と会話ができるようにしてくれるものではない
一方通行のコミュニケーションから、分権的で双方向のコミュニケーションへの革命
■ブログの6本柱
1.公開性がある
2.見つけやすい
3.社会性がある
4.感染性がある
5.シンジケート性(配信性)がある
6.リンクできる
■「顧客エバンジェリスト以上に強力なものなんて、あるわけがない。
ブログは顧客を企業の擁護者としてのエバンジェリストにしてしまうんだ。」
(ベン・マッコネル)
■ファイアフォックスが2500万人のユーザー数に達したのはICQよりも6倍速かった。
(それからさらに2500万人獲得にその半分の時間。すべてがインターネット上の口コミだけで達成された)
■人間は協調するようにできている
協調しない方が個人的便益は大きくても、人は協調をやめない。
■企業にとってのブログの主な優位性
・会話を見出し、それに参加できる
・ネットワークを育む(ブログは「強力ターボつき口コミツール」)
■ブログの世界のコネの鉄人、バズ・ブラッガマン
■ブログで成功するための5つのヒント
・語れ、売り込むな
・頻繁に投稿し、面白いものを書け
・興味のあることについて書け
・ブログは費用の節約になるが時間がかかる
・人の話に耳を傾けよ
■「エバンジェリスト顧客を生み出す」に書かれている6つの企業行動
・継続的に顧客からのフィードバックを求めよ
・自由なナレッジ共有に努めよ
・口コミネットワークを専門的に構築せよ
・顧客コミュニティに顔合わせや情報交換を促せ
・専門性が高く、手軽に試せるものを提供せよ
・世の中や自分の属する業界をより良くするものづくりに集中せよ
■ブログにあるバラのとげ
・文化の問題
・反響室(実際にはわずか数人が頻繁にやり取りしているだけで、活発なコミュニケーションと勘違いすること)
■良く指摘されるブログのFUD(恐れ、不確実性、疑い)
1.ネガティブ・コメント
2.機密漏洩
3.ROIがない
4.メッセージをコントロールできない
5.競争上の不利
6.時間がかかるわりに読者が少なく、効率が低い
7.問題を起こす社員
→結局、文化こそビジネスブログにまつわる判断の核だ。
制限の多い文化を持つ企業は、ブログをすべきではない
■アストロターフィング
無関係な人々が一致団結して何かに対して声をあげたように「見せかける」手法
■正しくブログをやるための11のヒント
1.名前と検索エンジン
2.始める前に、山ほど他人のブログを読め
3.焦点を絞って単純に
4.情熱を示せ
5.正当性を示せ
6.コメント機能を忘れずに
7.近づきやすくせよ
8.物語をせよ
9.リンクをうまく使え
10.現実の世界に踏み出そう
11.リファラー・ログを使おう
■ブログを書く上で、社員が自分の会社について知っておくべきこと
・社員がブランドよりも前に出ることを会社は嫌っているか
・「ひとつの声」政策を採っているか
・会社は「市場は保守的なもの」と思っているか
・あなたの会社は、法務面にどの程度慎重か
・就業規則や雇用契約書を読みなおす
・訴訟に関わることは避ける
・上司と話そう
・誰が何を所有しているか、知っておこう
・ブログ・ポリシーを確認しよう
■ブログで問題に巻き込まれたとき
「何か間違ったことをしてしまったときには、応戦をしてはいけない」
■「会話の時代」
ブログはひとつの時代に終わりをもたらし、新たな時代を開くものになるだろう。
この新時代には、顧客に話しかけているだけの企業は勝てない。
相手の話を気かなければならないのだ。
【目次】
ブロガーと鍛冶屋と
第1部 いま起きていること
・『悪の帝国』の使者たち
・ブログはすべてを変えるか ほか
第2部 良いブログ、悪いブログ
・方法の誤り
・ブログをより良くするには?
・クビにならないブログの方法
・ブログによる危機対応
第3部 ビッグ・ピクチャー
・新興技術
・会話の時代
ブログスフィア アメリカ企業を変えた100人のブロガーたち ロバート・スコーブル シェル・イスラエル 酒井 泰介 by G-Tools |