ウェブ人間論 (梅田 望夫 , 平野 啓一郎)

ウェブ人間論 ウェブ人間論は、ウェブ進化論の梅田望夫さんと、芥川賞作家の平野啓一郎さんの対談をまとめた新書です。
 今、実は「フューチャリスト宣言」を読んでいるのですが、改めてウェブ人間論の読書メモを書いていないことに気がついた(汗)ので、まとめてみました。
 この本については既に書評がいろんなところで書かれているので、特に追加することは無いのですが、この本はウェブ進化論を読んだだけでは腹に落ちなかった人のために、あらためて平野さんが梅田さんに質問する形で、その足りない部分を丁寧に説明してくれている本のように感じました。
 そういう意味で、個人的に面白いと感じたのはこの対談をしている二人の世代と立ち位置の微妙なギャップ。
 1960年生まれで普通は世代的にはエスタブリッシュ側になるはずの梅田さんがネットに対して楽観的で、1975年生まれと76世代の中心世代にあたる平野さんがどちらかというとネットに対して懸念を持っているエスタブリッシュの代表の質問者の役を演じている。


 もちろんコンサルタントにしてベンチャーキャピタリストという梅田さんと、作家の平野さんという立ち位置の違いがうんでいるものではあるのですが、この通常の対談とは異なる世代と立ち位置の微妙なギャップがこの対談の価値を増しているような気がします。
 ちなみに、最も印象に残ったのは「それが全員にあまねく広がったからよいという考えもあるけど、能力の増幅器でもあるから、個人の能力の差異が限りなく増幅されると言う側面ももう一方である」という発言。
 個人的にはネットがあるから、個人の機会はフラットだと常々主張して来ているのですが、たしかにそれを上手く活かせる人と活かせない人で大きな違いが生まれてきてしまうのは事実。
 個人レベルでは自己責任と気って捨てても良いのですが、はたして日本としてはそれで良いのか、改めて考えさせられる一冊です。
【読書メモ】
■八十年代に活躍したいわゆるニューアカ世代の一部の人たちには、今でも、あらゆる情報に網羅的に通暁して、それを処理することができるというふうな幻想が垣間見える
■「多文明世界で日本は孤立する」(文明の衝突 サミュエル・ハンチントン)
■成長のきっかけになるようなトラックバックをしてくれた人とは、どこかで実際に会ったらすぐに友達になれるだろう、という実感を持ちます。
■ネットでブログをやっている人の5種類の意識
・リアル社会との間に断絶が無くて、ブログも実名で書き、有益な情報交換が行われている
・リアル社会の生活の中では十分に発揮できない自分の多様な一面が、ネット社会で表現されている場合
・一種の日記。あまり人に公開すると言う意識も強くない?
・独白的なブログ。内心の声、本音と言ったものを吐露する場所としてネットの世界を捉えている人たち
・ネットの中だけの人格を新たに作ってしまっている人たち。
■ネットには、リアル社会やいわゆる「エスタブリッシュメント」をシニカルに笑いあっているような雰囲気が、まぁ、一部にある。
 だけど、その笑いは、結局、リアル社会や「エスタブリッシュメント」をまったく動揺させないし、むしろサブシステムとしてその安定に手を貸していると思うんです、図らずも。
■リアルの世界と言うのは摩擦がいっぱいあって、何かやるためにはお金がかかる。だからリアルではネットよりもお金がまわっていきやすい。
 その代わりネットは、情報だけに関しては、情報の複製コストがゼロとか、伝播速度無限であるとか、そういう特別な法則が働いています。
■彼らにとってはロングテールの頭っていうのはダークサイドなわけです。
■個人にとって、ネットはとんでもない能力を持った道具です。
 それが全員にあまねく広がったからよいという考えもあるけど、能力の増幅器でもあるから、個人の能力の差異が限りなく増幅されると言う側面ももう一方である。
【目次】
第1章 ウェブ世界で生きる(ネットの世界に住んでいる
検索がすべての中心になる ほか)
第2章 匿名社会のサバイバル術(ネットなしではやっていけない
五種類の言説 ほか)
第3章 本、iPod、グーグル、そしてユーチューブ(表現者の著作権問題
「立ち読み」の吸引力 ほか)
第4章 人間はどう「進化」するのか(ブログで自分を発見する
「島宇宙」化していく ほか)

ウェブ人間論 ウェブ人間論
梅田 望夫 平野 啓一郎

ヒューマン2.0―web新時代の働き方(かもしれない) シリコンバレー精神 -グーグルを生むビジネス風土 ネットvs.リアルの衝突―誰がウェブ2.0を制するか ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる YouTube革命 テレビ業界を震撼させる「動画共有」ビジネスのゆくえ
by G-Tools