テレビCM崩壊は、Ad Innovatorの織田さんが監修した書籍です。
ブログでもいろいろ話題になっているので今更ですが、遅ればせながらネット広告の未来が気になってきたので読んでみました。
テレビCM崩壊の原題は「Life After the 30-Second Spot」30秒広告の後の世界という感じでしょうか。
米国における具体的な事例と共に、著者のテレビ業界・広告業界に対する刺激的な指摘が印象に残る本です。
テレビCM崩壊というタイトルも非常にインパクトが強いですが、書籍ではテレビCM崩壊後の広告のバリエーションについて幅広く紹介されています。
邦書も既に5刷を超えるベストセラーになっているようで、織田さんもインタビューにセミナーにとそこら中で大活躍です。
米国に比べると日本ではまだまだテレビ広告が強いので、一部上場企業がテレビからネットに広告の中心をシフトするという事例は出てきていないように思いますが、アメリカの事例が日本にも展開される日が来るのか気になるところです。
個人的に気になっているのは、広告費にこれだけの費用を投下する時代というのはテレビ全盛期時代だったからなのか、ネット時代には企業が広告に賭ける費用というのは減っていくのかどうか、という点。
今までテレビにかけていたお金をネットに展開しても、ろくに使い道がないというのは良くある話ですが。
テレビCM崩壊後の時代というのは、これまで広告にかけていたお金を製品開発に投下してクチコミが発生する製品開発に注力するようになるんでしょうか。
それとも結局企業が広告にかける費用の割合というのはあまり変らないのでしょうか・・・
広告業界の人だけでなく、未来の広告の話が気になる人にお勧めの本です。
ちなみに第一章がPDFでダウンロードすることができます。
【読書メモ】
■テレビCMは、人と違う事をするのを恐れるマーケターによって作り上げられた神話である。
■TVネットワークの悪循環
消費者の細分化→番組の細分化→番組毎の広告費の減少→番組制作の予算減少→番組内容の質低下→視聴者離れが進む
■コミュニケーション革命「パーフェクト・ストーム」の4つの要素
・ブロードバンド
・ワイヤレス
・検索エンジン
・ネットワーク
■変り行く消費者の消費行動の10の教義
1.今日の消費者は情報通である
2.今日の消費者は主導権を握っている
3.今日の消費者は懐疑的である
4,今日の消費者は繋がっている
5.今日の消費者は時間に追われている
6.今日の消費者は要求が多い
7.今日の消費者にブランド・ロイヤリティはない
8.今日の消費者は常にアクセスできる
9.今日の消費者は先を行っている
10.今日の消費者は執念深い
■ニューブランディングの7つの特性
1.ブランド体験
2.流動するブランド
3.アンチ・ブランドの出現
4.コミュニティ・ブランディング
5.ブロードバンド=ブロード・ブランド
6.ブランディングとダイレクトレスポンスの衝突
7.データによるブランディング
■ビジネスモデルを再考する
1.価値に見合うと感じれば、消費者はお金を払う
2.有料と無料の中間点
3.広告らしくなければ、広告ではない
4.警告に耳を傾けるべきだ
5.ROIからRUE(Relevance Utility Entertainment)へ
6.ブランドに気をつけろ
7.適正価格
8.旧式効果指標をつぶせ
9.プッシュ型からプル型へ
10.最終的決定権を持つのは消費者である
■広告の新しい役割
1.消費者に主導権を与える
2.消費者に製品を説明する
3.消費者に参加してもらう
■ゲームと広告の融合
・彼らは自発的にメディアに征服されている
・テレビには見られないほど長時間没頭している
・広告主が喉から手が出るほど欲する、熱意と忠誠心がある
■旧来型のマーケティングと体験型のマーケティング
・旧来型のマーケティング:消費者への一方的なコミュニケーション
・体験型のマーケティング:消費者との対話が中心
■長編コンテンツは、テレビCM崩壊の権化であり、広告業界の救世主といえる
■バイラル・マーケティングは消費者から発生するものであり、あくまでも棚ボタなのだ。意味なくして消費者はクチコミはしない。
(パームは、ブランドに忠実な既存顧客に特典を与え、それによってバイラル・マーケティングの効果を狙った)
【目次】
第1部 問題
マスメディアの終わり―「もはやコカコーラでさえ大衆商品ではなくなった」
テレビCMを蝕みつつあるものは?―クリエイティビティ(という名の無駄)
マス広告の崩壊―「売れなかったのは、商品が悪いから」という言い訳 ほか
第2部 解決策
変貌する消費者を再考する―今日の消費者についての10の教義
ブランディングを再考する―ニューブランディングの7つの特性
広告を再考する―「未来を開く鍵は、しばしば過去にある…」 ほか
第3部 10の新しいアプローチ
インターネット―「ぜひここで自分自身を鏡に映してみてほしい…」
ゲーム―「なぜゲームなのか?なぜ今なのか?理由は…」
オンデマンド視聴―「メディア接触における最大の変革のひとつは…」 ほか
テレビCM崩壊 マス広告の終焉と動き始めたマーケティング2.0 Joseph Jaffe 織田 浩一 by G-Tools |