[徳力] 第1感最初の2秒のなんとなくが正しい　（マルコム・グラッドウェル）

　第１感は、ティッピングポイントで有名なマルコム・グラッドウェルの新刊です。
　
　原題は「Blink」。
　まばたきするような間に、人間は論理的な思考よりも正しい結論を直感で導き出すことができるという理論を展開しています。
　
　おそらく誰でもそういった直感、この本でいうところの「第１感」のようなものの正しさをなんとなく信じているところがあると思いますが、この本は様々な事例からそれが何故正しいのか、どういうときに正しくなくなるのかということを解説しています。
　もちろん、何でもかんでも勘を信じろという話ではなく、経験があるからこその第1感ではあるんですが、あらためて脳の凄さを感じる一冊です。

　ちなみに、本筋には関係ないですが、個人的に印象に残ったのは「革新的製品は市場調査になじまない」というくだり。
　市場調査は論理的な判断力を必要とし、その比較対照は既存のなじみのあるものになってしまうため、全く新しい革新的製品で素人の判断を寄せ集めてデータにしても意味が無いということのようです。
　新製品を出す際には、ついついマーケットリサーチとか事前調査とかに頼りたくなるものですが、頼りすぎるのも良くないんだというのを改めて感じます。
　
【読書メモ】
■四つの感情に注目すれば、必要な情報は見つかる
　「防衛」「はぐらかし」「批判」「軽蔑」
■行動を促すプライミング実験
　「心配した」「灰色」などの歳を取った状態を示す単語を適応性無意識に働きかけることで、その後の行動に影響が出る。
■車のセールスマンの成功の要因
・客の求めているものや心理状態についてはいくつも瞬時に判断を下す
・客を見た目で判断することは絶対にしない
■「将軍だからといって、確信を持って何かを知っているとか、敵がよく見えるということはなく、自分がどういう状況にいるかさえよくわからないものだ」（ナポレオン）
■「指示は出すが諸君の行動を支配はしない」（バン・ライパー）
　全体的な指示や作戦の目的は指揮官が伝えるが、戦場に出た部隊は上からの細かい指示を当てにしない。
　
■余計な情報は無用なだけでなく、有害でもある。
　問題をややこしくするからだ。
■瞬時の判断のための大切な教訓
　・正しく判断するには塾考と直感的な思考のバランスが必要
　・優れた判断には情報の節約が欠かせない
■感覚転移　（ルイス・チェスキンス）
　消費者が買う製品を評価するとき、製品のパッケージに対して抱いた感覚や印象を、知らず知らず製品そのものに転移させる。消費者にとって、製品のパッケージと中身は一体。
■「製品開発に携わっていると自分の製品に没頭してしまい、売り込む相手はその製品にまだなじみがないということを忘れてしまいがちだ。」
■革新的製品は市場調査になじまない
　市場調査が人気があるのは、確かなデータが数字で出るからだ。
　だが本当のところ、重要な判断に関して確かなことなどありはしない。
■プロは第一印象を再現できる、素人はできない
■マイクロ・エクスプレッション
　人間には自分の意志では制御できない表情を作る事がある
■興奮すると相手の心が読めなくなる
　最適な「興奮」の状態、すなわちストレスによって適切な行動が取れるようになる範囲は、心拍数が毎分１１５から１４５のとき（デーブ・グロスマン「戦争における人殺し」）
■時間がないときにも相手の心が読めなくなる
　時間がなくなると、人は最低限の直感的な反応しかできなくなる
■パトカーに二人乗せずに、一人だけ乗せるように、警察署が方針を変えてきている理由
「警官は一人だとまったく違う行動を取る。待ち伏せにあう危険も少なくなるし、無理な突入もしない。行動が優しくなるし、時間をかけるようになる。」
【目次】
第1章「輪切り」の力―ちょっと情報で本質をつかむ
第2章無意識の扉の奥―理由はわからない、でも「感じる」
第3章見た目の罠―第一印象は経験と環境から生まれる
第4章瞬時の判断力―論理的思考が洞察力を損なう
第5章プロの勘と大衆の反応―無意識の選択は説明できない
第6章心を読む力―無意識を訓練する