ブログがジャーナリズムを変える (湯川 鶴章)

ブログがジャーナリズムを変える 「ブログがジャーナリズムを変える」は、「ネットは新聞を殺すのか」という刺激的なタイトルで有名な、時事通信の湯川さんの新作です。
 光栄にもデジタルジャーナリズム研究会で、献本をいただきましたので読んでみました。
 
 ブログと既存メディアの関係というのは、個人的にも非常に興味がある分野です。
 個人的にはブログのようなCGMは既存メディアを破壊するものではなく補完するものだと考えていますが、その過程で発生している変化が既存メディアのビジネスモデルを壊し始めているのは事実。
 その現実を直視し、警鐘を鳴らし続けてきた湯川さんの未来予測には賛同できるところが多々あります。
 特に印象に残ったのは情報ハブという視点。
 デイブ・ワイナーの発言の引用で「読者を巻き込んだ新しいタイプのジャーナリズム」というのがありますが、これまでの記者と読者という対立した区別ではなく、記者も読者も同じサイドに巻き込み、エディターがその交通整理をするというイメージは興味深いです。


 ちなみに、個人的には湯川さんの個人的な炎上体験の記述も気になりました。
 「ブログの炎上には、誠意を持って迅速に対応することが必要」というのはよく言われることではありますが、それだけでは対処しきれないケースがあるのも事実。
 世の中には自分とは反対側の意見を持った人が必ずいる、ということを意識して情報発信をするしかないのかな、と改めて感じます。
【読書メモ】
■究極の形を想定した上で、それに向かう技術革新の道のりの中での現時点を認識し、二、三年後を予測する
■メディアが提供するサービスに、人々が望んでいる3つのキーワード
・「好きな番組を好きな時間に見る」 ビデオ・オン・デマンド
・「好きな番組を好きな場所で見る」 モバイル
・「主張を聞いてほしい」      参加型メディア
■カレントTV (current.tv)
・他のユーザーから評価を受けて、人気の高いものがテレビで放映される
・放映されたビデオの本数により250ドル~1000ドル支払われる
■メディアとは「媒体」「中間に位置するもの」
・情報の流れが一方通行の時代 
 「中間に位置するもの」は「見せる、聞かせる、読ませる」
・情報の流れが双方向の時代
 「中間に位置するもの」は対話や人間のつながりを促進する
■ブログの総数と更新割合(トピックスのデータより)
・日々の最新記事の85%~90%はスパム記事
・残りのブログの半分は60日以上更新が無い
→95%のブログは情報ソースとはなりえない
■記者として、してはならないこと十箇条
・発表文を基に原稿を書いて、仕事をしている気になるな
・明日発表される予定のものを、今日スクープして喜ぶな
■マスメディア的な機能を残すカギ
・一般市民が社会の舵取りにどれだけ参加できるか、一般市民の側にどれだけパワーが移行するのか
■新しいメディア企業は情報ハブを目指すべき
・新しい才能の発掘、育成
・記者・ブロガー・コラムニストが取材、執筆に専念できる体制作り(雑務、法務)
・そのサイトに行けば、特定の問題に関するすべての情報が集まってくるというイメージ
■ブログの2・6・2の法則(ブログ道)
・どんな人でも二割の読者と心を通わせることができる。
・六割の読者にとっては、そのブログは可もなく不可もなくという状態
・どれだけ真摯な気持ちで文章を書いていても、残りの二割の人には理解されることがない
■読者を巻き込んだ新しいタイプのジャーナリズム(デイブ・ワイナー)
・記者全員にブログを開設するよう命じます。それから読者にもブログを開設するように勧めます。
・(新聞社の)エディターの役割は、図書館の司書や、タレントスカウトのようなものになるわけです。
・編集権をコミュニティーの中に分散するわけです。
■情報市場と情報ハブ
・情報市場:情報が売買されたり、やりとりされる仕組みのこと。
・情報ハブ:自然と情報が集まり、交換されるようになる場のこと。
■ギブ・アンド・ギブ・アンド・ギブ・アンド・ギブン
 ネット上では、情報は出して出して出して出し続ける事が重要
 そうすれば自然と情報が集まってくる (久米信行氏)
■ブログの炎上が教えてくれたこと
・ブログの炎上には、誠意を持って迅速に対応することが必要
・八方美人の弱さ
「どうしても理解してもらえない人がいるということを理解する」
【目次】
第1部 放送と通信の融合を大胆予測
 未来からの予測
 メディア消費の三つの層
 メディア企業の役割の変化と覇権争い ほか
第2部 参加型ジャーナリズムの時代がやってきた
 ジャーナリズムとは
 究極のジャーナリズム
 ニュースビジネスの今 ほか
第3部 ネットにやられてたまるか
 記者ブログ炎上
 既存メディアのビジネスモデルは
 動き出した「恐竜」

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湯川 鶴章


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“ブログがジャーナリズムを変える (湯川 鶴章)” への1件のフィードバック

  1. http://d.hatena.ne.jp/BigBang/20060807/1154936207
    [見えないトラバ]リンス・イン・ジャーナリズム論
    巻き込む人をこれ以上増やしたくないので、こちらもさらっと行きますが。
    徳力さん、ほんとにさらっとしてますね。
    (中略)
    風になびく、よくリンスされた髪のようなジャーナリズム論だと思いました。
    さらさらっ。

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