シリコンバレー精神 -グーグルを生むビジネス風土 (梅田 望夫)

シリコンバレー精神 -グーグルを生むビジネス風土 シリコンバレー精神は、ウェブ進化論の大ヒットで、ネット企業だけでなく普通の企業にも有名人となった梅田望夫さんの新刊です。
 光栄にも献本を頂きましたので、早速読んでみました。
 
 新刊といっても、正確にはウェブ進化論の前に出版していた「シリコンバレーは私をどう変えたか―起業の聖地での知的格闘記」の文庫化ですから、そういう意味では、ウェブ進化論の前作というのが正しいでしょう。
 ウェブ進化論は40万部近く売れ続けているということで、梅田さんに対してウェブ進化論の人、Web2.0の人という印象を持っている人が多いようですが、実は梅田さんが私たちの世代に本当に伝えたいことというのは、やっぱりウェブ進化論ではなくこちらの書籍なんだろうなーというのを改めて感じます。
(あとがきの中で、「「Web2.0時代の到来に狂奔する人々が多い今、Web3.0時代を切り拓くであろう「いずれ次のグーグルになる若者たち」が必ずどこかに居て、他の人たちとは全く違うことを考えているに違いない、という想像力に結びつけるべきなのだ。」とWeb2.0ブームに警鐘をならしていたりというのも印象的です。)
 シリコンバレー精神では、梅田さんがアメリカでシリコンバレーの独特の空気や文化に触れ、独立・起業と言う過程を経ていく流れが時代の出来事や印象に残った出来事と共に描かれています。


 そういう意味では梅田さんの伝記に近いつくりではあるんですが、読んでいて全く伝記っぽい感じを受けないのは、やはりその全てが「シリコンバレーからの手紙」というシリコンバレーから日本への、梅田さんから日本人へのメッセージとして書かれているからでしょうか。
 一つ一つのエピソードに考えさせられるところが多々あります。
 特に梅田さんの「会社を辞めて一人でやっていく権利ができたよ」という言葉に対する「すべては個人の中から生まれるんだ。会社じゃないんだ。価値を生み出すのは会社ではなく個人なんだ。」というゴードン・ベルとのやり取りには改めて感じるところが大きかったです。
 ちなみに、個人的に最も印象に残っているのは、あとがきに梅田さんが書いていた両論併記をせずに断定にこだわった理由とその効果。
 これまでも梅田さんはその断定的な物言いで、良くブログ界の議論を引き起こしている印象がありましたが、その背景にはこんな思いがあったんですね。
 自分は、どうしても断定ができずに常に両論併記で生きてきてしまっているのですが、成長するためには判断と断定にこだわることがそろそろ必要な気がしてきました。
 シリコンバレーに行きたいかどうかとは関係なく、新しい事業を立ち上げることにこだわりたい人、新しい物を生み出すための姿勢を学びたい人にお勧めの本です。 
【読書メモ】
■クオリティ・オブ・ライフ
・東京:「マネー」は「クオリティ・オブ・ライフ」を買うためにある
・シリコンバレー:「クオリティ・オブ・ライフ」は「マネー」の対概念
 時間と心の余裕こそが有限で、その有限の資源を「マネー」に向けて使い果たすか、
 「クオリティ・オブ・ライフ」に振り向け「マネー」の方は妥協するか
■シリコンバレー・リーグ
 シリコンバレーにはプロスポーツのメジャー・リーグのような思想と環境が、ビジネスマンとエンジニアのためにすべて揃っている。
■自殺したロシア人経営者に理解できなかったシリコンバレーの流儀
1.事業の成功・失敗は、あくまでビジネス世界でのゲーム。絶対に人生に反映させないこと
2.「失敗するのが普通、成功したら凄いぞ」というある種「いい加減な」遊び感覚を心の底から持つこと
3.失敗したときに関係者に迷惑がかかると言う考えを捨てること。みな、自己責任の原則で集まってきているのだと、自分勝手に都合よく思いこまなければならない。
■日本で使われている「ベンチャー」という言葉の多様性
1:下請け・受託開発型の中小企業・零細企業は、ベンチャーと呼ぶのはやめよう。
2:日本のベンチャーを、「借金型」「爺殺し型」「若きスーパースター資産家型」「シリコンバレー型」の四つに分類しよう
■オープンソースの思想
「素晴らしいソフトウェアとは、企業による社員プログラマーに対する強制によって生まれるのではなく、世界中の優秀なプログラマーが自発的に参加するネット上での共同作業によってこそ生まれるのだ」
■会社を辞めて一人でやっていく権利ができたよ
「すべては個人の中から生まれるんだ。会社じゃないんだ。価値を生み出すのは会社ではなく個人なんだ。」(ゴードン・ベル)
■単なる独立と起業の違い
単なる独立:自分一人の能力でこなし得る仕事量を上限に仕事を断ってしまう
起業:そこに需要があるのだから、しっかりした供給体制を整備し、成長できる構造を作ろうとする
■シリコンバレー精神「未来志向の行動の連鎖を引き起こす核となる精神。」
 限られた情報と限られた能力で、限られた時間内に拙いながらも何かを判断しつづけ、その判断に基づいてリスクをとって行動する。行動することで新しい情報が生まれる。行動する者同士でそれらの情報が連鎖し、未来が創造される。
■「偉大な仕事をする唯一の方法は、あなたがすることを愛することだ」
 「(もしその対象が見つかっていないなら)探し続けるんだ。(見つかるまで)落ち着いちゃダメだ」(スティーブ・ジョブズ)
■シリコンバレー精神を良く表す二つの言葉
・マドル・スルー「先行きが見えない中、手探りで困難に立ち向かう」
 (しかし、苦難と受け止めず好きで好きで仕方がないという境地で)
・テネーシャスネス「絶対にギブアップしない執拗さ」
 
■グーグルの研究開発思考のモノづくりから感じ取るべきこと
「Web2.0時代の到来に狂奔する人々が多い今、Web3.0時代を切り拓くであろう「いずれ次のグーグルになる若者たち」が必ずどこかに居て、他の人たちとは全く違うことを考えているに違いない、という想像力に結びつけるべきなのだ。」
■断定する表現を心がけてきた理由
(日本では、オプティミズムに基づき未知の可能性を描くよりネガティブな問題提起や批判を書く方が、また判断を下すよりも判断を留保し両論を併記する方が、無難で受容されやすい。)
・でもあえて判断と断定にこだわったのは、考えた事を行動に結び付けるには、どうしてもそれが必要だった。
・断定的表現でモノを書き、それが多くの人の目に触れるということは、自らに強い緊張を課すことになる。それが人を成長させる。
【目次】
1 シリコンバレーの基本を体感する
 天才たちが富を創り出す「天気のいい田舎町」
 失敗しても返さなくていいお金 ほか
2 ネット革命とバブル崩壊―同時代体感的ネットバブル考察
 不動産事情はまるでバブル期の東京
 米国ならではのインターネット革命 ほか
3 マイクロソフトとリナックス(Linux)
 最も変わったのはベンチャーより大企業
 「勝つこと」に執着するマイクロソフト ほか
4 シリコンバレーは私をどう変えていったか
 価値を生み出すのは会社ではなくて個人
 「変化していく自分」を楽しもうという気分 ほか

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梅田 望夫


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“シリコンバレー精神 -グーグルを生むビジネス風土 (梅田 望夫)” への1件のフィードバック

  1. 梅田望夫氏語る「I(アイ)の革命だ」

    前職でお世話になったR氏のブログから引用。いいこと書いてある。その通り!!ここから———===========================…

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