フラット化する世界(下) (トーマス・フリードマン)

フラット化する世界(下) フラット化する世界(上)からの続き
 ちなみに個人的に印象に残ったのは「アルカイダは、インフォシスがグローバルな共同作業に使っているのと同じツールを、製品や利益を生み出すのではなく、暴力や殺人を生み出すために使用している。」というくだり。
 アルカイダがインターネットを効果的に活用して、その勢力を維持しているという話は良くされますが、たしかにこうやって比較すると、アルカイダのアプローチというのはベンチャー企業が大企業に対してゲリラ戦を展開するアプローチと似ています。


 また、もう一つ気になったのが「インターネットは、合理性よりも不合理性を多く伝える傾向がある」というくだり。「不合理性は感情的で、知識を必要としない。だから、より多くの人々に多くのことを説明でき、受け入れられやすい。」と説明されていますが、確かにインターネットでの炎上などの感情的なバッシングを見ていると、なんとも考えさせられるところです。
 まぁ、まずは自分がフラット化する世界に飲み込まれないように、自分をトーマス・フリードマンいうところの「無敵の民」にするにはどうすれば良いのかをしっかり考えなければいけないのでしょうが・・・
【読書メモ】
■フラットな世界で個人として栄えるには、自分を無敵の民にする
無敵の民:自分の仕事がアウトソーシング、デジタル化、オートメーション化されることがない人
 
■無敵の民の3分類
・「かけがえのない、もしくは特化した」人々
 自分たちの商品やサービスのグローバル市場を持ち、グローバルな報酬を自分たちで支配できる。
・「地元に密着」して「錨を下ろしている」人々
 労働の知識や技術の程度に関係なく、こうした人々の賃金は、地元の需要と供給によって決まる。
・「旧ミドルクラス」
 以前は、代替不可能とみなされていたが、いまでは代替可能で、外国とのやり取りも可能。
→旧ミドルクラスの仕事がオートメーション化されると、先進国の安定がゆらぐ?
■新ミドルクラスに必要な人材
・偉大な共同作業者・まとめ役
・偉大な合成役
・偉大な説明役
・偉大な梃入れ役
・偉大な適応者
・グリーン・ピープル
・偉大なパーソナライザー
・偉大なローカライザー
■新ミドルの道を模索する人々に重要な四つのポイント
・学ぶ方法を学ぶ
・IQ(知能指数)よりもCQ(好奇心指数)とPQ(熱意指数)
・人を好きにならなければならない
・右脳を進化させる
■この時代に活躍するには、十分に発達したハイテク能力を「ハイ・コンセプト」と「ハイ・タッチ」の素質で補わなければならない。
 ハイ・コンセプト:美を作り出し、好機を察知し、話をまとめ、世界が気づいていなかった発明をする能力
 ハイ・タッチ:気持ちを察し、人間を理解し、個性を喜び、凡庸を脱して、目的や意義を追求する能力
■フラット化時代の富は、3つの事柄を手に入れる国に転がり込む
1.フラットな世界のプラットフォームに迅速に接続できるインフラ
2.国民がイノベーションを行って付加価値の高い労働ができるような教育プログラムと知識スキル
3.適切なガバナンスによって、フラットな世界の流れを勢いづけ、なおかつ管理すること
■フラット主義の5つの行動領域
・政治的リーダーシップ
・「雇用される能力」の強化
・フラット化への反動に対する緩衝材
・グローバル企業を通じた社会改革運動
・家庭における子育て
■雇用される能力
 企業が雇用を保証するのではなく、社員自身が「自分には雇用されるだけの能力がある」ことを証明しなければならない。
 従来は、終身雇用は個人ではなく会社の責任だったが、「雇用される能力」のモデルに移行すると、共通の責任になる。
■フラット化する世界の企業ためのルール
1・内面を掘り起こせ、壁を築こうとするな
2・小は大を演じるべし、共同作業の新しいツールを速やかに利用する
3・大は小を演じるべし、顧客が大物ぶるように仕向け、自分は小物として振舞う
4・フラットな世界では、多くの事業が企業内・企業間の共同作業によって行われるようになる
5・フラットな世界では、定期的にX線検査を受け、結果を顧客に売り込むことで、健康体を維持する
6・優良企業は、縮小するためではなく、勝つためにアウトソーシングする。
7・アウトソーシングは理想主義者のものでもある。
■新テクノロジーを、すべての人間が自分や国家や人類全体に有益なように使うという保証は無い。
■アルカイダは、インフォシスがグローバルな共同作業に使っているのと同じツールを、製品や利益を生み出すのではなく、暴力や殺人を生み出すために使用している。
■インターネットは、合理性よりも不合理性を多く伝える傾向がある
 「なぜなら、不合理性は感情的で、知識を必要としない。だから、より多くの人々に多くのことを説明でき、受け入れられやすい。」(政治学者ヤアロン・エズラヒ)
■いまほどイマジネーションが大切である時代はない
・共同作業のさまざまなツールが、誰にでも手に入るコモディティになっている
・イマジネーションはコモディティ化されない
■「一つの好事例は1000の理論に匹敵する」(IMF元副専務理事スタンレー・フィッシャー)
 

フラット化する世界(下) フラット化する世界(下)
トーマス・フリードマン 伏見 威蕃


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