「パラダイス鎖国」は、Tech Mom from Silicon Valleyの海部美知さんが書いた新書です。
出版記念イベントの記事は書いたんですが、献本頂いた本のメモを公開していなかったので、遅ればせながら書いておきます。
個人的にも、今のインターネットによる日本社会の変化を、明治維新のアナロジーで考えることが多いので、パラダイス鎖国という表現は非常にしっくりくるところがあります。
もちろん、その発想はこれから明治維新的な変化が来てほしいという期待に影響されているところも大きいので、それが良いかどうかはまだ良くわかりませんが、現在の日本が海部さんの表現するパラダイス鎖国な状況になっているのは、特にIT系の産業を見れば明らかでしょう。
言語の壁で守られているソフトウェアやウェブサービスはもちろん、携帯電話やデジタル家電、PCなんかも最近はどんどん国内向けと、海外の認識のギャップが広がっている印象があります。
そんな中、個人的にこの本を読んで最も印象に残ったのは、「厳しいぬるま湯環境を人のつながりを中心として、バーチャルに作る」というくだり。
東京は距離も近いので、シリコンバレー的な理想郷を作るというのは物理的に難しいと思うのですが、海部さんが提言しているように、バーチャルにプチ変人を支援するコミュニティを構成するというのは、結構地味に効きそうな気がしました。
今年は、AMNとかブログとかで、そういう模索もしていきたいなーと思います。
何故、日本は変化をなかなかしないのか?と悩んでいる人は是非読んで下さい。
お勧めです。
【読書メモ】
■「普通の人が、ネットを使って力を集積して、何かを少しだけ動かす」という私の小さな実験でもある。
■ここ数年、アメリカのメディアにおける日本のイメージは大きく変わった。
「日本人」と「アニメ・マンガ」が強く結びつき、可愛いぴかちゅーのキャラクターが、コワモテのモーレツ・サラリーマンに代わって日本人の顔となった。
■パラダイス鎖国に至る現実のストーリー
・日本はかつて、輸出大国であった
・日本の企業が海外で競争力を失ってしまった
・内需主導型になって国内ばかり重視し、産業構造が大きく変わった
・日本は海外で無視されるようになっている
・日本はすっかり豊かになり、暮らしやすくなった
・日本人は、海外にあまり興味を持たなくなってしまった
・なんとなく閉塞感がある
■果てしなき生産性向上戦略2.0か試行錯誤戦略か
■アメリカは「パラダイス鎖国」の先輩
■厳しいぬるま湯環境を人のつながりを中心として、バーチャルに作る
なんらかの指向性を持ったコミュニティを作り、そこに社会的に影響力や資金を持っている個人や企業がパトロンとして参加して、「黒船」になりたい人がその庇護を受けながらアクションを起こす。
周囲の人はそれをおもしろがり、賛同し、ネットで援護射撃し、商売に役立つならばその製品を使い、既存勢力から攻撃されれば団結して防衛する。
■欠点も多いが優れた異才があるというプチ変人を育てようと思ったら、減点主義ではうまくいかない。
■日本のベンチャーが苦労するのが、日々の事業運営のコアとなる中堅社員の確保である。
■日本では、企業が買収されるというと「負けた」という印象があるが、ベンチャーにとっては大企業に買収されるのは、「現金化」のためのひとつの選択肢である。
■ある分野に特化した知識やスキルを持った人材や、「創造的出会い」を引き起こすプチ変人を、経営の中枢に近い部分、あるいは新事業や海外進出などの重要な分野において、一定期間だけ雇うというやり方が、日本でももっと普及してほしい。
【目次】
はじめに
第1章 「パラダイス鎖国」の衝撃
第2章 閉じていく日本
第3章 日本の選択肢
第4章日本人と「パラダイス鎖国」
あとがき
解説 梅田望夫
パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本 (アスキー新書 54) | |
海部 美知
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