未来地球からのメールは、PC Forum等で有名なエスター・ダイソンの書籍です。
「PC Forum」、30年の歴史に幕というニュースがあったこともあり、あらためて読んでみました。
この未来地球からのメール、原題はRelease2.0。
今のWeb2.0にはじまる2.0ブーム(?)に疲れた人からすると、またかよと思うタイトルかもしれませんが、この書籍が出版されたのは実は1998年。
もはやインターネットの世界では古典の部類に属する書籍です。
いまさらながらに1998年の本を読んでも、大筋の部分で実はそれほど大きなブレがないのには、あらためて感銘を受けます。
特に個人的に印象に残ったのは「人々がインターネット上の機密性に関してより安心感を抱くようになるにつれ、自分の発言が記録され、再生されることにも慣れてくる」というくだり。
「30年前、海辺以外で女性がおヘソを露出するのは、とんでもないことだった。」という例を出していたのには笑ってしまいましたが、冷静に考えると確かにそうです。
なんだかんだ言ってこの10年で、私たちのネットに対する姿勢は大きく変化してきています。
いつの間にやら私達はmixiやブログで自分の思いを露出し、GmailやGoogleカレンダーのようなオンラインサービスに重要なデータを依存する人が増えてきています。
今の人々の思考回路や常識を前提にしたサービスを作るよりも、少し先の思考回路や常識の変化を予測してサービスを作っていく事が大事なんだろうなーと改めて考えさせられました。
インターネットの根本的な魅力や、可能性についてあらためて考えたい方にお勧めの本です。
【読書メモ】
■インターネット上で起こるすべての問題は、人間が人間であるがゆえに起こる
■インターネットがもたらす最大の衝撃は、力の分散であり、集中排除。
■社員を子供のように扱う雇用主は、子供のように扱われなければならないような社員を集めてしまう。
■事実の教育とコミュニティの教育
・事実の教育は、形式的な知識教育
・コミュニティの教育は、何が正しく、何が間違っているかという教育
■知的財産の相対的価値は変化していく
コピーの供給の増大+固定した需要=価格の下落
■関心経済
商業的価値の源泉が、関心を消費するコンテンツから、人々の関心そのものに。
■コンテンツビジネスを行う上での二つのモデル
・創作過程:購読からコンサルティングまで含むサービスの流れによって決まる
・他人の頭脳に知的資本を作り出す:コンテンツを人々の関心を集めるために使用する。
■ビジネスのアプローチの例
・定期購読
・パフォーマンス
・知的サービス
・電子知的サービス
・メンバーシップ・サービス
・オフライン会議
・製品サポート
・派生商品
・広告
・スポンサーシップ
・複製販売
■二種類の個人情報
・あなたが誰かと1対1のやりとりを行う際に発生する情報
・あなたが「人前で」何かを行う際に発生する情報
■人々がインターネット上の機密性に関してより安心感を抱くようになるにつれ、自分の発言が記録され、再生されることにも慣れてくる
・30年前、海辺以外で女性がおヘソを露出するのは、とんでもないことだった。
■なぜ匿名性が時には、最良でないか
・匿名性が過剰になってしまう場合がある
・どんな善良な人でも、匿名の状況では「さほど善良ではなく」なってしまう
・悪い人たちは、匿名性を利用することで、咎められることなく、真に害のある行動をすることができる
■プライバシーの侵害と匿名性
・(脅迫的なメールは)私が自分で行った取引の結果、得たもの。
■インターネットでは、あなたが日々暮らしている中で取る選択肢や行動が、ネットワーク上であなたの周囲にいる人々の生活構造に衝撃をもたらす可能性を持っています。
情報の公開とセキュリティに関してあなたが取った選択肢は、他の人にも同様の選択を求めることによって、信頼と公開性に満ちた空気を育んでいくのです。
■あなたに要求されていることはただ一つ、インターネットが持つ力を利用すること。
・インターネットは何か特定の目的のために使用すべき道具。
・インターネットが提示してくれる最大の機会は、選択という次元を超えて、想像の可能性をあたえてくれること。
未来地球からのメール―21世紀のデジタル社会を生き抜く新常識 エスター ダイソン Esther Dyson 吉岡 正晴 by G-Tools |