TechCrunch Japanese アーカイブ » PayPerPost、正しいことをするを読んで。
先日の米国のFTCの規制検討を受けて、TechCrunchに米国のやらせブログの代表事業者として扱われてしまっているPayPerPostは「ブロガーは記事内に「支払いを受けている」ことを公開すること」を義務付けることにしたようです。
その対応についても相変わらずTechCrunchは手厳しい反応を見せていますが、なんにしてもこのあたりのステルスマーケティングと取られる手法について、米国事業者は今後より慎重な事業展開を迫られることになりそうです。
これによって、今後、日本の同様のビジネスモデルの事業者がどうするのかも気になるところですが。
ただ、個人的にもっと気になっているのは、そもそもこういった規制以前に、ステルスマーケティングにはどれぐらい効果があるのだろうかという点です。
ネットによって我々消費者の商品情報、クチコミ情報を入手する手段が大幅に増えたため、いわゆるテレビや新聞・雑誌のようなマス広告が効かなくなってきているというのは良く言われる話です。
そこで、今企業側が直面しているのが、マス広告に頼るだけではなく、クチコミが発生するようなプロモーションも仕掛けていかなければいけないという事業環境。
ただ、そんな簡単にクチコミを発生させることは難しいので、ビジネスとして生まれてしまったのが、マス広告の際の手法をクチコミにそのまま置き換えて、無理矢理クチコミの振りをした情報を大量発生させようという、やらせブログなどのステルスマーケティング。
要はお金でクチコミを買っているように見えるわけですが。
広告主からしたら、支払った単価分確実にブログに記事が掲載されますから、わかりやすい広告手法なのでしょう。
ただ、じゃあそのステルスマーケティングによって、クチコミが本当に広がっているのかと言われると、どうもそれは怪しいのではないかという気がしています。
たしかに、やらせブログの記事によって、製品を買う人は確実にいるでしょう。
でもその実際の製品が、やらせブログの記事の内容とかけ離れた製品であれば、結局その製品を買った人からはその製品に対してポジティブなクチコミは発生しません。
それより、「だまされた」というネガティブなクチコミが発生するはずです。
本当のクチコミの広がりというのは、製品自体に自然とクチコミが発生するような要素があるから、広がっていくわけで。
そこに無理矢理お金を投下して、偽のポジティブなクチコミを発生させても、結局すぐにサイクルがとまってしまうように思います。
もしくは、下手にステルスマーケティングが成功して、多くの人が「騙されて」その製品を買った場合、実は、より製品に対するネガティブなクチコミが広がりやすい土壌を生成することになるはずです。
以前化粧品の話で、特定の世代向けの製品をテレビコマーシャルでマスに対して宣伝したことにより、ターゲット外の顧客がその製品を自分向けと勘違いして買ってしまい、悪い評判やクレームが多くなったという例を聞いたことがありますが、ステルスマーケティングでターゲット外の顧客に製品を購入させればさらに大きなリスクを抱えることになるはずです。
まぁ、短期的に目の前の製品をうりさばくには、確かにステルスマーケティングは魅力的なのかもしれませんが、そんなことをやっていたら長期的には結局顧客の評判を下げてしまうわけで。
おまけに、ステルスマーケティングには炎上のリスクもあれば、今回のFTCのように法の規制を受けるリスクもあります。
なにしろ集団の目による監視は、ある意味警察以上。
ウォークマンブログやPSPのやらせ動画広告も個人によって暴かれたものでしたが、最近もFuture is mildのともぞーさんが医療広告規制違反を指摘するという出来事があるなど(これはステルスマーケティングが問題なわけではありませんが)、今後も同様の事例はますます増えていきそうな雰囲気です。
そういう意味では、そんなレベルの高い集団監視をかいくぐってまでステルスマーケティングに挑戦するのは、どうにもリスクばかりが目に付く気がするのは私だけでしょうか。
そんな考えを吹っ飛ばすような。ステルスマーケティングの成功事例があるのであれば、ぜひ教えて欲しいです。
NO STYLE広告論 Communication is Passion Part1─CGMクチコミに潜む問題
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