「iPhoneショック」は、Apple関連に非常に強いITジャーナリストとして知られる林 信行さんがiPhoneが業界に与える影響についてまとめた本です。
献本をいただいていたので、遅ればせながら読書メモを書いてみました。
iPhoneについては、日本ではまだサービスが開始されていないこともあり、その端末側の機能やデザインに主な注目が集まっていますが、やはりこの本で語られているように通信業界や携帯電話メーカーに対して与えるインパクトの大きさも忘れてはいけない重要な要素だと思います。
特に個人的に注目しているのは「上納金」と呼ばれる回線収入のレベニューシェアモデル。
ソニーの出井さんが昔、ソニーがどれだけインターネット向けの端末を一生懸命作っても、結局最後はNTTが毎月の利用料という形で儲かることになる、という趣旨の発言をされていたことがあったと思いますが、インターネットの登場により、ソフトウェアがサービス化したのと同様、今後はハードウェアもサービス化することは十分あり得ると思っています。
その課程で当然問題になるのがビジネスモデル。
現在の売り切り型のビジネスモデルだと、メーカーは端末を頻繁に買い換えてもらう必要があり売った後の端末のサービスは全てコストになってしまいます。
これが、回線収入のように毎月のサブスクリプションモデルであれば、顧客は長期的につきあう利用者となり、端末内のソフトウェアのアップデートや利便性の向上などもすべて利用を継続してもらうための積極的なサービス追加となり、これはメーカーと利用者の関係を大きく変える可能性があると思っています。
そのためには、いかに端末メーカーが毎月利用者からお金をもらうモデルになれるか、というのがポイントだと思っていたのですが、アップルはあっさりとiPhoneでこれを達成してしまったわけで、これが今後業界全体にどのような影響を与えるかというのは非常に興味深いところです。
もちろん、日本の携帯業界は米国とは全く構造が異なるわけですが。
iPhoneの登場を、ただのお洒落な一端末が増えた程度に考えている人は、まずは、この本を読んでみることをお勧めします。
【読書メモ】
■AT&Tはパンドラの箱を開けてしまった。
ケータイキャリアとしての収益モデルの制約
・定額制の料金
・アップルへの上納金(ユーザーあたり月12~18ドル)
・コンテンツビジネスの崩壊
■相対思考という罠
大胆なチャレンジをすれば大きな失敗につながるリスクもある。それを恐れるあまり、「先行他社より「少しだけ」よい製品を作る」という作戦に走りがちなのである。
■2001年ジョブズの基調講演
・1970年代 前史時代
・1980年代 生産性ソフト時代
・1990年代 インターネット時代
・2000年代 デジタルライフスタイル時代
■クレームを意識したものづくりが、製品コンセプトを台無しにする
■もし、ソフトウェアについて本当に真剣に考えているなら、ハードも自分で作らなければならない(アラン・ケイ博士)
■最も望ましいインターフェース
「インターフェースはそもそも邪魔なもの。理想は「介在しないこと」だ」(ドン・ノーマン博士)
■ホリスティック・アプローチ
「接点によって製品の見え方のイメージがちぐはぐだと、製品自体が持つブランドイメージもちぐはぐになってしまう」 (アレハンドロ・ロペス氏 元ビーコン社長)
「日本でそうしたちぐはぐなブランド展開が起こりやすいのは、広告代理店主導で広告だけでブランドを作るからだ」(西脇健一氏 ランドー・アソシエイツ)
【目次】
はじめに
第1部 iPhoneの衝撃
第1章 iPhoneでケータイビジネスが変わる
第2章 非常識なケータイ
第2部 アップルはいかにiPhoneを生み出したか
第3章 グランドデザイン
第4章 マイナスのデザイン
第5章 極上なユーザー体験の設計
第6章 アップルのブランド戦略
第7章 ビジネスモデルの創造
第3部 日本メーカーはなぜiPhoneを作れなかったのか
第8章 ケータイメーカーが直面する問題
第9章 魅力的な製品を作る3つの視点
参考文献
おわりに
iPhoneショック ケータイビジネスまで変える驚異のアップル流ものづくり | |
林 信行
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