「リスクの正体!」は、ブログ「H-Yamaguchi.net」でもお馴染みの山口 浩さんの書籍です。
テーマ的にも気になったので購入して読んでいたのですが、読書メモを書けてなかったので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
かなり昔の話ですが、個人的な山口さんの印象を語る上で、忘れられない話があります。
あれはたしか、梅田さんのウェブ進化論出版記念パーティーだったと思うのですが、当時、Googleがウェブ上の有料サービスを買収して無料化を進めていた頃で、個人的に、Googleは創造神というよりも破壊神ではないかという印象を強く抱いていました。
で、このままネットが進化すると、どうみても世界の産業って縮小しませんかねー、みたいな話をしていたら、山口さんにさらりと「でもみんなが年収300万円だけど何でも無料で使えて幸せという未来もあるよね」と言われて、あーそういう見方もできるのか、自分は物事を片側からしか見てなかったなー、と目から鱗が落ちたのが今でも非常に印象に残っています。
この本では、そんな(って解説になっているかどうか分かりませんが)山口さんならではの客観的な視点から、リスクとは何か、今日本社会でリスクや幸せをめぐってどのような変化が起こっているのか、という話を分かりやすく解説してくれています。
個人的には、自分のキャリアの積み方が「プランド・ハプンスタンス」というアプローチだったのかーと、何だか後付で妙に安心してしまったりしていますが。
リスクが気になって、何かと新しいことを始められない、と悩んでいる方には特にお勧めの本だと思います。
【読書メモ】
■一般的なリスクマネジメント理論の分野での「リスク」と、企業財務理論などで使われる「リスク」とは、同じ言葉でも、実質的な意味合いがちがう
・純粋リスク:危険や障害など望ましくない事象を発生させる客観的な確率ないし不確実性
・投機的リスク:証券などの価格の「不確実性」。(証券価格は下落だけでなく上昇もしうる)
■人間がリスクを感じ取る際には、いろいろなバイアスがかかる
・起きた場合の被害が大きいが発生確率が小さいリスクを過大に評価
・起きた場合の被害は比較的小さいが発生確率がより高いリスクを過小に評価
■探求的予測と規範的予測
・探求的予測:「将来どうなるか」という一般的な予測
・規範的予測:「将来どうしたいか」という予測
■リアルオプションとは「意志決定上の柔軟性」
■プランド・ハプンスタンス「計画された偶発性」
偶然性の価値を積極的に認め、それを「利用」していくキャリアデザインのアプローチ。
(これまでのキャリアカウンセリングが自分のキャリアプランを「決める」ことにこだわってきたことへの、一種のアンチテーゼ)
■私たちの社会の工夫できる余地を阻害している要因
・技術的制約
・慣れ親しんだ習慣やらへの執着
・社会的合意の不在
技術的制約は、技術の発達によって解決できる余地があるが、あとの二つは工夫していかなければならない。
■予測市場が行っているのは、情報の発見、集約、および評価の機能
■「希望格差社会」
現在の社会には人が努力しても埋められない格差が生じており、「負け組」に属する人々は希望すら抱くことができなくなる
■希望格差社会とは、自らが「不幸」であることを「発見」した人たちが出てきたということではないか。
■希望の格差が不幸の発見に起因しているのであれば、ひとつの方法は「幸福はひとつではない」という当たり前のことではないか。今度は「幸福」を「発見」するのだ。
■「期待と実態のギャップ」
パラサイト・シングル、ニート、引きこもり、負け犬などの間に共通の要素があると考えているように見える。つまり「実態にそぐわない高い期待」だ。
■「へっちゃらだい!」戦略
「リスクをリスクと感じない」戦略
■今の社会は誰かが幸せであるために、誰かが(相対的に)不幸せでなければならない、という社会なのかもしれない
■「失敗」論
・失敗は、ラッキー
・失敗は、糧になる
・失敗は、人を豊かにする
■「攻める方が、既得権益に安住するよりはるかに低リスク」(トヨタ 奥田会長)
■「応援ファンド」の面白い点
・各プロジェクト自体が、明確な段階的投資の構造を持つこと
・ファンド運営者が、投資家に対し、投資額の40%を最低限のリターンとして保証したこと
・ファンドの募集に際して、運営者が明確に、金銭的リターン以外の「精神的満足」を掲げていたこと
■「情報をおごる」(ほぼ日刊イトイ新聞)
「情報をおごる」タイプの人は、また人から情報をおごられやすいので、結果としてさらにいろいろな情報が集まってくる
■curated consumption (目利き追従型消費) (Trendwaching.com)
何百万人もの消費者がマーサ・スチュワートのような、ライフスタイルや嗜好に関するリーダーに追随しその意見に従うような消費
■parotting (朝日新聞)
メディアの発達によって社会の中に「感情共同体」が出現し、世論が論理でなく感情に大きく左右されるようになる
■情報量が増えすぎて全部を消火できなくなった結果、人々の判断が情緒的なイメージに左右されるようになっている
■コンピュータのネットワークを使うことで、膨大な数の「わたしの意見」のほとんどすべてを処理できるようになった
■少数のヒットとロングテールへの二極化が進む結果生じるのは、中間層の消滅
■「わたしの意見」と「みんなの意見」につなげる道を開いてもくれる
リスクの正体!-賢いリスクとのつきあい方 (木星叢書) 山口浩 バジリコ 2009-01-07 by G-Tools |