新世紀メディア論(小林弘人)

4862381294 「新世紀メディア論」は、インフォバーンの代表としても有名な小林弘人さんの書籍です。
 献本を頂いていたのですが、読書メモを書けてなかったので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 インフォバーンの小林さんと言うと、「ワイアード」の編集長から、「サイゾー」の立ち上げ、眞鍋かをりブログの書籍化や、ギズモードの立ち上げまで、日本のウェブメディアの歴史と共にある人物と言っても過言ではないのではないでしょうか。
 個人的にも、今のような仕事をするようになる前から、その発言や行動に注目してきた人の一人ですが、その小林さんの理念やアイデアがぎっしりと詰まっているのがこの一冊です。
 
 書籍の中では、今の混沌とした時代におけるメディア企業の問題点から、全員が敗者になり得る「マイナスサム・ゲーム」という目を背けたくなるようなシナリオの可能性も指摘されていますが、ただの悲観論や批判本ではなく、その現実に対してどうするべきかということを考え続けてきている小林さんならではの、出版やメディアに対する愛が伝わってくる本と言えると思います。
 AMNでも「グランズウェル」と並んで、必読書になりそうです。
 現在の地殻変動後のメディア像のヒントになるコメントやアイデアが満載ですので、ウェブメディアだけでなく、メディアに携わる人であれば是非読んでおくべき本だと思います。
【読書メモ】
■「誰でもメディア」
 メディアとは、すでに一部の特権的な基盤のうえに成り立つものではない
 「意志」さえあれば、誰でもメディアを持つことができる。
■「出版」は、「Publishing」、つまり公にすると言う行為を指します。
■実は雑誌社が気づいていないのは、信頼に足るはずだった自分たちの媒体が、出稿企業へのご機嫌伺いにより、提灯記事のオンパレードとなり、それをマニアたちに見破られていたりすることです。
■「印刷は死んでいない。印刷というのは、言葉が死にゆく場所である」(ジャービス)
■「雑誌の価値は編集者でも、記事にあるのでもなく、それは雑誌を取り巻くコミュニティ」(ジャービス)
■BOING BOINGはなぜ成功したのか
・開始時期が早かったこと
・書き手のプロだったこと
・パッケージング
(印刷して読んだとしても、読者はそこに価値を見いだすことができる)
■「ブログをつくることでもっとも大切なことは、ほかの人じゃなくて、あなた自身がそれを読むことに興味があるのかだ」(フラウンフェルド)


■メディア人は「万年素人」であることが重要
 ユーザー視点を獲得することで、プロが陥りがちな視野狭窄を乗り越える必要がある
■フローとストック
・ウェブ上では「発信し続けること=存在すること」なので、フローは否が応でも高まっていく運命にある
■電子メディアの収穫逓減
 フローが激化すると、総体的に価値のデフレーションに繋がりかねません
■新規参入者は広告のダンピングや寝ないで働くという無茶をするので、場合によっては「マイナスサム・ゲーム」のような事態が起こりうるかもしれません。
(ゲームに参加している人の利益総和がマイナス。全員の利益が減少するため、全員が敗者になりえる)
■エコー
 ある初出の情報を丸々コピーしたり、ソフト的に引っ張ってきて、それを羅列するだけのもの。
 フローとストックのいずれかに属しますが、フローが高いストックとして、その中間に位置することがあります。
■誰でもエディターのスキルセット
・ウェブ上での人の流れや動きを直感し、情報を整理して提示する編集者としてのスキルを有する
・システムについての理解をもち、なおかつUIやデザインについて明確なビジョンと理解をもつ
・換金化のためのビジネススキーム構築までを立案できる職能者である
■スォーム・セオリー
 ネットにおける人の動きを、複雑系における鳥やカエルなどが集団で行動する際の法則
■クラウドファンディング
 「この記事を取材したい」といった個人が、その取材構想を掲載し、それに対してネット上のユーザーから寄付を募るというものです。
■オープンブック・マネジメント
 一人ずつの編集者が経営者となり、その担当するセクションを統括し、コンセプトと採算に見合ったコンテンツを送り出す努力がいま以上に必要になるでしょう。

4862381294 新世紀メディア論-新聞・雑誌が死ぬ前に
小林弘人
バジリコ 2009-04-03

by G-Tools

“新世紀メディア論(小林弘人)” への2件のフィードバック

  1. [VBall][Media][2009]「メディア未満」と、その可能性

    去年あたりから、ブログで何かを「書く」ことと、そこから何かが波及するのかしないのか、ということを考えているが、ことしはその思索にかなり「踏み込んだ」感じ…

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