「豚組」社長の中村仁さんに学ぶ、ネット時代の企業と顧客の関係作りの可能性

 先週、ONEDARI BOYSの企画で、「豚組やきや」でONEDARI BOYS 3周年記念オフ会を開催させて頂きました。
 今回は先日ご紹介した豚組「しゃぶ庵」に続く、豚組シリーズの3段目にもあたるのですが、今回はONEDARI BOYSだけがごちそうになるのではなく、今回のオフ会用にご用意頂いた特別価格のメニューを読者の方々約40名といっしょに堪能するという特別企画。
 普段のONEDARIとはまたかなり違った雰囲気で開催されました。
ONEDARI BOYS 3周年記念シリーズ第3弾「豚組」で豚を焼く!!
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 当日の雰囲気や、豚組ならではのさすがな焼き肉(焼き豚?)へのこだわりについては、既に他の参加者の皆さんが様々な視点からレポートされているので、是非そちらをご覧いただければと思いますが。
 今回、私は主催者側の一人と言うこともあるので、ちょっと別の視点から感想をメモしておきたいと思います。
 個人的に、今回の一連の豚組×ONEDARI企画で印象に残ったのは、今回のような太っ腹企画に喜んで乗っかってくれた「豚組」を運営する株式会社グレイスの社長である中村仁さんの独特な飲食店経営観。
 先日のレポートでもご紹介したように、飲食店経営者である中村さん自身がTwitterをやっていたり豚組専用のTwitterまで運営されているのが面白いのはもちろんなんですが、どうも、ただの「新しいもの好き」という感じがしないんです。
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 単純に飲食店のオーナーがたまたまネットサービスとか、ガジェット好きで、Twitterにはまってしまった、という話なら話はシンプルなんですが、豚組のTwitterに書かれている細かいうんちくとか、一人一人に丁寧に対応する姿勢とか、ただ者ではない感じがにじみ出ていますし。
 今回のオフ会でも、特別に飲み放題にハイボールを追加してくれたり、オフ会参加者専用の特別クーポンを発行してくれたりと、実にきめ細やかな対応が印象的。
 なんだか、すごい気になる人な訳です。


4766211669 で、先日調べて見つけた豚組社長の中村さんの本を買って読んでみて、いろんな謎が解けました。
 実は中村さん、根っからの飲食店オーナーかと思いきや、もともとは大学卒業後に松下電器産業に入社して、外資系広告代理店に転職、その後に紆余曲折あって飲食店を営むようになるという経歴の持ち主。
 なんでも、最初は特に今のようなビジョンのある飲食店経営をしていたわけではなく、安かろう悪かろうのお店をやっていたのが、ある日書籍のタイトルにあるような逆張りの発想に目覚め、スタンディング・バーや豚組を成功させて、今に至るという歴史があるそうです。(ちょっと短くまとめすぎですが、詳細が気になる方は本を読んで頂くと言うことで。)
 本の中でも、「お客さまは「期待していない、予想すらしていない」ことを店がしてくれたからこそ感動するのです。」という発言があったりするのですが、なるほどこういう苦労した経験があったり、その結果生まれた経営理念だからこそ、Twitterとか新しいツールにも積極的に取り組むし、ONEDARI BOYSの企画のようなマニアックな企画にもチャレンジされたりするんだろうなーと感じます。
豚組社長の中村さん 
 で、今回の本で特に印象に残ったのがこのフレーズ。
「飲食業とは、たった一人の個人が大企業と闘って勝利することのできる、数少ない仕事でもあります。」
 たしかに、いわゆる家電メーカーとか、自動車メーカーとかのようなハードウェアは、基本的に規模の優位性が大きくものを言う世界ですし、最近はウェブサービスのようなネットの世界においても、メインストリームでは規模の大きい会社だけが生き残る世界が見えてきています。
 でも、飲食店って、確かにその店の規模にあったファンを獲得することができていれば、横にどれだけ大規模なチェーン店がやってきても、実は関係なかったりしますよね。
 
 実際、豚組や中村さんはTwitterだけでも、既に400人を超えるファンや友達がいるわけで、こういった絆って、そう簡単に他の企業が奪えるモノではありません。
 そもそも、飲食店って自動車みたいに10年単位で顧客を奪い合うモノでもないですから、そう言う意味でも、いろんな勝ち方がある独特な業界なのかもしれません。
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 でも、更にいろいろ考えてみると、こういった姿勢って、実は飲食店だけでなくて、案外メーカーでも、サービス業でも意外に有効になってきている気がしてきます。
 例えば、人間って友達が勤めているというだけで、その企業の製品を買った方が良いような気がしてしまう生きものですし、実際に自分が使っている製品を作っている人の顔が見えると、より愛着が湧いてしまうことも良くあります。
 中村さんレベルまで個人個人と直接コミュニケーションを取るのはなかなか難しくても、企業ブログで情報発信してくれるだけでもパンフレットでは見えないものが見えてきますし、貝印さんのKAI TOUCH PROJECTみたいに、ブログにコメントしてくれるだけでも印象は大きく変わります。
 マスメディアの時代って、物理的にお客さんと直接会話をするのが不可能という時代だったので、企業と顧客は直接対話しないというのが常識になってしまっているわけですが。
 本来は、全ての商売って会話が基本として成り立っていたわけで、できる限りお客さんとコミュニケーションを取ろうとすること、っていうのは、実は当たり前のことのような気がしてきます。
 せっかく技術が進化して、ある程度効率的にコミュニケーションをこなすことができるようになっているわけですから、できる限り試行錯誤しながらそれにチャレンジしてみるっていうのが、やっぱり大事なのかなぁと。
 そんなことを、この本と、今回の一連の企画での中村さんの対応を拝見していて、いろいろ考えさせられました。
 本を読んでから豚組のお店に行くと、また違ったことがいろいろ見えてくると思いますので、豚組に興味が湧いた方や、すでに豚組のファンになってしまっているという方は、こちらの本も是非どうぞ。
※ついでに読書メモも公開しておきます。
【読書メモ】:右向け左の経営術 (中村仁)
■飲食業とは、たった一人の個人が大企業と闘って勝利することのできる、数少ない仕事でもあります。
■百年後、「老舗」と呼ばれる店を作ろう
■豚組 しゃぶ庵は六本木地区の社食を目指す
■「どんなお客様であろうと、まずは徹底的に頭を下げることからやろう。とにかく僕らは今、お客様を悪く言えるほどの立派な仕事をしてないじゃないか」
■あの失敗と成功を分けた一番のポイントは、価格と価値の違いに気づいたことでしょう。当初、私は価格を下げることばかり考えていました。(中略)しかし、飲食店にとって本当に意味があるのは、ほかの店にはない、その店ならではの価値です。
■立って飲むことを、逆に”楽しさ”というプラス要素として考えれば、立ち飲み屋は魅力的な店になる。立つことこそが、その店になる。(中略)これが、私自身、二回目の「逆張りの発想」を経験した瞬間です。
■”いいお客さま”は、優れた店作りに向けた私たちのこだわりを理解し、その価値を求めてやってきます。(中略)
 つまり、いいお客さまは店を育てるのです。
■「みんなが『いい』と賛成することはたいてい失敗し、みんなから『うまくいくわけがない』と反対されることはなぜか成功する」(イトーヨーカ堂鈴木敏文)
■顧客満足度=料理×インテリア×サービス÷価格
■お客さまは「期待していない、予想すらしていない」ことを店がしてくれたからこそ感動するのです。
■サーバント・リーダー(部下に尽くすリーダー)
 アルバイト一人までもが存分に頑張れるようにする環境を整えるために、リーダーは全力で協力しろということです。
■流行はときに食文化にとってマイナスに作用することがあります。
■「映画を作るたびに、映画を作り始めるたびに、途中でくじけそうに思う」(スティーブン・スピルバーグ)
■「勇気とは、死ぬほど恐れていながらも、とにかく馬にまたがることだ」(ジョン・ウェイン)

4766211669 右向け左の経営術―常識と戦え!
中村 仁
グラフ社 2008-07

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“「豚組」社長の中村仁さんに学ぶ、ネット時代の企業と顧客の関係作りの可能性” への3件のフィードバック

  1. ONEDARI BOYS 3周年記念オフ会に参加して来ました。。 

    先日の 6月18日(木) 19:30〜
    東京都港区西麻布にある 豚組やきや にて開催された
    ONEDARI BOYS 3周年記念オフ会 に参加…

  2. Twitterを活用している飲食店のアカウントまとめ(随時更新)

    Twitterにかまけてブログ更新してないのでかなり久々なわけですが、その久々な更新もまたTwitterが理由だったりします。■更新履歴最終更新日:201…

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