「ロングテール」は、いまさら説明の必要は無いと思いますが、Web2.0の代表的な概念として有名になったクリス・アンダーソンの書籍です。
気になったので今更ながら買って読んでみたのですが、読書メモを書けてなかったので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
「ロングテール」というキーワードはWeb2.0という言葉同様バズワードとなってしまいましたが。
あらためてこの本を読んでみると、このクリス・アンダーソンが指摘しているロングテールという概念とその周辺で発生する変化事態には、まだまだ学ぶところが多いように思います。
ロングテールという言葉が流行って、表面的にキーワードを理解した人が、ロングテールだけをターゲットにしたビジネスを展開したりしていましたが、クリス・アンダーソン自身がこの本ですでに「ヘッドとテールの商品の両方提供するのが大事なポイント」と指摘していたりするのが、個人的にはとても印象的でした。
Web2.0ブームの頃に、なんとなくロングテールを理解したつもりになってしまったような方に、是非改めて読んでみることをお勧めしたい本です。
【読書メモ】
■テレビ番組がいまより70年代で人気があったのは、そっちの方がいい作品だったからじゃなく、画面に映る作品が他にほとんどなかったからだ。
■98パーセントの法則(ヴァンアディペ)
1万枚のアルバムのうち、三ヶ月に少なくとも1曲は売れるアルバムの%
ニッチ音楽の市場全体が巨大で、事実上限界がない
■3つの追い風
・生産手段の民主化 → ロングテールの生産者、手段の製造者
・流通手段の民主化 → ロングテールのアグリゲータ
・需要と供給の一致 → ロングテールのフィルタ
■プロアマ共同時代の到来(デモス)
天文学はかつて”巨大科学”として研究所でおこなわれるものだったが、いまやプロとアマチュアの共同作業でもある。
■大量「消費主義」から参加型「生産主義」への移行(ドク・シールズ)
■ヘッドとテールの違い
・ヘッドでは営利が優先される。高くつくが影響力は強い大衆市場の流通媒体によって、商品から利益が生まれる。そこはプロの領域だ。
・テールでは、生産と流通のコストが低く抑えられ、利益はしばしば二の次とされる。創造の目的は自己実現、楽しみ、実験などさまざまだ。
■無限の選択肢への三段階
・物理的小売業:物理的な店舗の利益範囲(タワーレコードなど)
・ハイブリッド小売業:諸経費がいらない小売業の利益の範囲(アマゾンなど)
・デジタル小売業:物理的商品がない小売業者の利益の範囲(ラプソディなど)
■ロングテールを機能させるためにフィルタがなぜこれほど大事なのかというと、フィルタがなければロングテールはただの「雑音」になる危険性があるからだ
■多くの人たちにとって最高の商品はテールにある
本来ニッチ商品はすべての人のものではないのである
■プレフィルタとポストフィルタ
・プレフィルタ:市場にたどり着く前に商品をふるいにかける「予測」
・ポストフィルタ:特定の分野の中でいちばんいいものを見つけていく
■80対20の法則の間違った理解
・正確には、80対20にならない場合がほとんど(たいてい80対10未満)
・80と20はそれぞれ商品数と売上という別のものの割合なので、合わせて100になる必要は無い
・この法則がさまざまな現象に対して使われる
■80対20の法則は有効だが、ロングテール市場では変貌する
・ずっと数多くの商品を提供できる
・商品を見つけるのが容易なので、ヒットとニッチの売上の差が縮まる
・ニッチはヒットと同じくらい経済効率が良いので、ランキングが低くても利益を見込める
■「ニーズ市場」と「ウォンツ市場」
・ニーズ市場:消費者があらかじめ探している商品があり、インターネットなど特定の場でなければそれをみつけられないような市場
・ウォンツ市場:需要が増えれば増えるほど価格が上がる
■ヘッドとテールの商品の両方提供するのが大事なポイント
もしヘッドの商品しか置かないと、顧客が別のものをほしがっても提供できない。いっぽうテールの商品しかないと、顧客がどこから見ていけばいいか分からなくなる
■物事を白か黒かはっきりさせたがるのは人の常だ。でももちろん世界はもっと曖昧で混乱に満ち、偶然に左右される。商品も同じで、大半がヒット作でも失敗作でもない。
■視聴者や読者は、常に一般的な興味と専門的な興味の両方を持ち、一人一人が違う形でそれを混在させている。(中略)約30年前まで、普通のアメリカ人は自分だけの専門的関心事に合わせてくれるようなメディアに触れたことがなかった。
■要するに、僕たちは大衆文化から巨大な並列文化へ移り変わる場面に遭遇しているのだ。
■ロングテールのアグリゲータとして成功するための9つの法則
・在庫は外注かデジタルに
・顧客に仕事をしてもらう
・流通経路を広げる
・消費形態を増やす
・価格を変動させる
・情報を公開する
・どんな商品も切り捨てない
・市場を観測する
・無料提供をおこなう
ロングテール―「売れない商品」を宝の山に変える新戦略 Chris Anderson 早川書房 2006-09 by G-Tools |
ロングテール (クリス・アンダーソン)