100年予測 (ジョージ・フリードマン)

415209074X 「100年予測」は、「影のCIA」と呼ばれるストラトフォーという会社のCEOジョージ・フリードマンが書いた未来予測の書籍です。
 橋本さんのブログの書評で気になったので、買って読んでみました。書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 この本では、地政学の視点からこれから100年間の予測をされています。
 日本に関する予測も多数含まれ正直今の時点では想像しづらい予測も多いのですが、非常に論理的で説得力がある主張が多く、刺激になる指摘が多々あります。
 ちょっと視点をひいてこの世界の未来を考えてみたい方には、参考になる点が多々ある本だと思います。
【読書メモ】
■アメリカへの次なる挑戦者は、ロシアではなく中国だという予測も多い。この見解には、三つの理由から同意しかねる。
・中国が実は物理的に著しく孤立した国であること
・中国は何世紀も前から主要な海軍国ではない
・中国は本質的に不安定
■地政学は二つの前提の上に成り立っている
・人間は家族よりも大きな単位を組織するが、その過程で必ず政治に携わる。また人間は自分の生まれついた環境、つまり周囲の人々や土地に対して、自然な忠誠心を持っている。
・地政学は国家の性格や国家間の関係が、地理に大きく左右されると想定する。
■アメリカ海軍が世界中のすべての海洋を支配しているということ
 これは人類史上初めての出来事である。
■アメリカの支配はまだ始まったばかりであり、21世紀はアメリカの世紀になる


■アメリカの五つの地政学的目標
・アメリカ陸軍が北米を完全に支配すること
・アメリカを脅かす強国を西半球に存在させないこと
・侵略の可能性を排除するため、アメリカへの海上接近経路を海軍が完全に支配すること
・アメリカの物理的安全と国際貿易体制の支配を確保するため、全海洋を支配すること
・いかなる国にもアメリカのグローバルな海軍力に挑ませないこと
■産業の高度化とともに、子供の経済的価値は低下した。子供は経済的に役立つ存在でいるために、学校に行って学ばなくてはならなくなった。子供は家族の所得を増やすどころか、金食い虫になった。
■人口爆発は終焉し、世界の人口構造は大きく変化する
■欧米では高い金利が経済に規律を課し、脆弱な企業を淘汰した。これに対し日本の銀行は、人為的低金利で友好企業に融資を行った。日本には本当の意味での市場は存在しなかった。
■中国は、いわばステロイド漬けの日本である。(中略)どちらの国の経済も、輸出依存度がきわめて高く、驚くほど高い成長率を誇り、成長率がわずかでも鈍化すれば破綻の危機にさらされる。
■人口問題の重圧にさらされながらも、大規模な移民を受け入れることができない日本のような国は、問題の解決策を中国に求めるようになる。
■ロシアは1917年に崩壊し、1991年に再び崩壊した。そしてこの国の軍隊は、2020年を少し過ぎた頃に、いまひとたび崩壊するのである。
■(アメリカの)21世紀最初の危機まで10年少しに迫った今、三つの嵐が近づいている。
・人口動態上の変化:2010年代末になると、第一次ベビーブーム世代が70歳代にさしかかり、生活費を捻出するために株式を現金化し、持ち家を売却し始める
・エネルギー:近年の石油価格の高騰は、炭化水素依存型経済の終焉を告げる、最初の前兆かもしれない
・最新世代の技術革新による生産性向上がピークを迎えている。
■次の危機は労働力不足で、2028年、または2032年の大統領選挙で頂点に達する。アメリカは移民の受け入れ拡大政策で問題の解決に当たるだろう。
■日本には、経済政策や政治方針を大きく転換しても、国内の安定が損なわれないという特質がある。(中略)日本が大きな社会変革を経ても基本的価値観を失わずにいられるのは、文化の連続性と社会的規律を併せ持つからである。
■日本は地理的に隔離されているため、国家の分裂を招くような社会的、文化的影響力から守られている。その上日本には、実力本位で登用された有能なエリート支配層があり、その支配層に進んで従おうとする、非常に統制のとれた国民がいる。
■2050年代の戦争では、宇宙を制するものが地上も制する。宇宙偵察システムによる情報収集と宇宙発電システムがそのカギである
■2060年代、宇宙の商業利用を進めるアメリカは、黄金時代を迎える

415209074X 100年予測―世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図
櫻井 祐子
早川書房 2009-10-09

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