「電子書籍の衝撃」は、「グーグル – Google 既存のビジネスを破壊する」や「フラット革命」で有名な佐々木俊尚さんの書籍です。
献本を頂いていたのですが、読書メモを書けてなかったので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
この本では、これから出版業界が迎えるであろうビジネスモデルの変化について、音楽業界の変化を元に佐々木俊尚さんならではの視点で考察がされています。
当然、メインの読者ターゲットは既存の出版業界の方々だと思いますが、その方々には必読書としてもネットを活用したメディア事業に携わる方々にも参考になる点が多々ある本だと思います。
【読書メモ】
■音楽に学べ
・電子ブックを読むのに適した機器が普及してくること
・本を購入し、読むための最適化されたプラットフォームが出現してくること
・有名作家かアマチュアかという属性が剥ぎ取られ、本がフラット化していくこと
・電子ブックと読者が素晴らしい出会いの機会をもたらす新しいマッチングモデルが構築されてくること
■プラットフォームとして市場を支配するための要件
・多様なコンテンツが安く豊富に揃っていること
・使い勝手が良いこと
・アンビエントであること
■日本の本の流通システムが硬直化してしまっている
日本では、多くの場合、本は出版社から取次に卸され、取次が全国の書店に配本しています。取次が流通のプラットフォームとして確立しているわけです。
■アマゾンDTPの特徴
・費用を請求されないこと
売れた分から手数料を差し引かれるだけ
・プロの書き手のプラットフォームにもなる
他のブックとフラットに表示される
■音楽の自主制作と言う方向性の高まり
九〇年代の音楽ビジネスではレーベルから援助金と言うお金が事務所に支払われていた
しかしゼロ年代以降、音楽CDの売上が減少する中でこの援助金は支払われなくなっていきます。この結果、アーティストたちは音楽CDの印税と、あとはライブコンサートの売上だけで食べていかなければならなくなりました。
(音楽CDの大半はせいぜい1万枚ぐらいしか売れず、2800円の音楽CDだとすればアーティストに入ってくる印税は84万円。4人のグループなら一人21万円)
■セルフパブリッシングの時代の出版社
・書き手との360度契約
・スモールビジネス化
■フォーチュン誌によると、音楽ビジネスでの360度契約における手数料は売上の10%程度
■本が売れなくなっているのは何故か
若者の文字離れが原因でもなければ、本というコンテンツそのものの問題でもなく、徹底的に流通構造の問題出る
本というコンテンツを流通させるプラットフォームが、いまの日本では恐ろしいほどに劣化してしまっているから、本は売れなくなってしまっている。
■本のプラットフォームの劣化の要因
・本を雑誌と同じようにマス的なやり方で流通させてしまったこと
・書店が本を出版社から書いとるのではなく、預かる「委託制」というしくみを導入してしまったこと
■円本ブームと文庫ブームによって、本を雑誌ルートに乗せるという方法が確立し、本の流通の世界は一気に変わりました。大量生産・大量販売が当たり前になったのです。
■本のニセ金化
本の出版点数は80年代と比べると三倍近くにまで増えている
出版社は返本分の返金を相殺するためだけに、本を紙幣替わりにして刷りまくるという悪循環に陥っていく
■「呉服の問屋は、生地や柄に明るいが、取次店は本に暗い。売れなければ返せばすむ商品なら明るくなるまでもない。書名と著者の名と版元の名を見て、つまりカバーだけを見て、配本するかしないか。するなら何千部か会議で決めるという。」(山本夏彦 1967年)
■文脈棚
食品関連の事件が話題になっている時は、食品衛生法の本を並べ、そしてその周囲にはその食品の歴史をひもといた本など関連本を次々と並べる(安藤哲也)
■タレントやランキングのようなマスモデルに基づいた情報流路から、ソーシャルメディアが生み出すマイクロインフルエンサーとフォロワーの関係へ
■ソーシャルメディアに向かって開かれたケータイ小説と言う装置は、書き手の側も、読み手の側も、自分たちがひとつの「空間」を共有していると信じ、その「空間」に寄り添うかたちで小説を新たな形へと展開させていくことを実現している
■電子ブックの円環
・キンドルやiPadのような電子ブックを購読するのにふさわしいタブレット
・これらのタブレット上で本を購入し、読むためのプラットフォーム
・電子ブックプラットフォームの確立が促すセルフパブリッシングと、本のフラット化
・そしてコンテキストを介して、本と読者が織りなす新しいマッチングの世界
電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書) ディスカヴァー・トゥエンティワン 2010-04-15 by G-Tools |