「ニコニコ動画が未来を作る」は、「グーグル – Google 既存のビジネスを破壊する」や「フラット革命」で有名な佐々木俊尚さんの書籍です。。
献本を頂いていたのですが、読書メモを書けてなかったので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
タイトルを見ると、ニコニコ動画だけの歴史を書いている本のように見えますが、実はこの本は副題の「ドワンゴ物語」に見られるように、ニコニコ動画を作り上げたドワンゴとその周辺にいる人たちの壮大な歴史書です。
フリーソフト集団のBio_100%やDOS/Vブーム、輸入ゲームなど、実は様々な人たちの人間関係や歴史が、現在のニコニコ動画を作り上げる背景となったというのがこの本を読むと見えてきて、実に興味深いです。
ニコニコ動画を偶然や幸運が作り上げたヒットだと勘違いされている方には、非常に刺激になる話が満載の本だと思います。
【読書メモ】
■当初のドワンゴの骨格
・Bio_100%を引っ張ってきた森栄樹。そして戀塚昭彦や清水亮。森が連れてきた天才プログラマーたち。
・DOS/Vブームの仕掛け人だった川上量生
・Laser5で輸入ゲームの文化を作り出した太田豊紀
■清水と永松は争うようにして1台しかないiモード機を取り合った。わずか1日で清水は野球ゲームを作り、永松はコメのキャラクターを育てる変な育成ゲームを作り上げた。
ところが翌日になって、前日使ったパケット代を調べてみると、なんと5万円もかかっている。
(中略)
そうしたら森は気に留めるまでもなく、こういった。「じゃあドコモさんに払ってもらうか」
■「芸能界はギャラの値段なんてあってないようなもので、基本的には言い値の世界です。だからといってお金で解決しようと高い金額を提示してしまうと、今後はそれが基準になってしまい、たいへんなことになってしまいます。だから最初はなるべく安い値段で済むように交渉しなければなりません」(天下井隆二)
■「『これだけやれば、このぐらい儲かる』というのと、『これだけ儲かるから、やりましょう』というのは同じ意味だけど、ニュアンスが違うんです。芸能界はカネの話をしないのがルールで、儲からないのが分っていてもプロモーションになるんだったら出演するとか、そういうのが普通だし、逆に『カネの話になるんなら、もう出ないよ』と受け止めちゃうんです」(天下井隆二)
■50%を受け入れようとしない着メロ業界に業を煮やし、メジャーレーベルは結束して反攻に打って出た。共同で設立していた着うた配信サービス「レコチョク」に着うたフルを一本化し、レコチョク以外にはいっさい著作権使用を認めないという姿勢を打ち出したのである
■ケータイコンテンツバブルの寿命は予想以上に短かった。2003年ぐらいからその崩壊は始まり、(中略)ケータイコンテンツバブルは2005年、最後のとどめを刺された。
■ニコニコ動画第三のプロトタイプ完成
「そのままパブリックリリースしたらいいんじゃないですか?」
えっと驚くみんなに、ひろゆきが説明した。「ネットのサービスは不完全なままリリースして、その後少しずつ直していけばいい。そうするとユーザーも「オレが協力して直した」と錯覚しちゃうから、さらに強固なファンがつく」(ひろゆき)
■「会員数は1000万人くらいで止まるんじゃないかな。2ちゃんねるもそうだったけど、ネット上でひまつぶしをする人の数にはその辺りに壁がある」(ひろゆき)
■FC琉球のサッカー中継
「ニコニコ動画で放送したからといって、地上波のテレビの視聴率が落ちることはありません。コアなファンはすべてを楽しみ尽くしたいから、地上波でじっくり楽しんで、さらにニコニコ動画で書き込みもして、さらにそのコメントにひろゆきが突っ込みも入れてくれるとなってくると、楽しみは増幅していくんですよ」(榊原)
■いまの著作権法では、コンテンツの作り手の側と受け手の側が明確に二分されていて、受けてから支払われたお金をきちんと送り手に支払うというのが、当たり前のモデルになっている。
しかしニコニコ動画の作曲者や動画の作り手、さらにはMAD制作者は、そもそも作り手と受け手が明確に線引きされていないじゃないか。
■そもそも今の著作権システムそのものが「作詞・作曲という特別なスキルを持っている人は少数である」「その特別な少数のクリエイターの地位と財産を守る」という考えの上に成り立っている。
ニコニコ動画が未来をつくる ドワンゴ物語 (アスキー新書) アスキー・メディアワークス 2009-10-09 by G-Tools |