「キュレーションの時代」は、「グーグル – Google 既存のビジネスを破壊する」や「電子書籍の衝撃」で有名な佐々木俊尚さんがキュレーションについて考察している書籍です。
献本を頂いたので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
この本では最近ネット業界で話題になることの多い「キュレーション」というキーワードについてかなり深い考察をされています。
キュレーションというキーワードは、現在の所人によって理解がかなりぶれているのが現状だと思いますが、この本を読むと米国でキュレーションというキーワードが注目されている理由がかなり俯瞰的に理解できるのではないかと思います。
今後のネットのトレンドについてヒントが欲しい方には、参考になる点が多い本だと思います。
【読書メモ】
■つくる人と見いだす人の新しい関係
「わたしが描いた絵に価値があるなんて、まったく想像もしてなかったよ」(ヨアキム)
彼の作品がアートとして認められるようになったのは、カフェオーナーのジョン・ホップグッドが偶然彼の家の前を通りがかって彼の絵を見いだしたからでした。
■情報の流れの究極の課題
ある情報を求める人が、いったどの場所に存在しているのか
そこにどうやって情報を放り込むのか
そして、その情報にどうやって感銘を受けてもらうのか
■ビオトープ(生息空間)
情報を求める人が存在している場所
■「大きなビジネスにならない」
と広告業界人やマスメディア業界人が不満を持つのは勝手ですが、もう大きなビジネスなど存在しないのが、21世紀の情報流通の真実なのです。
■無理矢理タレントを公開記念イベントに呼び、それをマスメディアに取り上げてもらうことは、本当に宣伝効果は期待できるのでしょうか?
■アンビエント化
私たちが触れる動画や音楽、書籍などのコンテンツがすべてオープンに流動化し、いつでもどこでも手に入るような形であたり一面に漂っている状態。
■HMVの無個性化
「配信や、アマゾンが、閉店の理由でもない。結局は人なんだよ。」(加藤孝朗氏)
■応援消費
商品を買いたいという欲求だけではなく、作り手が持っているポリシーや、購入することでそれが作り手の側に「良いこと」として伝わるというようなことが加味されて、お金を払うという行動につながっている
■フォースクエアの三つの仕掛け
・みずからはモジュールに徹し、巨大プラットフォームに依拠した
・「場所」と「情報」の交差点をうまく設計した
・その交差点にユーザーが接続するために「チェックイン」という新たなコンセプトを持ち込んだ
■フォースクエアのチェックイン
明示的なアプローチによって、プライバシー不安を生み出さない強固なアーキテクチャを構築することが可能になっている
■マルコヴィッチの穴を実現してしまう「ロケーションレイヤー」
■「事実の真贋をみきわめること」は難しいけれども、それにくらべれば「人の信頼度をみきわめることの方ははるかに容易である
■「視座」を提供する人は今、英語圏のウェブの世界では「キュレーター」と呼ばれるようになっています。
■「コンテンツが王だった時代は終わった。いまやキュレーションが王だ」
一次情報を発信することよりも、その情報が持つ意味、その情報が持つ可能性、その情報が持つ「あなただけにとっての価値」そういうコンテキストを付与できる存在の方が重要性を増してきているということなのです。
■自己完結的な閉鎖系は、情報の流れを固定化させ、そしてまた情報が内部の法則によってコントロールされてしまうことで、硬直していきます。この硬直は、同心円的な戦後のムラ社会には都合がよかったともいえるでしょう。
■一方でソーシャルメディアの不確定な情報流通は、外部から情報が流れ込み、セマンティックボーダーがつねに組み替えられて、それによって内部の法則が次々と変わっていくことで、つねに情報に「ゆらぎ」が生じている。
この「ゆらぎ」こそが、私たちの社会を健全に発展させていくための原動力になっていくのは間違いない。
■グローバル化したシステムでは、情報の伝達は今までよりもずっと容易になる。だからこそローカルカルチャーの重要性がいっそう高まっていくのだ。
キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる (ちくま新書) 佐々木 俊尚 筑摩書房 2011-02-09 by G-Tools |