「電子書籍大国アメリカ」は、米国における電子書籍周辺の現状を考察している書籍です。
出版社から献本を頂いたので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
日本でも最近一気に注目を集めている電子書籍事業ですが、この本を読むと米国における電子書籍事業への出版社の取り組みは、日本のそれとかなり根本的に様相が異なっていることがわかります。
電子書籍をブームとしてではなく一つのトレンドとして冷静に考えたい方には、参考になる点がある本だと思います。
【読書メモ】
■なにしろ、日本の流行熱は冷めやすい。いつも何かが流行っていて、マスコミがそれを煽る。
■もちろん、アメリカにもファッドと呼ばれる一過性のトレンドは数限りなくあるが、一番大きな違いは、日本では流行が過ぎ去ったあとの廃れ方が比べものにならないほど凄まじいことだ。バックラッシュが必ずやってきて、いつまでもその「元人気商品」を消費し続けることが恥ずかしいくらいになる。
■もともと、紙の本だけでなく、オーディオブックやさまざまな副次権を売るなど、少しでも需要があればその卸先を開拓し、柔軟に対応してきた下地があったせいか、アメリカの出版社は最初から電子書籍を「紙の本の売上を食うもの」としてではなく、またもう一つ、対応していかざるをえないフォーマットとして受け入れてきた。
■グーグルが1500万ドルという費用をかけて版権レジストリを作り、印税を管理し、手に入りにくい絶版の本を見られるようにする。
気になる料金体系だが、純益の63%は著作権保持者、つまり著者と出版社に渡り、グーグルは37%を取る。
■アマゾンは辛抱強く、日本の再販売価格維持制度が崩れるのと、出版社と著者が電子版権をめぐって折り合いをつけるのを待っているのではないだろうか。
■本の売上の構造
・著者とエージェント(いわゆる印税) 約10%
・出版社(編集、印刷、製本、マーケティング) 約50%
・ディストリビューション(いわゆる取次業) 約10%
・リテイラー(いわゆる書店)約30%
(電子書籍の場合、出版社が直接Eブックを売ったとして、この印刷コストとディストリビューションのコストがかからない分、安くできたとして、紙の本と比べても、せいぜい2割安ということになる)
■この業界でまことしやかに信じられている数字に、全くなんのマーケティングもしないで本を出した場合、売れる部数は500冊だ、といわれている。
■私の知る限りアメリカ、そしてヨーロッパでは、基本的に一人の著者にはその国の担当エージェントが一人、著作はすべて一社から、担当編集者も一人、というのが原則だ。
■日本ではなんの問題もないコンテンツをiTunes Store用に作ったら、3割もの作品にNGが出た例も報告されている。
■日本人は普段意識していないが、他の国から見れば、日本は性的・暴力的表現にとても寛容な国だ。少年向けの連載漫画に「読者サービス」と称して、パンチラシーンやヒロインの入浴シーンがある。子供向けの架空の物語で、人が斬られ、鮮血が飛ぶ。
■ソーシャル出版
ソーシャルメディアを駆使し、電子書籍も紙の本も出していく
■日本語を特別なものだと思う気持ちはそのまま社会をガラパゴス化させ、外資を阻む勢力となる。あらゆる分野において、世界に向けて発信し、世界の人々と関わっていく気持ちが少しでもあるのなら、日本語の殻から抜け出す努力が求められる。
■ブッククラブ
もともとは会員制のカタログ販売組織を指す。年会費を払えばメンバー宅に定期的にカタログが送られ、売れ筋で人気のあるタイトルが破格値で買える。ブッククラブを運営する会社は、独自の印刷工場を持つか、大量注文できる工場を抱え、出版社から「ブッククラブ」権という副次権を買ってデータだけを受け取り、会員向けに安い紙を使って大量に刷る。
ルポ 電子書籍大国アメリカ (アスキー新書) 大原 ケイ アスキー・メディアワークス 2010-09-09 by G-Tools |
とある電子書籍端末が生き残る一つの方法
最初は否定的な記事にしようかと思ったのだが、調べてみると当然の流れとも思える。「ガラパゴス=悪」というイメージがあるのだが、その環境に適用した姿そのもの…