テレビは生き残れるのか (境 治)

4799310356 「テレビは生き残れるのか」は、広告代理店や映像製作会社ロボットなどを経験されている境治さんの書籍です。
 献本を頂いたので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 この本では、テレビに深く関わってきた境さんならではの視点で、いわゆる「テレビ業界」の課題と可能性について考察されています。
 個人的には広い意味でのテレビ業界が生き残りの瀬戸際に立たされるようなことは当分ないと思っていますが、境さんが書籍の中で指摘されているようにリーマンショックから続くテレビCMを中心としたマス広告費の見直しによる業界規模の縮小や、それによるひずみに狭い意味でのテレビ業界が苦しむことになる、という指摘には納得感があります。
 一方で、ネットやソーシャルメディアとテレビが連携することで、新しいテレビ業界が生まれる可能性も、この本を読んで改めて強く感じます。
 そう言う意味で、この本は、テレビの未来が気になる方には参考になる点がある本だと思います。
【読書メモ】
■日本の映像ビジネスは、テレビ広告費でほとんどすべて成り立ってきた
■映像ビジネスがビジネスになりえてない理由
 ・制作と製作の文化が足かせになっている
 ・マーケティング意識の圧倒的な低さ
■あのテレビCMを見たな、と感じる最低限の数字は、最低でも1500GRP
 多くの人がはっきり見たなと感じるときは、2500~3000GRPぐらいはある


■1970年、フィンシンルール
 外部製作のテレビ番組の二次使用権をテレビ局ではなく制作側に認める画期的な内容だった。
■「水曜どうでしょう」の場合は、過去に北海道で放送した番組を、ローカルテレビ局が買い付けて放送している。
 これはローカルテレビ局が行うべきコンテンツビジネスの模範となるケースだろう。
■本来的にはマスメディアの最たる存在であるはずのテレビが、ミドルメディア的な展開の軸になるケースは今後多様に考えられるのではないだろうか。
■アプリのプロモーションにもやはりテレビ放送は効果が高い。
 番組とアプリをセットで企画する、という考え方はあると思う
■過剰な努力によってもたらされるクオリティはもう、必要ではない。
■ソーシャルクリエイティブ
・これまでマスメディアを舞台に広告クリエイターたちがやってきたことを、ソーシャルメディア上で企業向けに請け負う作業
・社会性も含んで、表現すべきだと個人が考えたことをそのまま形にする表現活動
■狩猟型から農耕型へ
・狩猟型:短期間でできるだけたくさんの視聴者を、だあーっと獲得する
・農耕型:コンテンツを種から植えて育て、視聴者と一緒に見守りながら大きく育てていく
■(テレビ広告市場の)規模は急速に縮んでしまう
 テレビ広告費は2007年度には2兆円弱あったのが、リーマンショック以降、2年間で1兆7000億円台にまで急減した。
 これから数年間で少なくとも1兆円台前半にはなってしまうと考えられる。

4799310356 テレビは生き残れるのか (ディスカヴァー携書)
境 治
ディスカヴァー・トゥエンティワン 2011-07-16

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