フリー〈無料〉からお金を生みだす新戦略(クリス・アンダーソン)で、改めて考える「フリーミアム」の可能性

4140814047  「フリー〈無料〉からお金を生みだす新戦略」は、一昨年「フリー」という概念をブレイクさせるきっかけになった書籍です。。
 発売時に献本を頂いていたのですが、書評抜き読書メモを公開するのをすっかり忘れていたので、今更ながら公開させて頂きます。
 監修をされた小林さんがよく言っていましたが、「フリー」という言葉が一人歩きした結果、本を読んでいない人が「何でも無料になってしまうんだろ」と勘違いしていたようですが、個人的にもこの「フリー」で最も大事な概念は「フリーミアム」というキーワードだと感じています。
 実は無料をエサに、利用者を有料モデルへ誘導していくというビジネスモデル時代はインターネット以前から存在するわけですが、インターネットによりこの無料を大量の人に提供するということが実施しやすくなったのが「フリー」が大きく注目されたポイントでしょう。
 現在、このフリーミアムで最も成功している産業は間違いなくソーシャルゲーム業界と言えます。
 無料ゲームをうたい、とにかくユーザーをゲームに登録させてしまえば、ほかのユーザーに勝つため、もしくは助けるためにお金を払うことになるというサイクルに、ユーザーを組み込む事ができています。
 従来のゲームが、お金を払わって製品を買わなければ面白いかどうかが分からなかったのに比べると対極にあるビジネスモデルと言えるでしょう。
 ただ一方で、このコンセプトを理解したところで、どこまでを無料にして、どこからを有料にするかというバランスが実は最も重要で、何でも無料で配ればいいという話ではないのが、このフリーミアムの奥が深いところ。
 
 実はまだまだこれからフリーミアムのコンセプトで革命が起こる業界や分野はいくつもあるのではないかと思います。
 一昨年の「フリー」ブームのときに、読みそびれたという方も、今改めて読むのをオススメします。
【読書メモ】
■無制限の商品棚を持つことを可能にする方法はひとつしかない。その商品棚のコストがタダであることだ。
■フリーの4つのビジネスモデル
1・直接的内部相互補助
 あるモノを無料かそれに近い値段にし、それで客を呼んで、健全な利益を出せる他の魅力的なモノを売ろうとする。
2・三者間市場
 二者が無料で交換をすることで市場を形成し、第三者があとからそこに参加するためにその費用を負担する。
3・フリーミアム
 有料のプレミアム版に対して、大量の無料版を提供する
4・非貨幣市場
 贈与経済、無償の労働、不正コピー等
■(ラジオによる)フリーは音楽ビジネスを崩壊させることなく、反対に音楽産業を巨大で儲かるビジネスに変えた。
 低品質の無料バージョンは、音質のよい有料バージョンを買ってもらうためのすぐれたマーケティング手法となった。


■無料に対する感情が絶対的なものではなく、相対的なもの
 それまでお金を払っていたものが無料になると、私たちは質が落ちたと考えやすい。でも、最初から無料だったものは、質が悪いとは思わないのだ。
■心理的取引コスト
 人間は生まれつき怠け者なので、できるだけ物事を考えたくない。だから、私たちは考えずにすむものを選びやすいのだ。
■ペニー・ギャップ
 ユーザーになにがしかのお金を払わせることがもっともむずかしい。
 すべてのベンチャー企業が抱える最大のギャップは、無料のサービスと1セントでも請求するサービスとのあいだにある
■タダで手に入れたものにはあまり注意を払わないから、大切にしない
■年をとって時間とお金の関係が逆になると、正規のダウンロードにかかる99セントがたいした金額に思えなくなる。そうすると、フリーミアムの世界において、お金を払う顧客になる。
■デジタル市場ではフリーはほとんどの場合で選択肢として存在する
 企業がそうしなくても、誰かが無料にする方法を見つける。
■潤沢な情報は無料になりたがる。稀少な情報は高価になりたがる。
■「どうせ盗むのならば、わが社の製品を盗んでほしい。彼らがわが社の製品に夢中になっていれば、次の10年間で私たちはお金を集める方法を考え出せるはずです」(ビル・ゲイツ)
■悲嘆の五段階説
・否認
・怒り
・取引
・抑鬱
・受容
■ヤフーメールは保存容量を呑み込むブラックホールに吸い込まれることなく、利益を確保できた。グーグルのフリーに対して、ヤフーはもっと無料にすることで対抗した。
■「非収益化」はその影響を受ける人々を苦しめる。だが、一歩離れてみれば、そこにあった価値は失われたのではなく、金銭ではかれないような別の形で再分配されていることがわかるのだ。
■チャイニーズ・ウォール
 編集チームと広告チームのあいだに築いている壁で、広告主が編集者に影響を及ぼせないようにしている。
 ※グーグルではまったく逆のことをしている
 
■有料コンテンツの終焉の6つの理由
・供給と需要
・物質的形状の消滅
・入手しやすさ
・広告収入で運営するコンテンツへの移行
・コンピュータ業界はコンテンツを無料にしたがっている
・フリー世代
■フリーを利用して成功している5つのカテゴリー
・バーチャル製品の販売
・会費
・広告
・不動産
・商品
■フリーは一つのバージョンにすぎない
 あるバージョンは無料で、別のバージョンは有料になる。
 消費者がお金を払うのが「支払能力に応じて」から「必要に応じて」になった
■21世紀的解釈ではフリーライダーはもはや問題にならない(ティモシー・リー)
・フリーライダーの問題が仮定するのは消費される資源コストが気になるくらいに高いときだから。
・オンラインでは参加者がはるかに多いので、全体の1%でも協力してくれれば、ほとんどのコミュニティはうまくやっていける。
■中国では不正コピーが音楽消費の95%を占めると推定されている。
 レコード会社は歌手の芸能プロダクションとしての役割を担い、コマーシャルの出演料の一部をもらっている。そして、コンサートのスポンサーも見つけてくる。
■価値の物差しは金銭だけではない
 ウェブは主にふたつの非貨幣単位で構成されている。
 注目(トラフィック)と評判(リンク)だ。
 
■フリー世代は、情報は無限であり、すぐに手に入ると考えている。
■無料のルール
・デジタルのものは、遅かれ早かれ無料になる
・アトムも無料になりたがるが、力強い足取りではない
・フリーは止まらない
・フリーからもお金儲けはできる
・市場を再評価する
・ゼロにする
・遅かれ早かれフリーと競いあうことになる
・ムダを受け入れよう
・フリーは別のものの価値を高める
・稀少なものではなく、潤沢なものを管理しよう
■フリーミアムのモデルを見つけるための四種類のモデル
・時間制限
・機能制限
・人数制限
・顧客のタイプによる制限

4140814047 フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略
クリス・アンダーソン 小林弘人
日本放送出版協会 2009-11-21

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