「リーダーを育てる会社・つぶす会社」は、タイトルを見て頂ければわかる通り、リーダーの育て方について考察されている書籍です。
何か忘れましたが、どこかの本で言及されていた興味がわいたので買って読んでいたのですが、遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
優秀な成績を上げた人が、華々しく昇進したにもかかわらず、リーダーのポジションになった時に急に壁にぶち当たる、というのは実は珍しい話ではありません。
この本では実はそういった問題の多くは、昇進した人が新しいポジションの役割を従来の延長線上で考えているからだという非常にシンプルな構造にあることに気づかされます。
実は係長、課長、部長とポジションが一つ上がるということは、やるべき仕事が毎回90度~180度ぐらい大きく変わるため、根本的に仕事のやり方や時間の使い方、意識を根本的に変えなければいけない、というのがこの本に書かれている問題提起なんですが、一般的には昇進というのは直線的に考えている人の方が多いのではないでしょうか。
そういう意味で個人的にはこの本は非常に目からウロコな本でした。
組織構造をどうすれば良いか悩んでいる経営者の方はもちろん、リーダーになって壁にぶちあたっている方は、この本を読むと肩の荷が少し軽くなるのではないかと思います。
【読書メモ】
■「ベスト・アンド・ブライテスト」戦略は戦略的に破綻する
スター人材は法外な給料をとる一方で、決してそれに見合うだけの能力を発揮することはない。
失敗から学んだり、正しいスキルを身につけたり、安定的に成果を出すために必要な経験を積むには、ある程度の時間が必要。
■管理職が習得すべき三つの職務用件
・スキル--新しい責務を全うするために必要な新しい能力
・業務時間配分--どのように働くかを規定する新しい時間枠
・職務意識--重要性を認め、注力すべきだと信じる事柄
■係長に求められる三つの変化
管理職は自分のことだけを考えるのをやめて、他人について考えはじめなければならない
・仕事の定義とアサインメント
・部下に対するサポート
・関係構築
■課長が陥りやすい問題点
・権限委譲がうまくできない
・部下の管理が不得手である
・強いチームを構築できない
・仕事を成し遂げることのみ考えている
・一般社員の中から自分のクローンを選ぶ
■新任部長の「えこひいき」
優れた尺度や基準がないと、既知の分野を過大評価し、未知の分野を過小評価してしまう。
■部長に必要となる職務機能別戦略
・長期的思考(三年)
・最先端を意識する
・ビジネスモデルを詳細に理解し、長期戦略の方向性と目標を理解する
・戦略的思考の際に、職務機能のあらゆる側面を組み込む
・事業戦略、収益性、競争優位を支えるために妥協点を探る
■部長が陥りやすい問題点
・業務プロジェクト志向から戦略志向に変わることができない
・不慣れな仕事やあまり興味のない仕事を管理できず、またそれらに意義を見いだすことができない
・リーダーあるいは管理職として未熟である
■部長のなかには、孤独な警備官のようにして成功してきた人がいるかもしれないが、それでは事業部長としては通用しない。何もかも一人で解決しようとすると、燃え尽きてしまう危険性がある。
■事業部長が陥りやすい問題点
・平凡なコミュニケーション
・強いチームを形成できない
・どうすれば利益を出せるかを把握できない
・時間管理の問題
・ソフト面の問題を無視する
■複雑さを整理するための三角形モデル
・戦略の方向性
適切な製品群を持っているか
適切な市場にいるか
競争優位は維持できるか
事業のポジショニングは、差別化が可能か、維持可能か
適切な顧客セグメントにリーチできているか
・組織
顧客ニーズや潜在市場を定義するための適切なプロセスがあるか
必要なリサーチを実施するにあたり、製品開発部門に権限が与えられているか
コストが高すぎるために、価格を押し上げてしまっていないか
直面している課題に対して、適切な組織体制になっているか
・個人
部下は十分に革新的か
顧客ニーズに応えるような製品を設計できるか
顧客の立場で考えているか
競争、あるいは、目標に対して、自分たちがどこにいるかを理解しているか
■事業統括役員のポイント
・起こりそうな結果を踏まえて事業の差別化を図るような意思決定を行うことができるか
・直属の部下がビジネスリーダーへと成長するように手助けができるか
・個別の戦略よりも、ポートフォリオ戦略を優先することができるか
■経営責任者の五つの課題
・予想通りの売上と利益を出しつづける
・企業の方向性を定める
・企業のソフト面を整備する
・戦略の実行において優位性を保つ
・グローバル環境のなかで企業経営を行う
■リーダーに関する典型的な問題
・係長が一般業務にほとんどの時間を費やしている
・事業部長が部長の仕事をしている
・事業統括役員が事業部長の仕事をしている
■上記の問題が起こる背景
・仕事量は多いが、重要な仕事を行っていない
・各業務の運営コストが上がる
・人材が育たない
■役割に関する典型的な問題
・その役割を行う人がいない
・上司が下の職位の管理職へのフィードバックを怠り、同じ問題が繰り返し発生する
・経営資源が不足していて計画を実行できない
・役割が重複している
・部長と課長の両方が、係長に指示を与えている
・事業部長とマーケティング部長の両方が、製品計画の立案は自分の担当だと思っている。
■上記の問題への対応
・その人にはどの職位の仕事が与えられているのかを確認する
・該当者に、その人の職位と、必要なスキル、業務時間配分、職務意識について伝える
・「隣接した」職位間で、重複している役割や誰も行わない役割がないか注意を促し、問題の解決に取り組む。
■パイプラインの弱点を改善するための管理職の育成戦略
・上司から始める
・正しい職務意識を持っているかどうかを探る
・アクション・ラーニングを活用する
・問題を早期に発見する
■後任者の育成計画の五つのステップ
・自社の後任者育成ニーズに合わせて、パイプライン・モデルを修正する
・成果基準や潜在能力の基準を自分の言葉に置き換える
・基準を文書化し、組織全体に伝達する
・潜在能力と成果のマトリクスを使って後任候補者を評価する
・パイプライン全体の計画と進行状況を、頻繁かつ真剣に見直す
■職務意識の例
・部長「できるかどうか」
・事業部長「すべきかどうか」
・事業統括役員「どのプロジェクトが現在や将来において最善の結果をもたらすか」
■解決だけを目指すやり方を改めるためのコーチング
・潜在能力を十分に発揮できるように手助けする
・評価内容を正直に話す
・個人と組織の両方について話す
■職務機能部長が陥りやすい問題点
・政治家のようにふるまう
・部長の仕事と重複しすぎている
・事業統括役員の言いなりになる
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