コミュニティ・オブ・プラクティス (エティエンヌ・ウェンガー他)

4798103438 「コミュニティ・オブ・プラクティス」は、共通の専門スキルによって非公式に結びついた人々の集まりの可能性について書いた書籍です。
 2002年に出版された本で昔に読んでいたのですが、あらためて読んでみたので書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 この本で描かれているのは共通の専門スキルやコミットメントによって非公式に結びついた人々の集まりである「コミュニティ・オブ・プラクティス(実践コミュニティ)」という概念。
 ソーシャルメディアというフレーズが一般的に使われる前に書かれた本ですが、まさにソーシャルメディアによって容易になった組織や企業の壁を越えたコミュニティの可能性について考察されている本だと言えます。
 2002年の本という意味で、ある意味古典とも言える本ですが、ツール以前のコミュニティのあり方について考えてみたい方には参考になる点がある本だと思います。
【読書メモ】
■実践コミュニティとは新しい概念ではない
 太古の昔から続く、人間初の知識を核とした社会的枠組み
■実践コミュニティの構造
・領域(ドメイン):メンバーの間に共通の基盤を作り、一体感を生み出す
・コミュニティ:学習する社会構造を生み出す
・実践(プラクティス):コミュニティ・メンバーが共有する一連の枠組みやアイデアなど
■実践コミュニティが最も繁栄するのは、組織の目標とニーズが、参加者の情熱や野心と交差する時だ
■コミュニティの七原則
・進化を前提とした設計を行う
・内部と外部それぞれの視点を取り入れる
・さまざまなレベルの参加を奨励する
・公と私それぞれのコミュニティ空間を作る
・価値に焦点を当てる
・親近感と刺激とを組み合わせる
・コミュニティのリズムを生み出す
■成功するコミュニティは参加を強制するのではなく、傍観者のための「ベンチを作る」ことをしている
■コミュニティの発展の五段階
・潜在
・結託
・成熟
・維持・向上
・変容
■専門家のためのコミュニティの目的
・専門分野での一般的な仕事上の問題を協力して解決する
・ベスト・プラクティスを開発し、普及させる
・メンバーが現場の任務で必要とするツールや洞察や手法を開発し「世話」する
・極めて斬新な解決方法やアイデアを生み出す
■コミュニティの変容
・衰弱する
・社交クラブとなる
・分裂や合併
・制度化
■革新的に新しい洞察や展開は、コミュニティとコミュニティの協会で生じることが多い
■有意義な領域を核にしたコミュニティを構築することにより得られる、自己献身と所有者意識には分裂や硬直化、手に負えない複雑性などのリスクを補って余りある価値がある。
■コーディネーター・コミュニティを作る
 コミュニティが起動になり、コーディネーターがコミュニティ開発のチャレンジを肌で感じるようになったら、教育と実践開発を組み合わせる
■拡張型ナレッジ・システム
 企業の境界の内外の関係や交流によって作られる

4798103438 コミュニティ・オブ・プラクティス―ナレッジ社会の新たな知識形態の実践 (Harvard Business School Press)
エティエンヌ・ウェンガー リチャード・マクダーモット ウィリアム・M・スナイダー 櫻井 祐子 野中 郁次郎 野村 恭彦
翔泳社 2002-12

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