「ほんもの」は、「経験経済」などの書籍で知られるパイン氏とギルモア氏が書かれた書籍です。
かなり前に読んでいたのですが、遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
この二人の書いた前著の「経験経済」には個人的にもかなり影響を受けているのですが、その二人の新しい書籍が出ていたと言うことで、周回遅れながら読んでみました。
この本でテーマとして取り上げられているのは、「Authenticity」。
直訳すると、信頼できること、とか、確実性、ですが邦題ではあえて、ひらがなの「ほんもの」を当ててきています。
先日ad:tech Tokyoで来日したFacebookのマークさんも、「Authentic」というフレーズを強調していましたが、日本語に翻訳しづらいこの「Authenticity」というのが、これからの時代のマーケティングを考える上で一つ重要なキーワードであることは間違いなさそうです。
これからの時代のマーケティングを一歩引いた視点で考えてみたい方に、お勧めしたい本です。
「グランズウェル」や「マーケティング3.0」。また、当然のことながら「経験経済」とあわせて読むのがお勧めです。
【読書メモ】
■消費者にコントロールされた生産、すなわち最終製品の提供ではなく、プロシューマーに生産の基盤を与えることにより、企業は、購入者が自ら決定するものを提供することに目を向けなければならなくなっている。
これによって購入者は、巧みに買わされたとあまり感じなくなるからである。
■「これから人々は、自らを演技をしながら組み立てていくことになる。決して現在のままの自分ではあり続けることはない」(トーマス・ゼンゴディータ「メディエーティド」)
■ほんものについての公理
・自分がほんものなら、ほんものであると言う必要はない
・自分をほんものであると言うなら、ほんものであるべきである
・自分をほんものであると言わないなら、ほんものであることはよりやさしい
■経済価値のステップとほんものの関係
・コモディティ→自然であることのほんもの
・製品→オリジナルであることでのほんもの
・サービス→例外的であることのほんもの
・経験→参照することでのほんもの
・変革→影響力があることでのほんもの
■経済価値の進展を早めている力
・コモディティ化(ウォルマートとインターネット)
・カスタム化
■「大抵の場合、社会的責任という用語は、口先だけの慈善家と同義語になっている。彼らの目的は、社会に貢献することだけではなく、往々にして単に貢献していると認められることにある。ほんものの社会的責任とは、量および質の両面において測られる便益を生み出すことで示されるものである」(ジョー・マルコーニ「コーズ・マーケティング」)
■大いなるほんものをつくるステップ
・現状を分析する
・現状を受け入れる
・にせものを克服する
・ほんものであることを示す
■誠実であるべき自己をの五つの要素
・企業の本質:基本的な性格はどのようなものか
・経済価値の性質:いかなる経済価値を提供するのか
・遺産の効果:いつ、どこで現在の姿になったか
・目的意識:なぜビジネスをしているのか
・核心的価値:どのように自己のアイデンティティを明示するのか
■職場で演技することの四つの原則(パイク・プレース・フィッシュ・マーケット)
・演技せよ
・顧客を楽しませよ
・存在を示せ
・演じる自己を選択せよ
■「原則はプレース・メーキング(場の創造)」(ジョン・ジャーディ建築家)
場所というのは、企業が顧客に対し、自社の姿を提示する重要な手段である。
提供する経済価値が何であるかを広告を通じて訴えることを止めて、場を創造することに着手しなければならない。
■プレース・メーキング・ポートフォリオ
【現実の場所】
・フラッグシップとなる場所
・経験のハブ
・主要な場所
・派生的な存在
・世界市場
【ヴァーチャル空間】
・フラッグシップとなるサイト
・経験のドメイン
・主要なプラットフォーム
・派生的なプレイスメント
・ワールドワイドウェブ
■経験の価値を測る
・伝統的広告の効果=人数×記憶/コスト
・プレース・メーキング経験の効果=人数×時間×関心×影響×記憶/コスト
■いま・ここ空間で事業を行うための八つの原則
・遺産を学習する
・現在の位置を確認する
・軌道を突き止める
・限界を知る
・実行ゾーンの中で事業を拡大する
・周辺部をチェックする
・未来を刻む
・うまく実行する
ほんもの J . H . ギルモア B . J . パインI I 林 正 東洋経済新報社 2009-12-18 by G-Tools |