あの橋下市長にすら、ツイッター上の発言を制限させてしまう公職選挙法の巧妙な罠

 橋下市長が選挙期間中のツイッター利用に関連して連日で物議を醸してますね。
 一連の流れをニュースサイトの記事で追うとこんな感じ。
11月29日 橋下氏「公示後もツイッター続ける」
12月4日 橋下氏、ツイッター禁止「バカみたいなルール」
12月5日 橋下氏、ツイッターの書き込み控える意向
12月6日 橋下氏がツイッター継続「選挙運動ではない」
 まぁ、真ん中の二つの記事だけを見ると、いかにも4日に勇ましく総務省や法律に喧嘩を売ったところ、あっさり5日に前言撤回したように見えますが。
 実際には6日の記事にあるように、多数のツイッターへの投稿が継続中。
 実際に発言を見てみると大量の投稿の一部をニュースサイトが一部だけ切り出している面も強いようで。
 4日の発言はこんな感じ。


 で、5日の発言はこんな感じ。


 6日には、こんな発言もしています。


 それぞれの発言の前後にも多数の選挙期間中のネット利用禁止についての苦言が並んでおり。
 橋下さんからすると、4日の発言が様々なメディアに取り上げられたり、他党の政治家から公選法違反の指摘もあったりで、ディフェンスとして補足の発言をしておいた、ぐらいの感覚かもしれません。
 
 当然、橋下さんは弁護士ですから、何が違法になって何が違法にならないかを把握した上での発言を行っているのでしょうし。
 実際問題、公職選挙法は選挙期間中の候補者の応援を禁じているのであって、候補者以外の政治家の情報発信を禁じているものではありません。
 橋下さんが主張しているように候補者以外のすべての人には表現の自由が保障されているはずです。


 実際、橋下さんは先日AMNで調べた政治家のソーシャルメディア活用度ランキングでもトップですから、当然この影響力を選挙に少しでも活かしたいはずです。
政治家インパクトランキング
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 ただ、今回の橋下さんの発言の幅を見て、改めて既存の公職選挙法が実に巧妙な仕組みになっているなぁと思ったのは、候補者をネットやソーシャルメディア上で応援する行為が、候補者が当選した際に後から指摘されて候補者の当選が取り消されるリスクがある点です。
 実際にはネット上で特定の候補者の名前を挙げてがんばれと発言しているケースは多数存在しているのですが、別にその発言をした際にいきなり警察が逮捕に来るわけではありませんし、選管から指摘が来ることもほぼ無いでしょう。
 だから、普通の人は公職選挙法がネット上の候補者の応援を認めていないことなんか気付かないですし、そんなリスクがあるなんて知りませんから、現在の公職選挙法の古さに問題意識を持ちません。
 ただ逆に、政治に問題意識を持って、選挙期間中にその問題意識をネットやソーシャルメディア上で表現すべきと思っている人は、選挙期間中に候補者を応援するとその人が当選したときに迷惑がかかるリスクを思って発言を自粛することになります。
 今回の橋下さんのケースにおいても、もしこれが橋下氏単独の選挙で、橋下さんが既存の制度に問題提起を本気でしたいのであれば、自ら表現の自由を盾に発言をし続けることをしたかもしれませんが。
 今回の選挙においては橋下氏は日本維新の会の代表代行であり、下手な候補者の応援活動は維新の党の候補者が当選した際に、その当選を取り消されるリスクを負うことになります。
 自分以外の人に迷惑がかかる仕組みになってるんですよね。
 まぁ、極端な話をすれば選挙期間中にやってしまうと当選した人に罠が待っているようなもんです。
 当然、橋下さんもツイッター上で自らがちゃんと公選法を意識して選挙応援をしていないことを補足せざるをえないですし、その一線を踏み越えないようにツイッターを使わざるをえないわけです。
 でも、本当にこの公職選挙法が有名無実になっているなぁと言うのが、実は候補者のホームページやツイッターの更新は一律自粛されているのに、政党単位はホームページの更新もツイッターの更新もされてしまっているという現状。
 例えば自民党は、公式ツイッターで総務会長の遊説日程や安倍さんのCMの告知を思いっきり堂々と行ってます。


 これ、普通に考えたら、どう見たって選挙応援活動ですよね。
 でも、橋下さんのツイッター活用は問題になっても、自民党のツイッター活用は、メディアでは全く問題になってないわけです。
 候補者個人単位ではホームページやブログ、ツイッターの更新は法律違反になると指摘されているのに、候補者の集団である政党単位ではOKという完全に意味不明の状況です。
 橋下さんも選挙期間中に自分のツイッターを日本維新の会の政党としてのツイッターに変更してしまえば、実はここまで踏み込んだ活用ができてしまう可能性があるわけです。
 まぁ、要は80年前に制定されたまま全く改正されていない公職選挙法の拡大解釈によるネット利用禁止が、実態から乖離してることなんて誰もが理解していることで。
 ただ単純に既存政治家のネットに対する恐怖感によるサボタージュで、10年以上放置されて今日に至ってしまったと言うだけなんですよね。
 そのあたりは先日も「政治家のソーシャルメディア活用度ランキングにみる、日本は政権の中枢にいる人ほどソーシャルメディアを使ってないという現実。」という記事に書きましたが、既存政治家のほとんどがまだソーシャルメディアの必要性を感じていないわけで、橋下さんのような使いたい政治家はまだまだ少数派というわけです。
 そういう意味では、今回の選挙の前に選挙期間中のネット利用が解禁されなかったのは残念で仕方がありませんが。
 今回の橋下さん周辺の議論が良いきっかけになり、実質党単位で利用を踏み切っている自民党や5年以上ネット選挙解禁に腐心されてきた世耕さんあたりが、今回の選挙後に、速攻で公職選挙法を改善してくれることを、今から強く祈りたいと思います。
 ちなみに、先日も「ウェブで政治を動かす!」の読書メモでも、ご紹介しましたが、Change.orgでもネット選挙解禁の署名運動が行われてますので、そういった流れを応援したいという方は是非こちらもどうぞ