「ソーシャル時代に音楽を”売る”7つの戦略」は、タイトル通りソーシャルメディア時代の音楽産業の今後を考察された書籍です。
献本を頂いたので、遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
日本と米国におけるソーシャルメディアの普及度やツールの使われ方の違いは良く指摘されますが、音楽産業においてはiTunes Storeの普及度はガラケー向けサービスなど、さらに大きな違いがあります。
この本ではそうした日本の独自性や、米国の先進事例など幅広くカバーされていますので、今後の音楽産業のあり方を考えたい方には参考になる点がある本だと思います。
ちなみに、個人的にはケイティ・ペリーの「Carifornia Gurls」の事例を知らなかったので非常に興味深かったです。
【読書メモ】
■日本だけで仕事をしているとなかなか気付きにくいのですが、従来型の日本の音楽業界のシステムは非常に洗練されていて、きめ細やかなものでした。
・若いバンドが地元の小さな地方都市のライブハウスを毎月一杯にしている
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・3ヶ月~半年以内には確実に東京からレコード会社やプロダクションがそのライブハウスを訪れる
↓
・ポピュラリティがあると判断されれば、メジャーデビューに繋がる
しかし今や、そのエコシステムの右の部分がやせ細ってしまい、機能不全に陥っているのです。
■クワトログラフを意識する
・ソーシャルグラフ
・インタレストグラフ
・ミュージックグラフ
・リレーショングラフ
■インフルエンサーを巻き込む基本フォーマット
・ドラマMVに、ターゲット層に影響力のあるインフルエンサーブロガー等を起用
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・インフルエンサーブログでレコチョク・YouTubeへの誘導を図る
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・レコチョクダウンロード数・YouTube再生回数が上昇
■ケイティ・ペリーの「Carifornia Gurls」の事例のポイントは、コンテンツのコピー、カバー、二次使用、パロディ等を不特定多数のマスに自由にやらせることで成り立つ手法
日本で2012年10月1日より施行された”違法”ダウンロードの刑罰化という法律のベースには、この手法と真逆の考え方がある
http://www.youtube.com/watch?v=CTVJTt-Gfx8
http://www.youtube.com/watch?v=F57P9C4SAW4
■街鳴り×WEB鳴り×レコチョクの面出し
街中でたまたま聴いた曲がいい曲だなと思い、聞き覚えがあるなと思ってYouTubeを検索してみたら、このあいだWEBで見たMVだった。レコチョクで何か曲をダウンロードしようとトップページにアクセスしたら、その曲がトップページで紹介されていてダウンロードした。
■ライブエンターテイメントを考える3段階
・どうやってユーザーを”リアル”に誘導できるか
・いかに”リアル”で「共鳴」してもらうか
・「共鳴」した後に、いかにアーティストやフェス等への関与度を上げて、それを維持できるか
ソーシャル時代に音楽を”売る”7つの戦略 “音楽人”が切り拓く新世紀音楽ビジネス 山口 哲一 松本 拓也 殿木 達郎 高野 修平 リットーミュージック 2012-10-25 by G-Tools |