「中国を変えた最強メディア ウェイボーの衝撃」は、タイトル通り中国版ツイッターと呼ばれることの多いウェイボーについて考察されている書籍です。
献本を頂いたので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
日本にいるとウェイボーの話というのは滅多に話題になることがありませんが、中国では知らない人はいないソーシャルメディアです。
非常に興味深いのは、一見政府の規制が厳しくて利用者が困ってそうな中国のウェイボー方が、日本のソーシャルメディアよりも社会的インパクトが大きいという点。
本書の中では、日本の人は世論はマスメディアに出てると考えるから中国の人民日報の社説に注目するが、中国の人はメディアは政府の影響がありすぎるのでネットの方を信じており、日本の2ちゃんねるの発言を日本の世論だと思っているというくだりが出てきますが、日本と中国のネットやソーシャルメディアの位置づけが対極にあることを感じます。
中国進出を考えている企業の方だけでなく、国毎のソーシャルメディアの位置づけを俯瞰して考えてみたい方には参考になる点がある本だと思います。
【読書メモ】
■世界がウェイボーを知った日
2011年7月23日午後8時34分 中国浙江省の温州市郊外での列車衝突事故
■中国のテレビやニュースサイトが事故についての速報を出したのは、2時間以上経ってからのこと。しかし、このときすでにウェイボー上には、事故に関する詳細な情報や現場写真までが数多く掲載されていた。
■ウェイボー(微博)とは、ブログを意味する中国語の「ボーカー(博客)」マイクロの意味を持つ「ウェイ(微)」をあわせて作られた言葉であり、つまりはマイクロブログのことである。
■ウェイボーは「中国版ツイッター」ではない
自分のアカウントページに音楽や動画、写真などをアップロードでき、それらを共有することができる。そのため、写真や動画、音楽の投稿から写真キャプションや音楽レビューの書き込みまで、すべてほかのサイトに飛ぶこと無くウェイボー上で完結する仕組みとなっている。
■ウエイボーの運営会社の最大手、新浪CEOによると、ウェイボーは開発段階からツイッターとフェイスブック両方の機能を参考にしており、「ウェイボーはツイッターとフェイスブックの融合を目指す」とも彼は発言している
■ウェイボーの企業アカウントが、日本のツイッターの企業アカウントと比べて最も特徴的なのは、多くの企業トップが自ら書き込んでいることである。
■ウェイボーマーケティングのポイント
・ウェイボーの四大要素「時間」「場所」「人物」「概要」を140字で分かりやすく説明すること
・嘘は必ずバレると心得て、フォロワーに対して常に誠実な態度で臨むこと
・フォロワーの数の増加よりはフォロワーの質の向上を重視すること
■「日本政府はネット上の言論への興味は薄く、組織として向き合うことはほとんどない。しかし中国政府は、ウェイボーをはじめとするネット上の世論を多分に気にしている。中国の政治指導者がネット市民と直接対話を行うことも珍しくない。中国のネットは国民の生の声が表れる唯一と言って良い場所であり、そのため中国のほうが日本よりもネット社会のプレゼンスや発言力が高いのだ」(庄司昌彦氏)
■たとえば中国のメディアは、何かのメディアは、何かの出来事について日本の市民の声を報道するとき、「2ちゃんねる」に代表されるネット掲示板に書き込まれた発言などを取り上げることが多い。中国では、ネット上に集まる意見は、市井の生の声との偏りが少ないと思われているからだ。
逆に日本のメディアは人民日報の社説を中国人を代表する声として取り上げることがあるが、中国人にしてみれば、そのほうが大いに違和感を覚えるのだ。
中国を変えた最強メディア 微博(ウェイボー)の衝撃 李小牧 蔡成平 阪急コミュニケーションズ 2012-11-29 by G-Tools |